創造性を制限する、ネット3大サービス
「私自身、ネットは大好きです。皆さんもご存知のように、ネットは世界中に利益をもたらしています。その一方で、最近のオンライン・カルチャーは、クリエイターにとって大きな制約となっていることも事実です。今回特にお話したいのが、『クラウドソーシング』『フリーカルチャー』『ソーシャル』という、三つの制約にです」

まずゴードン=レヴィット氏は、クラウドソーシングについて解説した。
「まず、クラウドソーシングが挙げられると思います。クラウドソーシングには2種類があります。第一には『ビッグデータ・クラウドソーシング』があります。ビッグデータを活用しながら、さまざまな作業を行うものです。これは膨大なデータをもとに効率的に作業ができる素晴らしい技術ですが、創造的な使い方はできません。
もう一つのクラウドソーシングでは、『オープン・コンテスト』があります。これはある企業が課したテストに対して、あらゆる人が挑戦できるコンテストで、優勝者として選ばれた人が報酬などを得られるものです。よく知られている例では、『Xプライズ財団』などが挙げられます。有人弾道宇宙飛行のコンテスト(2004年)や石油浄化コンテスト(2010-2011年)などを行い、優勝者には莫大な顕彰が与えられました。間違いなくクリエイティブなことを行っています。しかし、オープン・コンテストは多くの人にチャンスを与えていますが、利益が得られるのは優勝者だけで、残りの大多数の人は実際の活動に参加できません」
ゴードン=レヴィット氏は、このような活動では「クリエイティブな人たちが協働する」という環境はできない、と語った。
「次に取り上げるのは、皆さんもご存知の『フリーカルチャー』です。今や、文化、アート、文学、科学、ジャーナリズムなどが無料で利用できますが、これもクリエイター達の大きな足かせとなっています。知的財産には対価が払われるべきですが、現状ではそうなっていません」
ゴードン=レヴィット氏はここで、コンピューター哲学者のジャロン・ラニア―の著作『Who Owns the Future』を引用しながら、フリーコンテンツの問題点について語った。昨今のフリーコンテンツの利用には広告がついて回り、クリエイターに支払われるべき報酬が、ユーザー→クリエイターではなく、広告主→広告媒体という構図ができており、クリエイターへの対価が合わなくなっているという。
三つ目の制約として、ゴードン=レヴィット氏は「ソーシャル」を挙げた。
「FacebookやTwitterなどのソーシャル・ネットワークは、人と人のつながりを深め、それ自体は非常に美しいシステムと言えます。しかし、SNSの文化は、間違いなく創造性を制限しています。もちろん、このプラットフォームは創造性のために作られたわけではないので当然です。Instagramを例にすると、多くの人は次々と写真をスクロールして、長い時間ひとつの写真にとどまることはありません。多くの人とつながることは素晴らしいことですが、『つながる』だけで終わってしまい、そこからは何も生み出されません」
ゴードン=レヴィット氏は、これら「クラウドソーシング」「フリーカルチャー」「ソーシャル」などは間違いなく有益なものだと繰り返すが「これらには、創造性を制限しているという側面があることを忘れてはいけない」と強調した。そして彼は、現代のネットにおけるこれら三つの課題を、どのように克服すべきかについてまとめていった。