全体のKPI 設定とストローファネル
今まで見てきたように、各マーケティング施策は、「ターゲット企業」のみに明確にフォーカスします。たとえば、Web/イベントマーケティングのKPIは単純なリード数ではなく、ターゲット企業からのリードの数を用いますし、インサイドセールスのKPIはターゲット企業のアポ獲得数を用います。

図表5では、通常のマーケティングファネルの中央にストローのようなものが入っています。これがターゲット企業のリード獲得、そのアポ転換、そのパイプライン転換、その契約転換を表しています。
通常、ABMはマーケティングファネルの三角形をひっくり返した「フリップ・ザ・ファネル」で説明されることが多いですが、私は、「ストローを引いて、マーケティング、インサイドセールス、営業をターゲット企業の元にアラインさせる」という感覚を持っています。
ストローを引き、ストローにフォーカスしたKPIを定めることで、マーケティング、インサイドセールス、営業の役割がフォーカスされ、圧倒的に生産性の高いマーケティング、営業活動が展開できます。
最新テクノロジーでABMを実践する
ABMを展開するターゲティングリスト作成のためには、既存顧客のユーザーニーズとLTVに基づくセグメンテーションと、そのセグメントから具体的なマーケティングシナリオを作成し、そこに紐付く企業名をターゲティングする作業が必要です。
そのためには、社内の膨大な営業、マーケティング関連の情報と、社外の膨大な企業情報の両方を集約し、分析することが必要です。これは、人力では恐ろしい手間を要する作業です。その問題を解決し、ABM実践をサポートするツールとしてSPEEDAから生まれたのが、弊社の新しいプロダクト「FORCAS」です。
①社内の営業、マーケティングに関連する情報を集約し、②それを社外の膨大な企業情報と紐付け、既存顧客の分析モデルを自動生成し、③潜在顧客のターゲティングリストを既存顧客への類似度を表すスコア付きでリストアップします。さらに、既存顧客の分析モデルにより、潜在顧客1社1社に類似度が高い既存顧客を示したり、該当する営業シナリオを示すといった④データ分析を用いた営業インサイト、を提案します。
これら4つのFORCASの機能は、ABMの実践に不可欠なステップです。分析モデルの構築について機械学習の手法を用いており、「使えば使うほど」スコアリングの精度が高くなっていくという点も特徴の一つです。
ABMは、社会全体の生産性を上げることができるコンセプトです。営業やマーケティングのムダをなくし、セールス、マーケターの生産性を高め、創造性を解放することにつながります。同時に、ABMが徹底される世界では、ユーザー側も自社に必要なプロダクトを早く手に入れられるようになり、ムダなマーケティングに付き合う機会がなくなるのです。
今まではデータ集約、データ分析の観点から困難だったABMの実践が、テクノロジーの進化により可能になってきています。ABMは一過性のバズワードではなく、テクノロジーを用いてBtoBマーケティングの本質を体現するコンセプトです。
ぜひ、この記事を読んでいただいた読者のみなさまにも、まずは既存の顧客のセグメンテーションをLTVベースで考えるところから、ABMの第一歩を踏み出して欲しいです。