米では透明性が担保されないと広告取引ができない?
有園:この連載、だいたいが最先端の話題なんですが、今回は特に私も振り落とされそうで……。馬渕さんに教えを請いたいんです。広告の透明性と、ブロックチェーンの活用について。
馬渕:これからの2、3年は、これまでと比較にならないくらいさらに速く業界が変化しますからね、今ついてこないとあっという間に差がついてしまう。若い人はもちろんがんばって勉強しないといけないし、僕くらいの世代が一番先頭に立って時代を変えないといけない。
有園:おっしゃるとおりです。さて、2017年も下半期に入ったところですが、早くも「透明性」が今年を象徴するキーワードのひとつになりそうです。きっかけは今年1月、本国P&Gのブランド最高責任者が世界に向けて「不正な広告を一掃する」と宣言したことです。
アメリカのインタラクティブ広告業界団体、IAB(The Interactive Advertising Bureau)の毎年のリーダー定例会で、今後は第三者の検証機関と組み、透明性が保証できる取引しか行わないと断言しました。
馬渕:P&Gの宣言の影響範囲は非常に大きいです。その後の動きは本当に早く、既にアメリカではIAB主導で取引の透明性を担保する仕組みを作り始めています。いくつかの観点で証明書代わりのデジタルタグを発行して、それらがそろわない会社とは取引しない、という。P&Gはじめ大手広告主企業、エージェンシー、そしてメディアが参画していて、今後はもっとオープンなプラットフォームになっていく流れです。
広告取引にブロックチェーン技術を活用する実証実験
有園:一方、日本で透明性をどう担保するかに取り組んだのが、先日DACが日本IBMを技術パートナーとして行った「デジタル広告効果透明化実証実験」ですね(参考記事)。
こちらにはブロックチェーンの技術が使われていて、馬渕さんは昨年発売の書籍『ブロックチェーンの衝撃』(日経BP社)を監修されるなど知見をお持ちなので、アドバイザーとして参加されたと。
馬渕:そうですね。実験には「IBM Bluemix」というクラウド基盤上にブロックチェーンを実装しており、IBMは広告主としても参加しました。加えて広告主にニューバランス ジャパン、媒体社としてメディアジーンの協力を得ています。今、第一弾の実験が終わり、レポートを準備中です。
有園:前提として、ブロックチェーンとは何なのかを教えていただけますか? ビットコイン、フィンテックといった金融系のワードと一緒に語られることが多いと思うので、金融業界の技術だと捉えている人も多いと思うのですが。
馬渕:ブロックチェーンはビットコインのテクノロジー・プラットフォームと考えて頂いて間違いありません。このテクノロジーの基礎は「サトシ・ナカモト」という(謎の)人物による論文の中で発表されたのが始まりになります。
彼の謎については気になる人は調べてもらうとして(笑)、ブロックチェーンは日本語だと「分散型台帳」と表記されます。簡単にいうと、ブロックチェーン上に全ての履歴データを改ざんなどの不正を防ぎながら、分散して記録できる技術なんです。