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位置情報は「リアル世界のCookie」、国内初ジオオーディエンス配信を実現するDSP「AdNear」

2015/01/21 12:00

 シンガポールに本社を置くAdNear社は、位置情報を活用したオーディエンスデータをもとに広告を配信するだけでなく、データサービスの展開も予定。日本ではマイクロアドプラスとともに、モバイル、IoT時代の新たなデータ活用への取り組みを開始したAdNearのサービスの可能性について話をうかがった。

ジオ・フェンシングとは

― 「ジオ・フェンシング(geo fencing)」は、スマートフォンなどの位置情報を使って仮想的なフェンスを設けることで、そのフェンスの中にいる人に向けてサービスを提供する技術という理解が一般的だと思います。今日は、ジオ・フェンシングを使ったサービスを提供しているAdNearと、その日本における戦略パートナーであるマイクロアドプラスの両社にお話をおうかがいします。まず、AdNearという会社について紹介していただけますか?

猪谷 AdNearが設立されたのは2012年で、シンガポールに本社があるのですが、開発拠点はインドのバンガロールにあります。東南アジアを中心に発展してきた会社で、香港、インドネシア、オーストラリア、インドで事業を展開しています。中でもオーストラリアは今、急激に業績が伸びています。日本では2014年10月にオフィスを構えて、すでにいくつか取り組みを開始しています。

AdNear リージョナルディレクター 猪谷 久氏
AdNear リージョナルディレクター 猪谷 久氏

 消費者の利用端末がスマートフォンにシフトする中で、その位置情報を使った「Location-Based Service(LBS)」市場はこれから大きく成長する分野と見られています。ジオ・フェンシングはスマートフォンのGPS機能を使って、アプリに対して情報をプッシュするというのがよく知られた使い方ではないでしょうか。例えばスーパーマーケットがあって、その周辺300メートル以内にいる人に対してプッシュ通知を出したり、ショートメッセージを送ったり……といった使い方ですね。AdNearの場合は、スマートフォンへのプッシュ通知ではなく、モバイルアプリの広告欄に広告を配信しています。また、位置情報はジオ・フェンスのためではなく、オーディエンスのプロファイリングにも活用しています。

 ただ、AdNearが違うのは、GPSだけでなく、基地局やWi-Fiのシグナル情報をマッピングして位置情報の判定材料にしているので、GPSをオフにしている人に対しても広告配信ができます。

― 御社が行なうプロファイリングとはどういうものでしょうか。

猪谷 以下の3つの情報をベースにしてプロファイリングしています。

1. どういうアプリを使っているのか
2. 位置情報
3. 第三者のマーケティングデータ(例:ニールセンのデータやセンサスの統計情報、地価情報など)

 AdNearでは、こうした情報を組み合わせて「オーディエンス」を構築し、そこにターゲティングすることができます。たとえば、昼間は大学に行って、大学でアプリを開いていて、夕方に新宿あたりへ移動する人がいたとする。そうした行動特性を取って、「●●大学でいつもアプリを開いているから、この人はどうも学生らしい」ということがわかると、「学生」というプロファイリングをします。さらに開いてるアプリの傾向によって、「この人は20代の学生」というような属性を付ける。こういったやり方でセグメンテーションを切っていって、そのセグメンテーションをベースにしてターゲティングが可能になります。

― 海外で、AdNearを利用している企業は?

猪谷 海外ではリテール(小売)がひとつの大きなカテゴリとなっています。そのほかにも、FMCG(日用品)、コスメティクス、自動車といった企業、いわゆるブランド系の会社が多いです。基本は、CPMベースで、直接コンバージョンをねらうというよりは、ブランドの訴求やエンゲージメンントといった目的での利用が多いです。

AdNearで可能になる2つのターゲティング

猪谷 AdNearのターゲティングには、主に2つの手法があります。ひとつは先ほど紹介した、プロファイリングを使ったセグメント配信、もうひとつは今マイクロアドプラスが取り組んでいる手法ですが、「20~40歳の女性で、ある商業施設の半径2キロ以内にいる人たちに対して広告を配信する」といったプロファイリングデータとの掛け合わせで広告を配信する手法です。

