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マーケティングを経営ごとに 識者のInsight

自己投資産業に着目 あらゆる領域で結果にコミット─ RIZAPグループ瀬戸社長インタビュー

トレーナーが最大の営業マン

―― それで、テレビCMでも「結果にコミットする。」というコピーを鮮烈に打ち出されたんですね。

 そうです。結果が出なければ全額返金というのも、業界的には驚かれましたが、私としては当然のことでした。

 もちろん、トレーナーは責任重大なので、最初は困惑の声もありました。でも、我々がプロとして何を果たすことが結果と言えるのかと問うと、彼らも「お客様の理想の姿を叶えること」と答えます。それでトレーナーも覚悟を決めて、2ヵ月という期間を本気でお客様と向き合うようになりました。足が遠のいてしまったら電話もしますし。そうして結果が出ると、お客様は「頑張って変われた」と自分に自信を持てますし、トレーナーも達成感を分かち合うことができるんです。

 2ヵ月で結果を出す、最後まで伴走するというのは、トレーナーにとっても新しい仕組みだったようです。一度体験すると、次にまた「続けられるか自信がない」というお客様が来たときに、トレーナーが「自分を輝かせる手段として、2ヵ月でやりましょう。絶対ここで良かったと言わせますから」と言えるんです。覚悟がありますから、それは上滑りの言葉なんかじゃない、とても強い言葉です。

 ただ、それは検討中の方とお会いしたときの話で、CMでまずライザップの存在を知ってもらう段階で打ち出すべきは、やはりお客様が一番求めている「結果」だと考えました。

自社が提供する価値をはっきりと示したCM

―― 改めて、あのCMはインパクトが大きかったです。反響は想定されていたのでしょうか?

 想定していなければいけないと思いますね。マーケティングとは、お客様との会話です。各段階で、何を求められているのかを常に考えないといけない。

 私が豆乳クッキーを扱っていたとき、豆腐屋を買収しないか、豆腐を作る工場を買わないかと、いろいろな声かけがありました。でも、いずれもモノや手段しか見ていません。我々が見ているのはお客様の目的です。お客様はクッキーが欲しいのではなく、きれいになりたいのです。だから、美顔器の会社をM&Aしました。

 ライザップのお客様にとっても、トレーニングはあくまで手段です。そういう考えの下、あえて中身やプロセスは一切出さず、お客様が欲しい結果だけを打ち出しました。それを伝えられなければ、CMを見る人も我々のサービスに価値を見出せませんから。

―― 提供する価値をはっきり示すということですね。では今後の取り組みというところで、元ファーストリテイリングCIOの方が参画されたり、セールスフォースと協業してCRMプラットフォームを構築したりと、IT 基盤づくりに注力される姿勢がありましたが、背景にある考えをうかがえますか?

 前提として、お客様を正しく知らないことには正しい提案もできないと思っています。また、近年の潮流として、アナログとデジタルの融合は間違いなくあります。そうすると、ライザップでお客様の体のデータを把握し分析するのはもちろん、グループ全体でも購買履歴から趣味嗜好まで一元管理して初めて、正しいアプローチが可能になります。

 どの手段の効果が高いのか、トレーナーでも結果を出せる人と出せない人がどう違うかといったことも、もう5年ほど分析を続けているので、法則性も見えてきました。すると再現性を高められますし、さらに有効な手段があればどんどん変えていけます。

生きたデータを活用し時代の最先端へ

―― 現状のメソッドも柔軟に変えていくと。

 ええ。パーソナルトレーニングも低糖質も、今はそれが非常に有効だから採用しているだけで、我々はそれを推進する団体ではありません。8万人の生きたデータから、目的達成のためにより良い手法が見つかれば、いくらでもアップデートする。そうして初めて、時代の最先端になれると思います。

 データをベースにした展開は、大学や自治体との提携でも活きています。たとえば自治体とは、高齢者の健康を促進して、医療費の負担を減らすことに取り組んでいます。日常の中で取り入れられる、健康増進に有効なアクションを取り入れたA群の人たちと、そうでないB群の人たちを比べて、翌年の保険料が減った分だけ我々が対価をいただく。いわば医療費の軽減を目指しているんです。また、三日坊主を防ぐために小グループを作って、その中のリーダーを育てる取り組みなどもしています。そうすれば1対1ではなく1対多数で展開できます。

 糖質についても、ライザップではトレーニング中、毎日三食の写真を撮ってもらって管理しているのですが、こんなビッグデータを有しているところはそうはないでしょう。提携の事例では、他にもファミリーマートやピザハットなど企業との共同開発や、国立大学・病院との共同研究も展開中です。

―― すると、今後は外部とともに発展する事業も多くなりそうですね。2020年の連結売上目標が3,000億円とのことですが、勝算は?

 これでも少ないくらいだと思っています。ライザップではシニア向けや法人向けなど顧客接点を増やしながら、自己投資を軸に新たな市場を開拓し、同時に先ほどの企業や団体との連携も積極的に進めていきます。もちろんグループのシナジーも発揮していきますが、まずはグループ各社個々でしっかり自立している状態を確立してから、グループ内の相乗効果を上げていく考えです。「結果にコミットする」ことを、お客様が期待するあらゆる領域で実現していきます。

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この記事の著者

押久保 剛(編集部)(オシクボ タケシ)

メディア編集部門 執行役員 / 統括編集長

立教大学社会学部社会学科を卒業後、2002年に翔泳社へ入社。広告営業、書籍編集・制作を経て、2006年スタートの『MarkeZine(マーケジン)』立ち上げに参画。2011年4月にMarkeZineの3代目編集長、2019年4月よりメディア部門 メディア編集部...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/02/26 17:58 https://markezine.jp/article/detail/27037

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