ネット広告、検索広告の爆発的な伸びと媒体の供給不足
現在、アメリカのネット広告費は、年間30%ぐらいで成長している。日本でもそれを大きく超える勢いで成長しつつある。変わりつつある消費者のメディア使用形態に広告主もなんとかついていっているという感じではあるが、実はこれはネット広告にとっていいことばかりではない。増え続ける需要に、広告在庫の供給が追いつかず、中長期的には価格が上昇したり、媒体社サイトの中の広告占有面積が増えてしまい、広告クラッターの問題が発生してくるのではないかと懸念されている。
そこでこの在庫問題を解消できるのではと注目されているのが、このCGMやWeb2.0的なサイトである。というのも、ロングテール論は広告の分野でも成り立ち、ニッチサイトや個人サイトのトラフィックでも、それをテクノロジーを使ってかき集めることで、ある程度のリーチの読者に向けて広告訴求することが可能となっている。
すでにGoogleはコンテンツ連動型広告ネットワークAdSenseをブログブームが始まる頃から提供し始め、メディアサイトや中小規模の検索エンジン、新しいWeb2.0サービスサイトなどでも使われている。アメリカではこの他にも広告ネットワークが多数あるが、これらに対抗するかのように、Yahoo!はYahoo! Publishers Network(YPN)を、MSNもadCenterを投入して、このCGM、Web2.0での広告展開へ進出しつつある。Yahoo!はすでに傘下のWeb2.0的な写真共有サイトFlickrなどでYPNの広告を展開しているし、マイクロソフトもLive.comやブログサービスMSN Spacesでの展開がテストされ始めている。
CGM、広告ネットワークもリッチメディア化
2004年はアメリカでブログの影響力が大きく感じられたことにより、ブログの数も著しく増えた。そして2005年は音声ブログといえるようなPodcastが大きく伸びた年で、ラジオ局やTVのニュース番組、新聞社などは軒並み乗り遅れまいとPodcastを始めている。そして2006年は動画ブログ(Vlog、Vodcast、Video Podcastなどと呼ばれる)の年と言えるだろう。
現在、ティーンに人気のトップSNSサイトMySpaceは、もともと音楽ファイルのアップロードなどの機能があったが、これに動画を付け始めた。またビデオSNSのYouTubeもすでに立ち上げから1年も経たずして、毎日延べ300万視聴が行われているサイトに成長している。
このようなリッチメディアブログに対応すべく、広告ネットワークもリッチメディア化しつつある。例えば、Podtracは、Podcasterと広告主を結びつける広告ネットワークで、各Podcastのリスナーのデモグラフィック情報などを第三者調査機関に依頼して広告主に提供する。また、Google AdSenseも、ビデオを含めたものがテストされているというレポートもあり、テキスト・画像から、音声、動画へと進んでいくのは間違いないようだ。
消費者がメディアになる時代における広告環境
もちろん、マスメディア企業の存在意義が全くなくなるわけではなく、質の高いコンテンツプロバイダーとしてこれからも活躍していくであろうが、相対的な重要度、あるいはオンラインでのコンテンツ総量からするとそのシェアは徐々に落ちていくのではないかと考えられる。
そのような環境下で、「消費者がメディアになるという時代」ということを真剣に考えてサービスを提供する企業がますます増えていくだろう。Googleが広告販売代行をAdSenseでやっていたり、ニュース通信社のReutersがブロガーに最新ニュースフィードを送ったりというようなサービスがこれからもっともっと増えることで、今までマスメディアでしか提供されなかったサービスが、一般消費者のサイトでも使えるようになる可能性が高くなるだろう。
そのような状況になってくると、広告のあり方は必然的に今までとは全く変わったものにならざるを得ない。今回は、クチコミやアフィリエイトの話は記事の分量上含めなかったが、さまざまな形態の広告、いや、商品開発からマーケティング、販売、カスタマーサポートに至るプロセスまで、CGMで行われるようになる未来がそう遠くないうちに現実化するであろうと考えられる。