価値あるデータを蓄積し続けた6年間
アトラエは、インターネットを通じて、採用の支援をしている企業です。サービスは大きく、分けて2つ。IT・Web系に特化した成功報酬型の求人サイト「Green」と、ソーシャルデータと人工知能を活用した「TalentBase」です。
人と企業の出逢いを創出するために、どのようにデータを活用しているのか。同社の岡氏に話を伺ってきました。
――ビッグデータを活用した採用サービスを展開していますが、データに対して具体的にどのように向き合ってきたのでしょうか?
岡氏:アトラエは2003年に設立した会社ですが、当初インターネットサービスはひとつもなく、データ活用とは無縁でした。2006年にGreenを立ち上げ、Webサービスに参入して初めてデータと向き合い、そこから地道にデータを蓄積し続けました。6年間の運用を経て、ようやく意味のある分析をするために十分なデータが揃ったと判断ができたので、本格的なデータ活用に乗り出しました。
――データの活用はGreenの構想段階から視野に入れていたのですか?
岡氏:そうですね。ただ、あくまでも、僕たちが最終的に実現したいのは人と企業の適切なマッチングであって、その手段として、データの活用が重要だと考えていました。Greenは採用が決まった時に対価をいただく成功報酬型のサービスなので、選考の進捗課程のデータを全て保有する必要があります。具体的には、誰が、どの求人に応募して、何回面接をして、何回面談をして、どの企業に内定したか、といったデータが一例です。
そういったデータを集めることで、どのような人がどのような企業と相性がよく、最終的にどのような企業に採用されやすいかが分かり、より本質的なマッチングを実現することができると考えていました。
人と企業が出逢うのためのデータとその活用方法
――どのようなデータをどれくらい蓄積するのか、目標は決めているのですか?
岡氏:具体的な蓄積目標は決めていません。ですが、「人と企業の適切なマッチング」という目的を達成するために必要なデータの取得にはこだわっています。一般的なECサイトのような、人がどんな商品にどれくらい興味を持っているかというデータと同様に、Greenでは人がどんな企業にどれくらい興味を持っているのかというデータを大量に蓄積しています。
ただ、Greenの場合は、たとえ人から企業に対して興味の矢印が向いていたとしても、企業がその人へ興味の矢印を向けていなかったら当然理想的なマッチングは生まれません。その逆もまた然りです。人と企業のお互いの興味の矢印を一致させて初めて、Greenは世の中へ価値を生み出すことができるのです。
少し話が逸れますがアトラエは、株式会社インテリジェンスの子会社を立ち上げた人間が創業した会社です。そのため人と企業がどのように出逢い、お互いがどのような心理状態の中、最終的にどのようにして採用決定に至るのか、という実際の現場でしか経験しないようなノウハウを保有しています。そのノウハウがあることで、初めてデータに意味を持たせることが可能になり、今まで難しいとされてきた、人と企業の興味の矢印を一致させるような適切なマッチングを生み出す仕組みが着実に整いつつあります。
よく誤解されるのですが、僕たちは人材紹介会社のトップコンサルタントが行っているようなマッチングを、データの活用によって実現できるとは思っていません。リアルなコミュニケーションと豊富な経験値に基づいたマッチングを生み出している真に優れたエージェントには、正直勝てないと思っています。逆に言えば、大半の人材紹介や求人広告の市場は十分狙えると感じています。