マーケティングツールは最先端。だから、「誰だって未経験」
プロ野球からまったく未経験のマーケティングツールの世界に飛び込んだ江尻さん自身は、最先端の現場だからこそ挑戦できると考えたそうだ。

「面接のときに、『最先端の部署に配属されることになるけど大丈夫か?』と聞かれたのですが、私は反射的に『大丈夫です!』と答えました。本当に最先端の部署ならば、専門家であっても同時に勉強しなければならないということだと、私は勝手にそう解釈したのです。実際に仕事をしてみて、そのときの考えが間違ってないことがわかりました。同じ部署の人はそれぞれにキャリアを、もっていますが、目の前で起こる新しいこと、これから起こるであろうことに対しては、みんなが初体験。誰でも、同じタイミングで学ぶことが多いのです」(江尻さん)
とはいえ、江尻さんは当初、プロ野球のグラウンド以外で働いた経験はゼロ。名刺を持ったことも、ビジネスメールを打ったこともない。デジタル業界の会議で話される言葉はまったく理解できなかった。
「最初は出られる限りの会議に出ましたが、会議のたびに初めて聞く用語が50個くらい出てきました。最初は、とにかく意味のわからない言葉をすぐにメモして席に戻って調べる、それの繰り返しでしたね。教習所で免許を取ったばかりの人が、いきなりF1レースに出たようなもので、毎日がOJTの連続でした」
そのとき江尻さんを助けてくれたのが、広告代理店やメーカーの人、厳しくて優しい同僚や上司だった。江尻さんは入社してすぐに、あるプレゼンを任された。「自社の事業概要を説明せよ」というミッションだった。必死に資料を作り上司に提出したが、あっさりと却下。すべてやり直しすることになった。
「こんな大事な仕事、自分でいいのかと思いながらやりましたが、すべてダメ出し。淡々とした構成のプレゼンに『おもしろくない』と一蹴されました。上司のアドバイスを受けながら、自分の経験したことを加え、プロ野球を例に挙げながら、プレゼンができるように考えました。『皆さん、153という数字、何のことかわかりますか?』という導入から始めたプレゼンでした。153というのは、私が現役時代に投げていた球速のことです(笑)。上司のアイデアで盛り込むことになったのですが、 どんなことでもいいから、自分の個性を最大限に使って人を引きつけることの重要性を学びました」(江尻さん)
マーケティングバンクのサイトには、江尻さん自身が連載する「江尻のマーケティング奮闘記」という連載も掲載されている。自らを「投げるデジタルマーケター」と称し、自社で販売するマーケティングオートメーションツールを訴求していくこの連載は、自らを「コンテンツ」に仕立てたコンテンツマーケティングと言える。
プロ野球引退から2年もの間、江尻さんは1フロアに1,000人近い社員が働く大企業の中で戦い続けてきた。そんな江尻さんに、これからデジタルマーケティングの業界で仕事をしようとする方々へのアドバイスを聞いてみた。