経営企画セグメントのさらなるターゲティング
では「経営企画」のセグメントを例に、さらなるターゲティング、すなわちABM戦略策定のフローを説明します。
「経営企画」をさらに分析する際に、「経営企画部」という組織があいまいで、企業ごとに役割が異なり、従って、ターゲット像が不明確になってしまうという課題がありました。そこで、弊社が提供するソーシャル経済ニュース「NewsPicks(ニューズピックス)」を使って、経営企画部に関するアンケートを実施しました(既存の「経営企画」顧客へのアンケートも同時に実施)。
その結果、経営企画担当者のセルフイメージとして「調整役、事務局、情報収集屋」といった「守り」のタイプと「企業参謀・戦略家、未来を考える部署、改革推進者」といった「攻め」のタイプに分かれることがわかりました。
この2つのタイプから、ターゲットを「攻めの経営企画」に決定。サブセグメントとして、①M&Aやグローバル展開に積極的な企業、②新規事業開発やベンチャー投資に積極的な企業の2つをターゲティングしました。
①については、大型、クロスボーダーのM&Aを過去3年で実施している企業、海外売上高比率が高い企業を具体的に約800社をリストアップ。②については、グループ内にコーポレートベンチャーキャピタルを持つ企業、ベンチャー企業と事業提携している企業、有価証券報告書の「対処すべき課題」に新規事業開発について記載がある上場企業を具体的に約600社リストアップしました。
この企業のリストアップを人力で行うと、上場企業に限定してもおそらく数週間はかかる作業です。ここでSPEEDAを使えば、1時間ほどで、未上場企業も含めた具体的な企業リストを作成することができます。
ターゲット企業へのマーケティング
ターゲティング後のマーケティング施策に関しては、次のようなことを行いました。
①過去リード、社内コンタクトの活用
具体的なターゲット企業名が判明したことで、過去リードや社内コンタクトで過去の接点がないかを徹底的に精査できます。接点を確認できた企業に関しては、そのターゲティングシナリオ(M&A、新規事業開発等)に応じたコンタクトシナリオを作ります。そこは必ず同業他社の、同じシナリオでの導入事例を入れます。そうすることで、パイプライン化する確率が圧倒的に高まります。そのコンタクトシナリオを用いて、電話、メール、DM等でコンタクトします。このコンタクトシナリオはアウトバウンドの電話、メール、DM等でも同様に活用できます。
② インバウンドリード対応の生産性向上
インバウンド(資料請求や無料トライアル等のWeb導線からの問い合わせ)リードについても、ターゲット企業からの問い合わせであれば、予め用意していたシナリオをもとにすぐに電話をすると、高確率でアポがとれます。逆に、ターゲット企業に入っていない企業からの問い合わせは対応を劣後させ、メリハリを付けます。
③イベントマーケティングの生産性向上
特定したシナリオ(M&A、新規事業開発等)をセミナーのテーマに設定します。そこではシナリオごとにターゲットした企業のターゲット部署の方だけを集客します。ターゲットしていない方を数百人集めるより、ターゲットした方を少人数集めて、「濃い」、「ニッチなテーマの」セミナーを実施する方が、実際に契約につながる率は高まります。
この際、半数程度は既存顧客も招待し、招待した潜在顧客に「自分と似た役割を負う方の多くが既にこのサービスを活用している」という感覚を持ってもらうことを目指します。実際、20人規模のセミナーで10社程度を潜在顧客として招待し、5社の契約につながったこともあります。
④Webマーケティングの生産性向上
日本では、Webマーケティングにおける企業ターゲティングの手法が限定的なので、ターゲット企業に限定して広告配信するというよりは、特定したシナリオに応じたクリエイティブを使った広告や、先述の「ニッチなテーマの」セミナーのWeb集客でターゲット企業のリード獲得を狙うことになります。
まだ弊社では大きな成果は出せていませんが、企業ターゲティングが可能なDSPはいくつかあるので、それを試してみるのも良いでしょう。