勘違いされがちなAI/注意が必要なIoT
続いてのテーマは、AIやIoTの導入時に起こる勘違いだ。武田氏は数年前のAI導入時に実際に起きた出来事を例として挙げた。
通常、顧客案件に用いる前にPOCというテスト解析をする。その結果をもとに顧客と導入に向けたプランを練っていくのだが、「導入に向けてのプランもAIに考えてもらえるのではないのか」と問われたという。つまり、顧客側は導入際しての業務プロセスの改善・提案もAIがしてくれるだろうと期待していたわけだ。

ここに、AIの現状と顧客の期待との間に横たわる大きなギャップが垣間見える。武田氏はこうした認識のズレを生まないよう、現状のAIは実際の個別業務で使う物に過ぎず、改善・提案などの業務には使えないということを、具体的な資料も含めて説明するようにしているという。
続いては、岩佐氏だ。IoTが誤解されているという認識はないとしながらも、導入においての実務的な注意点を述べた。
IoTは必ずサーバーやスマートフォンのアプリケーションが必要となるため、サーバーの維持費やアプリのバージョンアップが発生する。そのためどうしても従来よりもコストがかかりがちだという。当然、企業は“必要なコストはユーザーから回収する”と考えるだろう。ここに問題があると岩佐氏は指摘する。
つまり、顧客がこれまでお金を払ったことのない新しいソリューションに対し、毎月費用を負担してくれるようになるには壁があるという。特に、これまでの生活の中ではランニングコストが不要だった行為を代替するIoTサービスは要注意だ。「実際やってみたら、誰も課金してくれないということすら起こりうる」と岩佐氏は警鐘を鳴らす。
5年後や10年後まで見据えて
続いては、AIやIoTの数年後をどのように予測しているか、現場からの声を語った。
まずは岩佐氏が、“AIやIoTが特定の一企業によって独占されるのではないか”という世の中の声に対し、「特定の一社がすべての製品業界においてディスラプトするというのは絶対にありえない」と主張した。

AIは細分化し、IoTの分野は広がりつつあるなか、日常のあらゆる物・工業製品の種類はあまりに広い。その広さゆえに、一社ですべてをカバーすることは現実的ではないという。
続いて武田氏が、今後5年の間のAIの進歩について予測を述べた。AIの汎用性は先述のようにそれほど広くはなく、ビジネスドメインごとに学習させる必要がある。テキストデータや画像、動画などについても、データの種類によって分析方法は変わる。そのため今後5年間は接客や製造、医療など分野・業種ごとにそれぞれのAIの作り込みが発生し、浸透してくる時期になると予想する。