全社員が同じ「ゴール」を共有できていますか?
MarkeZine編集部(以下、MZ):御社は2017年2月に「ゴール」機能のリリースを控えています。なぜ新たにゴール機能を開発するのですか? そもそも企業がKPIやゴールを設定する際に、どのような課題があるのでしょうか?
シャノン中村健一郎(以下、中村):これまで数々のお客様と折衝してきた中で、顕著に感じることの一つが、同じ企業にいながら、ひとたびレイヤーが異なると、同一のゴール(KGI)が社員間で共有できていない現状です。同じゴールを描けていないので社内や現場の動きがチグハグになっているケースを、目の当たりにしてきました。
MZ:現代はかなりツールが出揃って、マーケティングへのアプローチがこなれてきたと感じます。時代とともに、新たなマーケティング上の課題が出てきているということなのでしょうか?
中村:正直に申し上げると、課題の中身自体は大きく変わっていないと考えています。シャノンでは、毎年国内BtoBマーケティングに関するアンケートを実施し、3月に結果を公開していますが、課題についての項目は、毎回似た内容が上位を占めます。
昨今ではマーケティングオートメーション(以下、MA)にしても、かなりの数が市場に出ていますよね。MAを含めてソリューションツールがたくさん出過ぎて、お客様側が困惑しているのは確かです。さらに、ABM(参考記事:ABMとMAはいったい何が違うのか?温故知新のBtoBマーケ最新事情)みたいな話も出てきていますし(笑)。私たちのようなツール提供者や情報提供者側だけがそれぞれの違いを理解していて、実際に利用するお客様側からすれば、道具ばかりが増えている状況だと思います。
MZ:現場での課題が解決できていない、と?
中村:少なくとも現場のみなさんは、そういう思いが強い。3年連続で、マーケティング部門の課題の回答第1位が「マーケティング活動の成果が見えない」だというところにも表れていますよね。
なぜ、ツールの進化と成果への見解は比例しないのか?
MZ:デジタルシフトが進む昨今、ツールはどんどん便利になっています。環境や道具が揃うことで、何をするべきかが見えてきているはずです。それにもかかわらず成果が思うように出ないのは、なぜなのでしょうか?
中村:以前に比べれば、格段にデータは可視化できています。たとえばシャノンでは、2014年からBIツールのTableau(タブロー)をシステムに組み込み、よりデータを見やすく、確認しやすくしてきました。
MZ:可視化できているのに、成果に関するギャップが埋まらないということですか?
中村:はい。私たちなりに出した答えは、細分化されたデータを前に、明快に見解が述べられないからだと考えています。「何らかのクリック率が高い」「あの広告の反応がいい」といった、個々のデータは確かに見えているけれど、それらのデータに対して、「だから、どうなの?」となってしまう。
では、なぜそうなるのか。同じ企業内でも立場が変われば、見えてくることが異なるからです。たとえばマーケティングの立場から、「現場でマーケティングをやっている方」「マーケティングをマネジメントしている方」「経営層、マネジメント層」と3分類に分けて考えてみても、規模が大きい組織ほど、3分類の間で生じるズレは大きくなりがちです。
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経営者と現場担当者でビジョンが異なる悲劇
MZ:確かに、各レイヤーで求められる役割は異なりますよね。
中村:組織として1つの方向性があるはずですが、それぞれのレイヤーの方に聞くと、まったく見解が異なっていたりします。たとえばお客様と話していても、社長から「私、マーケティングは詳しくなくて」「うちなんて、まだまだですよ」といった言葉をよく聞きます。「いや、そんなことはないですよ」という状況にもかかわらず、です(笑)。
経営者の立場からすると、「マーケティングがよくなっている」と聞けば、「昨年対比で売上が伸びたのか」「競合他社と順位が入れ替わったのか」といった最終的な結果が気になります。そこで結果が出ていないと、「なんだ、順位はそのままなのか」となってしまう。しかし、「マーケティングの成果によって、売上が大幅に改善された」といったところまで耳に入れば、話は違ってくるはずです。問題は、そこまで話が伝わらないことです。
MZ:こうした立場の違いが、ミドルマネジメント層や現場担当者にもあり、それぞれに言い分があるので、ますます収拾がつかなくなるんですね。
中村:環境が揃っていると、「何かがやれそう」という予感は持ってしまいます。しかし、実際はやれていない。マーケティングの成果について、リードを獲得すること、商談まで進むこと、実際の売上に結びつくこと、これらを1本のつながりで見るべきなんです。
共通のゴールが持てると、各部門で適切なKPIを設定できる
MZ:レイヤーごとに見解が異なっている現状を踏まえると、解決の一歩として、全社的に共通のゴールを持つことが重要なのだとわかりますね。
