バナー広告はアイデア次第でまだまだ発展する
MZ:ではここからは、ヤフーの高田さんと鈴木さんに、10周年を迎えたアワードのこれまでと今後の展望をうかがいます。まずは先ほどの「胸キュン♥スロット」を、どのようにご覧になりましたか?
高田:この作品は、私もつい何回もやってしまいました(笑)。インタラクションやギミックに凝った広告をつくりたいと思う人も多いですが、そういう企画ほど案外、ユーザー視点では1回触って終わりだったりします。何回も接したくなるのは、やはりコンテンツの力なのではないでしょうか。スマホのバナーという小さな枠に、これだけアイデアを込められるんだと思わせる、いい事例でした。
MZ:今回の特徴や、応募作品の傾向などを教えてください。
高田:今回も沢山の方々に応募いただき、盛況でした。傾向としては、スマホが特別なもの扱いされなくなったと強く感じました。私たちも、今回は求める作品を「スマートデバイス」から「マルチデバイス」へ広げるとお伝えしましたが、実際の作品もスマホは前提として何ができるのかを考えられていたことが、大きな特徴でした。
この賞は、ネットの進化に応じて、審査の部門が毎年変わるという特殊な賞です。一方で、ヤフーはずっと「クリエイターが広告の価値を創出している」と考えていますし、それを重視しています。テクノロジーの幅も広がっていますが、それに頼り切らずに、ユーザーを楽しませようとする作品が多く寄せられてうれしかったです。
フォーマットによらないおもしろさに焦点を
MZ:先ほどの受賞者のコメントでは、ぜひ純粋な広告部門を残してほしいという要望がありました。
高田:バナー広告がネット広告の原点だ、というコメントもありましたね。たとえばテレビCMでも、15秒もしくは30秒の映像というフォーマットが決まっている中で、クリエイティブがどんどん進化してきました。
ネットでは次々と新しいフォーマットが生まれ、それによって発展する表現ももちろんありますが、一方で旧来のフォーマットでもおもしろいものはおもしろい。そこに焦点を当てるのは、クリエイティブアワードが目指すところでもあります。
鈴木:先ほど高田が話したように、賞の枠組みは変化し続けていますが、その中でシンプルな広告クリエイションの部門はずっと残しています。審査の過程では、ネットの機能を介してこそ“インターネット”のアワードなのでは、という議論も上がりましたが、ヤフーとしてネット上で人の心を捉える力強い広告を今後も評価していきたいと思っています。
一方で、今年でいえばアプリ部門やイノベーション部門を通して、ネットならではのクリエイティブの力を強めたい考えもあります。このアワードでは両方をフォローしながら、ネットに携わるクリエイターを支援する立ち位置になれればと思っています。