浸透していくコンテンツ
さて、今までの話は、コンテンツを広く横に拡げるためのコツをお話しましたが、前回ご紹介した「ラバー」は、どこまで “深く”浸透できるか? に挑戦した動画でした。
もともとAUTOWAYの動画は、ブランド認知度を上げるのが目的で作られた動画でした。
そういう目的が出発点なので、“拡散性”をかなり意識して作っています。おかげさまで「雪道コワイ」以降、いろいろなところで露出し話題になり、ある程度の認知は獲得できました。次のステージへという提案の元、今回の動画「ラバー」は製作されましたのです。
MV(ミュージックビデオ/メッセージビデオ)というテーマで企画したこの動画は、ブランドが一どこまでユーザーと深くコミュニーションできるか? に挑戦しています。恐らく今まで僕が企画した中では一番の長尺、4分以上もある動画です。
CMにしては、長尺。しかし、これはラストのメッセージをきちんと伝えるために必要な時間です。
カメラの向こう側の彼女に恋をして、それを奪う、そして、その喪失感でこそ刺さるメッセージを投げかける。このぐらいどっぷりと時間をかけて動画の世界感に入り込んでもらわないと、狙っていた深いコミュニケーションはできなかったはずです。
TVCMとは違って、PCやスマホなどのパーソナルデバイスであるWeb動画ならではの“没入感”、それを最大限いかそうと思ったのです。
CMの概念を超えて、しっかりと見ごたえのある映像コンテツになっていれば、4分は短い。
そして、なるべくスムーズに動画の世界感に入り込めるように、セリフのないミュージックビデオの作りにしています。
公開後SNS上では、「泣けた…」「鳥肌たった…」「昨日から何回も見てる」といろいろな嬉しいコメントが多く見受けられます。なかには、「なんでこんなラストにしたんだ!!」という反応も(笑)。それはそれで、どっぷりと世界感に入ってもらった証拠だと思い、内心嬉しく思っています。
しかし、これを1年前にやっていたら、拡がらなかったでしょう。いままでの文脈をしっかりと把握し、
- 今までの前作、前々作との距離感
- ユーザーが語れるストーリーの余白
が、シェアする動機にできるなと目算があったので、今回はこのようなチャンレンジをしました。4分間かけてゆっくり浸透させる動画コンテンツです。
そして、この浸透していくコンテンツの最終目的は、「“音楽”として、ユーザーのiPodの中に入ること」です。
おかげさまで福岡出身バンドのカンバス(Canvas)が歌う表題曲「ラバー」に対しての問合せが殺到。「誰が歌ってるの?」「販売しないのか?」など国内外から多数の問合せをいただき、急遽音源のフリーダウンロードを期間限定ではじめております(特設サイトからダウンロードが可能です)。
広告コンテンツが“音楽”としてユーザー一人ひとりのiPodの中に入ってもらうことができたなら、そこにはライバルの広告もありませんし、いつでもどこでも何度でもアクセスしてもらえます。通勤中、勉強中、移動中、そこに映像がなくても音楽を通して映像は頭の中で流れていきます。
広告コンテンツが、広告の枠を超えて“真のコンテンツ”としてユーザーの中に取り込まれていく。
そんな結束力の強い、深いコミュニケーションが実現できたら、ブランドとユーザーの中にとてもいい関係性ができるのではないでしょうか?
僕自身、それを創り出す力を高めないといけないと思っています。
バイラルコンテンツはバイラルコンテンツで1つの“手段”としてはよいかもしれませんし、広告の仕事をやっているとそれだけでは解決できない課題もたくさん出てきます。
よく言う、“手段”が“目的”となってしまってはいけません。その時その時のブランドの文脈を把握し、課題を明確化し、それにあった“手段”を選ばなくてはいけません。
それがまず、本当に“刺さるコンテンツ”をつくることの第一歩かもしれませんね。