Twitterのライブ配信とプレロール広告で、圧倒的な動画広告再生回数へ
これまでの記事でも様々なTwitterの活用をご紹介してきた。今回はMarkeZineでもあまり紹介したことがない、Twitterのライブを活用した取り組みを紹介したい。
アシックスジャパン(以下、アシックス)はTwitter上で配信されるスポーツのライブ配信への動画広告出稿と、動画コンテンツの前に広告を入れられるプレロール形式の動画広告の出稿とを組み合わせた施策に取り組んだ。
具体的には、2017年の2~3月にかけて、プロ野球の開幕やWBCなど野球関連のイベントが盛りあがったタイミングに合わせTwitterのプレロール形式の動画広告を活用。動画の本編の前にアシックスのプロモーション動画を流して盛り上がりを創出するとともに、アシックスの存在感を示した。
さらにTwitter上で行われた試合のライブ配信では、攻守交代のインターバルでアシックスのプロモーション動画を差し込んだ。
結果、ライブ配信時の動画広告の再生回数は想定を大きく上回り、ライブ配信をみた利用者から、ブランドに対するポジティブなツイートがされるなどの効果も見られた。
「単純に動画共有サービスにアップするだけでは得られないような、圧倒的な再生数となりました」
今回の取り組みを担当した、アシックスの戸田氏は語る。
初めての野球用品として選んでもらうために
アシックスは2016年3月にTwitterオフィシャルアカウントを開設(@ASICSBaseballJP)。多くの野球ファンに向けて情報を送り続けている。
なぜアシックスは今回の取り組みを実施したのだろうか。前提として、同社は中高生へのブランディングの強化に課題を抱いていた。
「当社の事業のなかでも野球はとても重要です。野球は早い方だと小学3年生頃から、多くは中学生から始める人が多いです。実は、使用する野球用品のブランドをそこからコロコロ変える方は少ないのです。
そのため中高生、つまり、自分で野球用品を選ぶ年頃の皆さんにアシックスを知ってもらい親しく感じてもらうことが重要です。すぐに直接的な売り上げにつなげるというよりは、『野球用品を揃えよう』という段階になってアシックスを想起してもらえるようにしたい」(戸田氏)
そうなると、多くの中高生も使用していて、かつ、情報拡散力が抜群に高いTwitterを使わない手はない。実際にこれまで、Twitter上でプロ野球選手のアドバイスや、使っている野球用品の情報などを流すと、フォロワーは敏感に反応しており、手応えを感じていたという。
リーチ難しい中高生の野球市場、Twitterが突破口に
今回の取り組みは、アシックスにとってもチャレンジではあったが、社内からも大きな期待が寄せられたという。
「野球人気が盛り上がるタイミングでアプローチができるだけではなく、ターゲットをセグメントできることもあり、社内では期待してもらえました」(戸田氏)
Twitterのライブ配信では、ライブ動画を見ながら関連するツイートもチェックすることができる。テレビを見ながらツイートをする、という人も多いが、それをワンスクリーンにした形だ。
「今回、ライブ中に流れた動画広告の完全視聴率は8~9割。パフォーマンスはとても良かったです。また、プレロール形式の動画広告の配信は、部活などで野球をやっている方や野球に興味のある方などのセグメントに分けてターゲティングしました。その全ての方々から、良い反応が得られました」(石川氏)
「本当に多くの方に動画を視聴していただけました。今回は見てもらうことをゴールにしていたので、アカウントへの誘導は積極的には行っていませんでした。これだけの効果があったので、フォロワー獲得の施策をかけ合わせても良さそうだと感じます」(戸田氏)
ターゲット層へ、競合と差別化できる自社の強みをアピール
動画広告において、アシックスが訴求しているのが同社の強みであるデータ活用のアピールだ。
グラブなどの野球用品を訴求する場合、熟練された職人がこだわりの素材で作り上げ、選手が使用するという見せ方が多い。もちろん、それらも重要な要素である一方、同社はそこに科学的な根拠があることもあわせて伝えようと試みている。
「神戸にアシックススポーツ工学研究所があります。そこで出した科学的なデータをもとに商品開発していること、その技術力を伝えることで、競合との差別化をはかっています」(戸田氏)
企業の押しつけではない話題の形成が重要
石川氏は今回の取り組みについて、次のように振り返る。
「今、Twitterは幅広い層に利用されています。特に若年層ではスマホ利用者が8~9割。そのなかでTwitterを使っている人は8~9割いるというデータがあります。今回の取り組みは、ブランドのターゲットとなるスマホ利用者層への訴求が噛み合い、大きなリーチが生まれたと分析しています。
つまり、ライブ配信されたコンテンツと、アシックスさんのコンテンツ親和性が非常に高かった。野球の攻守交代のインターバルの間に、アシックスのCMが流れる。視聴者は試合の雰囲気をライブ配信とツイートで楽しむ状態そのままで動画広告に触れるため、違和感なくより好意的な意識で動画広告を受け入れられたのではないかと思います」(石川氏)
ライブ中継前からTwitter上で徐々に盛り上がりをつくったことも、相乗効果を生み出したという。
「Twitter利用者の会話を増やす施策にすることが重要です。一方的な企業のメッセージではなくて、利用者に当該の話題やトピックについてワイワイ語ってもらうというのが、盛り上がりをつくる上でのポイントとなります」(石川氏)
今回であれば1月下旬のタイミングで、人気のある現役プロ野球選手のプロ入り前のプレーの様子を映したティザー的なムービーを1~2週間配信。さらに会話量を持続させるため、3月に本ムービーを配信、という流れをつくった。
店舗とデジタルをつなぐ取り組み進める
アシックスでは今後、ユーザーの声をより引き出す施策や、店舗と連動した取り組みを進めたい考えだ。
たとえば、ベースボールステーションというデジタルサイネージ。店頭にモニターとタブレットを設置して、来店者自身が情報を得られるコンテンツだ。
「店舗で野球用品を買おうとしても、ずらっと並んでいるなかでどれを買えばいいかわからない方も多いと思います。そんな時に、ベースボールステーションで商品の機能や特性が詳しく分かるムービーをご覧になったり、グラブシミュレーションをしていただければうれしいです。」(戸田氏)
中高生が野球用品を使用するとはいえ、実際に店舗で購入するのは野球に詳しくない母親や父親であるケースが圧倒的だ。決済者も納得できる情報を店舗で提供し、デジタルで中高生に対してアピールを続けるという。
「これからも、Twitterさんと組んで情報発信していきたいですね」と戸田氏は意欲的だ。