選挙キャンペーンに採用される柔軟な拡張性
こういったキャンペーンでは、どの程度トラフィックが集中するかを見積もるのが難しい。また、オンプレミスで対応した場合、キャンペーンが終了すれば用意した環境は不要になってしまう。その点で、急にトラフィックが増えても即座に対応できるクラウドと短期的に行うキャンペーンの親和性は高い。
また、公的な議員選挙のキャンペーンでもクラウドが使われている。河野氏によると、2014年は米国で、2015年はカナダで選挙キャンペーンにAzureのApp Serviceが採用された。カナダでのキャンペーンの際は、CBC (Canada Broadcasting Corp)の番組でも利用した、地図上に各党の投票獲得状況等が表示されるWebサイトを視聴者がインターネット上でも確認できる仕組みを展開した。
「基本的なゴールは、1秒で100万のアクセスが来ても耐えられること」(河野氏)というのだから、生半可な規模ではない。1秒100万アクセスを想定し相当数の事前検証を重ねた結果、実際に1秒最大80万、6時間で計36億のアクセスがあったが、問題なく処理できた上にエラーも0件だったという。
ちなみにセキュリティに関しては、米マイクロソフト内に河野氏のようなエンジニアチームとは別に専門部署があり、彼らが担当しているという。「セキュリティは常に変化するので、情報を追い続けるのが難しい。その点、弊社では社内にスペシャリスト集団がいるので、サービスを構築する上で心強いですね」。
AzureはISO等の標準化団体、各種政府機関、各種産業機関等22の団体からセキュリティについて認証を受けている。そのため、サービス構築の際のセキュリティテストが不要であり、キャンペーンがスピーディーかつ容易に展開可能になっている。
モバイル端末とWeb上の情報を常に同期
キャンペーンから少し離れると、次のような例もある。英ロンドンの地下鉄で、作業員が保守点検のために使うサービスを、Azure上で構築しているのだ。
具体的には、一人ひとりの作業員がモバイル端末を使って、ネット接続が途切れがちな地下で作業をし、オンラインになった際に地上のバックエンドシステムとデータを統合。社内の保守管理部門のWebでも、常にアップデートされた状況を把握できる。こうしたモバイルアプリとWebを統合した仕組みも、河野氏が担当するApp Service領域でフォローしている。
「App Service上で、モバイルアプリでもWebでもまったく同じように使える仕組みを構築したことで、開発コストを大きく圧縮できました。この点が、クライアントに非常に喜ばれましたね。既存のオンプレミスのデータベースにセキュアにアクセスできることや、ネット接続が断続的な環境をカバーしたことも特徴的でした」。
これは一例だが、こうした保守点検以外にも、ビジネス上でモバイルアプリとWebの両方で同じシステムを使いたい、データベースを常に一元管理したいというニーズは他のシーンにも多い。河野氏は「このノウハウは、さまざまなケースに適用できると思います」と話す。