 プロファイリングの代表的なものに「富裕層」があります。夜、自宅でアプリを開いてる地区を調べて、その地区の路線価が高いか、住んでるマンションの不動産価格が高ければ、この人は富裕層だという見方をしています。「旅行者」は頻繁に空港でアプリを開く人ですね。「主婦層」は、いわゆる住宅地でアプリを開く人……などのプロファイルを用意しています。これらは国を問わず判定ができるので、標準的なプロファイルとして各国で提供しています。

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バナーに店舗までの距離を表示するとCTRがアップ

― では、AdNearを使った事例を紹介していただけますか。

猪谷 海外での事例でよく見受けられるのが、ファーストフードのような多店舗を持つお客様の事例です。さきほど申しあげたように店舗の周囲にジオ・フェンスを設定し、消費者がその中にはいると広告が表示されます。バナーには、位置情報から最寄りの店舗を判別し、場所を案内したり、店舗までの距離を表示し、店舗への誘導をはかっています。

 また、リッチアドを活用し、地図などをエクスバンドバナー上に表示するなどの工夫もしているようです。公開できる事例ではインドネシアのPizza Hatさんなどがありますが、他にも同様な事例が多数あります。

― 距離が表示されるというのは面白いですね。

猪谷 海外で行ったテストでは、通常の広告配信と距離を表示した場合を比較すると、「店まで何メートル」と表示したほうがCTRが高いという結果が出ています。これはオーストラリアでの事例ですが、BWSというお酒のリテールのお客様の事例です。店舗の集辺2.5kmをジオ・フェンスし、中にいる消費者に広告を配信しています。キャンペーンの中でテストグループを設定し、距離がダイナミックに表示されるバナーと、そうではないバナーとで比較をしたところ、距離が表示されるバナーのほうがCTRが71%良いう結果になりました。

キャンペーンの効果測定の簡易的なリサーチも可能

猪谷 これもオーストラリアの事例ですが、ある有名な車メーカーでは、過去の位置情報をベースにして車の潜在的購入者に対してキャンペーンを実施しました。自社のディーラーと、競合社のディーラーの住所で位置情報を持つセグメントに対して、キャンペーンを行いました。

 効果測定の一環として、キャンペーンの期間中とその前で、自社のディーラーの近くで私たちが広告を配信できるアプリが開かれたかどうかをモニタリングしました。その結果、キャンペーン期間中は自社ディーラーの周辺でアプリが開かれた数が23%ほど上昇したそうです。もちろんこれだけで効果があったということはできませんが、参考情報としてレポートに加えることもできます。

― こういったリサーチとしての利用も日本で可能になると。

猪谷 キャンペーンの目的などに応じて、今申しあげたようなリサーチをレポートに組み入れることも可能です。

― アプリの利用者は、こうしたデータの取得や利用については理解していると考えてよいのでしょうか。

猪谷 AdNearは個人を特定できる情報は取得していません。また取得している情報も、各アプリの利用規約に基づいて、アプリ側で取得されたものを利用しています。

― 日本で対象となるアプリはどのくらいあるのでしょうか。

猪谷 現在はグローバルにサービスを展開しているアド・エクスチェンジで配信できるアプリが中心です。グローバルとはいってももちろん日本製のアプリもありますし、海外製でも日本でポピュラーなものもあります。現在国内でリーチできるユニークユーザー数は、月間で約2000万くらいです。 。

 配信にあたっては、アプリに対してターゲティングするというよりは、利用者がいる状況に対して配信するというイメージで捉えていただいたほうがいいと思います。あくまでもアプリを開いたときの状況と、利用者の特性が基礎になっているということです。

 アプリというのは、外出先でも見るものなので、そんなにすぐにコンバージョンはしないと思います。広告を配信する対象のオーディエンスと、場所、時間をきちんと設計すれば、確実にブランドや店舗に対する興味、関心度を向上させることは可能だと思っています。AdNearは、そのためのひとつのツールなので、広告配信をした結果、どこにより消費者とのエンゲージを高めるチャンスがあったのかといったところまで提示することで、継続的に使ってもらえるツールにしたいと考えています。

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ジオ・データはリアル世界のCookieである

― これからモバイルシフトが進むなかで、ジオ・フェンシングといった技術への注目も高まっていくと思われますが。

猪谷 これまでは、あまり場所や状況というのは意識することができなかったと思うんです。位置情報を活用することによって、それを意識できるようになる。

― これまで「ビヘイビア(行動)」というと、ウェブのアクセスログ、つまりウェブ上の行動という意味合いが大きかったのが、ジオ・フェンシングでは「地図上のビヘイビア」に意識が向けられると。