中村:現場担当者は、課題“感”を持っていても、明確な課題を持ち合わせていなかったりする。つまり、分析や検証に基づいた裏づけといったエビデンスがない状態で、肌感覚で感じていることに終始しているケースも、よく見受けます。
もちろん、「課題感」と「明確な課題」とが大きく実態からかけ離れているわけではありませんが、あくまでも肌感覚なので、深く追求されると明快に返答できない。エビデンスがないので、相談されたミドルマネジメント層とも課題が共有できず、結局予算が計上されない。営業からは「マーケティング部門がしっかりしてくれないから動けないよ」なんて言われてしまう。
MZ:よく耳にする、マーケティング部門と営業部門の断絶ですね(笑)。
中村:考えるきっかけとなるなら、スタートが道具ありき、ツールありきでもいいのかもしれません。問題は、ツールありきで止まることです。そうではなくて、共通のゴールに向けて1本のシナリオがあると、ゴールを因数分解して各部署、各部門で連関したKPIが導けます。
MZ:共通のゴールによって、周りが何をやっているのかも見える、というわけですね。
中村:そうですね。懸案の課題に対して、課題AとBはMAで見通しがつきそう、CはMAではなく広告での解決が得策、Dはシステムとは関係なく勉強会をやるべき、といったように、解決方法と取り組むべき優先順位が見えてきます。あとは、事前のROIに基づいて、難易度(時間・リソース・リスク)と成果の度合いも勘案した選択が可能になっていきます。
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シャノンのゴール機能が、全社で「共通のゴール」を可視化する
MZ:では、具体的に共通したゴールをどう描けばいいのでしょうか。その支援のために、ゴール機能が出てくるのだと思いますが、どういったことができるのでしょうか?
中村:案件に対して「リード」「資料請求」「商談」といったゴール、もしくはKPIを設定する欄があるので、選択してください。ただ、資料請求といっても、毎月一定数を求めるのか、季節要因を加味して毎月の目標数が変動するのか、によっても条件は変わりますよね? それらも変更できるようになっています。設定後はゴール一覧画面を確認すれば、結果がリアルタイムに更新されていきます。
MZ:なるほど、こうした共通画面があれば、担当者全員が確認できますね。
中村:はい、同じ画面を見ながらのディスカッションが可能になります。
他にも、ダッシュボードは柔軟な仕様にしており、たとえば営業日に応じた確認ができます。月初に前月のマーケティングKPIを集計していては、前月の目標が未達の場合でも、今更何も手が打てませんよね。営業日に応じてリアルタイムに分析すれば、「10営業日で5件のペースでは目標の資料請求数に届かない」といった予測が当月内に立つので、「今月の目標達成のために」現場担当者とミドルマネジメント層がリカバリプランを立てることができます。
ゴールと現状を共有できるからこそ、予算を求める根拠がわかりますし、売上につながる話だから、とトップマネジメントにも理解されやすくなります。
MZ:どの立場からも「現状」が見えやすいわけですね。
中村:組織上各レイヤーの立場が絡んでくるため、会社の「現状」というものが、最も内部から見えづらい部分だと思うんです。
中村:毎年の弊社による調査では、KPIを採用していない企業の割合が約40%(2014年度)から26.4%(2015年度)まで、大幅に縮小しているというデータも出ています。私たち自身、年々企業の中で、ゴールをKPIに分解してマーケティングをマネジメントするという機運が高まっている、と感じています。だからこそ、このタイミングでゴール機能を提供することで、多くのお客様に活用していただけるのではないかと考えています。
往訪にも対応。課題解決チームを1.5倍に規模拡大
MZ:お話をうかがっていると、御社が行っている業務はまるでコンサルティングですね。
中村:私たちの使命は、お客様のマーケティングの課題を解決、解消していくことです。もちろんお客様にはMAを買っていただきたい。昨年対比で倍以上のお問い合わせをいただいており、ありがたいことに指名買いしていただくことも増えています。ですが、私たちの一番の思いはMAを導入するだけでなく、使い続けて、お客様に成果を出してほしい、ということです。
「ゴール機能が出ました」と言うだけでは、また道具ありきの話になるので(笑)、もっと強力にお客様の課題解決を行う体制づくりにも着手しています。当社が編成する課題解決チームをさらに1.5倍規模に増強し、問い合わせのお電話やメールへの対応のほかに、往訪する部隊を用意します。
MAが何でも解決できるわけではありません。だからこそシャノンは、お客様が抱える問題を根本的に洗い出していける、そして解決のために伴走するパートナーでありたい。そのための仕組みやソリューションも、あわせて提供したいと思っています。
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