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第99号(2024年3月号)
特集「人と組織を強くするマーケターのリスキリング」

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MarkeZine Day 2017 Spring レポート(AD)

「何に、いくら使えば、どれだけ売れるのか」に迫る マーケティングROIコンサルティングの視点とは

 2017年3月の「MarkeZine Day Spring」では、昨今話題になっているマーケティングのデジタル化の加速について様々なセッションが展開された。電通デジタルでアナリティクス事業部長を務め、グローバルに展開する分析会社Data2Decisionsの日本代表でもある濱口洋史の講演では、マーケティングのROI最前線から「何をどうすれば、どれだけ売れるのか」に迫るというタイトルで、最先端のマーケティング論が展開された。

経営者が知りたい、たった二つの指標とは?

 濱口氏によると、米国の広告調査協会ARFが主催した、広告代理店の人間が集まるカンファレンスで次のような言葉が提起されたと語る。

 一つ目は、マーケティング投資は売り上げや利益に成長をもたらしているのか。二つ目は、マーケティング投資を月に1ドルもしくは日本円で1円使うとしたら、どこに使えばいいのか。「経営陣が知りたがっていることは、シンプルにこの二つしかない」と濱口氏は言う。

株式会社電通デジタル アナリティクス事業部長 濱口 洋史氏

 そこで濱口氏は、利益を正しく理解しながらマーケティングプランニングを考えていくための二つの視点を述べた。

 一つ目は、「売り上げは、マーケティング施策の積み上げである」という視点だ。たとえば売り上げが100あったとして、実はその10%は値引きによって作られたのかもしれないし、5%はソーシャルの活動のおかげで作られたのかもしれない。売り上げが複数のアクティブの結果として形成されている、と見ることが必要だ。

 二つ目は、「売り上げは、消費者一人一人の購入行動の積み上げである」という視点。売り上げが100だったとしたら、そのうちの80は常連客の購入であり、残りの20%はライト層の消費者の行動で成り立っている、と区別する考え方である。

 この二つの視点をもってプランニングや戦力を立て、効果検証していくことが非常に大事になってくるという。

ROIをベースにマーケティングを考える

 具体的な施策として、濱口氏は次のように述べた。

 一つ目はマーケティング施策の積み上げ。売り上げは値引きやSNS、ネット広告によって成り立っており、これはROIがベースになっている。ROIとは「Return of Investment」の略称だ。たとえば、テレビ広告に1円出稿して売り上げが2円上がるのであれば、売り上げベースのROIは「2」となる。施策ごとにこのROIを活用し、予算の設定や配合、施策の効率性の管理を回していくことで、より売れるマーケティングを実施していくことができるのである。

 二つ目は消費者一人一人の購入行動の積み上げだ。たとえば、どこの誰がどのように売り上げを支えているか、購買データを使いながら明らかにしていくことによって、ROIを前もって意識したプランニングができる。

 ROIがわかれば様々なことが判明する。たとえばマーケティング予算を1億円から50億円に変化させた際の売り上げの変化が、シミュレーション感覚で考えられるようになるなどの利点がある。

MMMに代わるエコシステムモデリング

 次に濱口氏は、「マーケティングミックスモデル(通称MMM)」と呼ばれる、昔から使われているベーシックな手法を用いて、マーケティングで投資する際に、効果指標を売り上げとした場合の管理の仕方を紹介していった。

 複数の時系列のデータを強引に分け、統計的に売り上げを分解すると円グラフや色分けができ、それぞれの要因の貢献度を把握することができる。MMMを活用すれば、売り上げの構成要因が明らかにできる。その結果、細かな部分での予算の配分を予想できるようになるのがMMMの利点だ。

 しかしながら、顧客の購買行動は複雑になってきているので、実はMMMだと少し不都合があると濱口氏は課題を指摘する。MMMは旧来の手法であり、近年のプランニングには通用しないのだ。

 そこで濱口氏が新しい手法の一つとして紹介したのが、「エコシステムモデリング」だ。エコシステムモデリングとは、インストラクションを考えながら、セールスまでの道筋を明らかにし、それを考慮した上でのモデリングや効果検証を行うものだ。

 たとえばペイドメディアに出稿することによって、検索件数が14%増加し、それによりオウンドメディアへの流入が47%増加した結果、売り上げが2%増加する構造があったとする。この構造をYouTubeやFacebook、Twitterで全体として管理しながら、最終的な売り上げのパスを考えていく。つまり、直接的に購入につながっていなくとも、各連携の構造を見ておくことで、各マーケティング施策の貢献度合いを管理していくのだ。イントラクションを考慮すれば、デジタルの細かい施策のROIも算出しやすくなるのだ。

消費者の行動データを分析する

 濱口氏は次に、個別の消費者行動を意識した戦略立案について語った。売り上げというのは、何人がどれだけ買ったか、どれだけ利用したかの掛け算である。しかし、購入客数の中には新規の顧客もいれば、既存の顧客もいる。客単価についても1回あたりの単価や回数など、各要素をブレイクダウンしていく必要がある。

 かつてのマス消費の時代とは変わって、統合されたソリューションを使いながら、意識だけではなく行動までも動かしていかなければ、消費者の購買意欲の増加につながらない。そのため、意識調査(アスキング)の結果だけでマーケティング施策を作るのではなく、行動データも確実に捉えていく必要があるのだ。

 濱口氏にクライアントから寄せられる相談を見てみても、「商品が思ったより売れないので、どうやったらシェアを広げられるのかを知りたい」、「売れ行きは好調なのだが、逆に好調の理由がよくわからない」といったものが珍しくないという。これらの疑問を解消するためにも、市場行動を把握したうえで、ROIを取れるマーケティングを行っていき、意識データだけではなく、行動データも活用するのがベストなのだ。

 ただし、行動データだけでは判別しにくいケースも多くあり、そこに意識データを付随させながら、意識を変化させて動かしたい人を動かすといった考え方が必要になってくる。これが正確なROI算出につながる、と濱口氏は語った。

 戦略を立ててROI向上を図る

 今回の講演を総括すると、一つ目のトピックはROIを意識したプランニングの話。「売り上げは施策の積み上げによって成り立っている」という考え方と、「売り上げを最終目標としてマーケティング管理をしていく」といった考え方。これを考えることによって、どんな施策がどのくらいの売り上げに対して必要なのかが解明するのである。そして、もう一つのトピックは売り上げを人の行動で分解した場合、初めの戦略を立てる時にはROIを意識してプランニングを行い、ROI向上を図っていくことが大切ということだ。

 講演の最後に濱口氏が強調したのが、「できることから始めてみることの大切さ」だ。ROIは複雑であり、そもそもデータだけで100%やりきるのは不可能である。最初は不完全でも、始めてみることが大切だ。これまでの売り上げの変動やマーケティング費用などをあわせるだけでも、マーケティング費用が売り上げに対して効いているのかがわかってくる。データが不足しているのなら、販売金額と広告費用の合計を見るだけでも十分。単純なものを見ていくだけでも、マーケティングの確実性やROIについて考えることができるのだ。

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この記事の著者

ヒロ88(ヒロハチジュウハチ)

ビジネスジャンルを中心に取材、編集を行なう。得意ジャンルは不動産開発、メディア開発。1988年生まれ。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2017/04/06 10:37 https://markezine.jp/article/detail/26209