猪谷 そうですね。そこが一番新しいところです。AdNearでは、オーディエンスの行動履歴をベースにしています。スマートフォンは個人が携帯する端末なので、より各オーディエンスの特性に沿ったかたちでキャンペーンを行うことができ、より整合性の高いキャンペーンが可能になります。

角谷 ジオのデータというのは、「リアルの世界でのCookie」だと思うんですよね。それが使えるようになったのが、おそらく一番重要なところで。

株式会社マイクロアドプラス第1セールスユニットチーフアカウントプランナー角谷佳祐氏
株式会社マイクロアドプラス
第1セールスユニットチーフアカウントプランナー 角谷佳祐氏

 AdNear以外のジオ・サービスでは、プロファイルのデータを持っていなかったり、単純に「ここに来たから配信する」ということしかできなかった。AdNearではオーディエンスのカスタマイズも可能だし、リサーチにも活用できる技術も持っています。私は、「ジオ・オーディエンス」という言い方をしているのですが、そういうところが多分一番のポイントだと考えています。

猪谷 そうですね。今までとは違う、空気を読んだマーケティングができるという。

― 空気を読むマーケティング?

猪谷 その場の雰囲気というか。ジオとプロファイルを使うことで、「広告を見る人たちが今どういう気分なのか」ということを踏まえたうえでクリエイティブ配信できるようになる。それによって「空気を読む」じゃないですけど、その場の状況に適した広告の配信ができるようになるのではないかと。

― 位置情報の話が、意外にも「気分」の話になってきました(笑)。

猪谷 「その場所にいる」ということ、たとえば「自宅にいる」という場合、そこにはなんらかの気分というものがあるはずです。そこに対して最適なクリエイティブを作って広告を配信することができるようになる。

角谷 いろいろな活用の仕方があると思いますが、ジオを使えば、ユーザーの時間と、日々のほぼリアルな生活がわかる。それによって、クライアントが構築したペルソナに合った広告配信が可能になるというのがこの技術の革新的なところで、そのうえでクライアントに合わせて、いかにカスタマイズできるかというところですね。

 現在、いろいろなDSPが出てきていますが、広告の配信というのはかなり画一化されていると思っています。今回、AdNearと取り組みを始めたことによって、マイクロアドプラスが持ってるCookieデータだけでなく、ジオのデータも可能になった。これから新しいリアルなデータを掛け合わせていくことで、もっと可能性が広がっていくのではないでしょうか。

2015年にはDMPなどのデータサービスも提供

― 最後に今後の展開についてうかがいたいです。

猪谷 AdNearの機能として、日本のお客様のニーズに即したレポートをしっかり提供していきたいですね。日本は、気候など変動の要素が大きい。四季があり、月によっていろいろなイベントがあります。消費者を刺激する材料がとても多い国だと思うので。もうひとつは、まったく別のアプローチなのですが、データプロバイダー的なサービスのローンチも予定しています。

― それは意外というか、そこまで見据えての展開なのですね。

猪谷 中長期的には、マイクロアドの保有するデータとの連携や共同での商品開発を視野にいれて、マイクロアドプラスとの戦略パートナーシップを結びました。また、先ほど述べた通り、日本の企業様への展開は諸外国との展開と違う例が多くあるため、それぞれの企業様に合わせた独自の提案や展開案。そして、効率的なPDCAを前提としたレポート体制など、マイクロアドプラスには多くの知見がある点も、我々が戦略パートナーシップを結んだ重要なポイントです。

角谷 マイクロアドプラスとしては、国内初の「ジオ・オーディエンス・ターゲティング」をAdNearと提携して展開していく。そのときに重要なのは「ジオというのは場所じゃなくて、リアル世界のCookieだ」ということなんです。

 人の生活に寄り添ったマーケティング・プランをデジタルで実現する。もちろんインサイトの分析をしつつ、そこに寄り添った広告配信を行っていく。その中で、地域ごとの特性などもリサーチしていくことが今後求められると思うので。

― 位置情報の話から、人間の気分に寄り添った広告配信、さらには将来の展開まで、非常に興味深いお話をうかがうことができました。今日はありがとうございました。

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