会社全体を変えるにはチームマネジメントが不可欠

押久保:私もランニングをやっているので、心身の健康というテーマにはとても興味があります。道場の話はまた後ほどお聞きするとして(笑)、先ほどから「チームマネジメント」という言葉を挙げられていますが、そのあたりのお考えをもう少し詳しくうかがえますか?
藤原:僕は外部のセミナーなどで、マーケティング以外に組織マネジメントの講座を担当したりもするんですが、マーケティングと同じくらい大事にしているのが、チームマネジメントです。
事業や会社全体を変えるには、自分の部署や部下だけでなく、他部署をどう巻き込むかが問われます。マーケターならマーケティングの力以外に、調整力やコーディネート力が必要です。規模が大きくなれば、代理店や各ベンダーにまで、その力を及ぼさなければいけない。そういうことができる人を育ててこそ、ビジネスがうまくいく、というのが僕の考えです。
押久保:なるほど。特にデジタルマーケティングの領域だと、数値や役割が細分化している分、部分最適になりがちな印象です。
藤原:そうですよね。僕もしばらくこの領域にいる中で、チームマネジメントの視点が極めて弱いと感じていました。でも、担当業務は限られていても、携わっているプロジェクトやビジネスはもっとずっと広くて、どの部署ともつながっている。その視点に気付くと、人は変わります。「それならもっと、他部署の人とも話さないといけないですね」と言ってくれるようになったり。
現場の意見に無駄なものはない
押久保:そうなると、すばらしいですね。でも、それは同時にすごく難しいことではないでしょうか? たとえばマードゥレクスでは、どんなことを実践されているのですか?
藤原:今はとにかく「聞く」ことを大事にしています。現場の皆が「本当はやりたいのにできていないこと」を聞き、可視化して、全部受け入れる。実際、現場が感じていることでやらなくてもいいことは、ほとんどありません。
つい先日も、あるスタッフが打ち合わせで「会報誌ではもっと商品の背景や私たちの思いを説明して、だからこのセットを用意したのだと伝えたい。ただ『今なら2割引!』だけではダメだと思う」と言うんです。ネット上のコンテンツマーケティングの潮流も、まさしくそれですよね。だから「ネットでもそうなんだよ、そうしよう!」と後押しすると、皆からさらにどんどん意見が出てきます。
押久保:現場がいちばんよく分かっているんですね。
藤原:そうなんです。僕は、その実現を阻むボトルネックを解消したり、優先順位をつけたり、進むべき道を示すだけ。「できる」と思うと、人は俄然モチベーションが上がるので、その上で会社や事業の状況を共有すれば理解してくれるし、皆が落としどころを見つけようと努力してくれます。
そして、実行段階では絶対にチームで動く必要があると思っています。僕だけが突っ走って、気付いたら後ろで皆が倒れていた、というのはダメですよね。一人ひとりのスキルやその会社のスピードに合わせながら、皆の動きで改善しているのだという当事者意識を持てるように促すと、どんどん好転していきます。