人気はタイ、難しいのはフィリピン?
日本の事業者の展開動向を観察していると、まずはシンガポールに東南アジア事業の中心拠点を設立。その後他の5か国に展開を進めるケースが多い。その中でも、日本のネット広告関連の事業者が最も浸透していると感じられるのは、タイである。
親日国である同国でのジャパンブランドはとても強く、自動車をはじめとする製造業はもとよりLINEのような日本発のインターネットサービスも普及している。比較的日本の企業が参入しやすい素地ができているようにも、見受けられる。
市場の成熟度やITインフラなど諸要因があり一概には言えないが、フィリピンのような英語圏の市場では、言語障壁がない欧米企業がいち早く参入しており競争も激しい。結果、日本の事業者にとってはやや展開しづらそうな印象を受ける。
東南アジアからは少し外れるが、英語が話されているインド市場も同様の傾向がある。実際に「海外展開先国を検討する上で、英語圏は候補地から外す」(業界関係者)という判断をする事業者もいる。このことは、先述の日本企業全体の数値傾向と同じである。
業態別では、広告代理店は日本企業の海外進出を支援するアウトバウンドと、その逆のインバウンド需要を取り込むための現地展開という色が濃い。一方、アドテクノロジー事業者など、特定のプロダクトを持つ場合には、比較的現地の市場でビジネスを完結させているケースもあるようだ。
以下は、主な日本のネット広告事業者の進出時期をまとめた表である。ここに記載しているのはあくまで各社のプレスリリースをもとにしている。その後撤退をした、あるいは拠点はあるものの営業休止状態にあるというようなケースも耳にしている。また表に現れていない動向もあろう。あくまで全体の流れを俯瞰する上で参考にしていただきたい。

●は子会社(現地法人、または買収により取得した子会社)、
資本提携会社または、合弁会社。■は開発・運用拠点
デジタルインファクト調べ
東南アジア地域への参入時には、現地のネット広告事業者との合弁会社を設立するケースが多い。国により状況は異なるが、外国法人が現地法人を設立する場合の資本制限をしているケースや、外資そのものを禁止しているケースもある。したがって、現地法人の設立においては日本の事業者は現地のパートナー企業を見つける必要がある。
続いて各企業の参入の経緯やその後の展開は様々であるが、幾つかのケースを紹介する。