熱い投稿記事にスポットを当てる
――双方にとってメリットのある仕組みなのですね。『火花』では、具体的にどのようなお題を出されたのですか?
一つは「ドラマ火花の感想」です。これだけでは投稿が観た人に限られてしまうので、内容にちなんでもう一つ「夢と挫折」というお題でも募集しました。各お題から一定の入賞者を決定し、副賞も設けました。
――実際の反響と、ネイティブ広告として採用する記事をどう選んだか、うかがえますか?
まず、数としては250本ほど集まりました。はてなの仕組みだと、はてなブックマークが付くとそこからどんどん波及してPVが増えていきますが、単体で100ほどブックマークが付いた記事もあり、全体で400ほどまでブックマーク数が伸びました。
企画提供側としては、非常に熱い感想もあったので、手応えがありました。元々はてなブロガーの記事を調査しても、ニッチな作品を深く掘り下げたレビューが書かれることは珍しくなかったので、そういう記事に今回のような仕組みでスポットを当てて多くの人に読んでいただけるのは、ユーザーへの還元という観点からもよかったですね。
ネイティブ広告枠に掲載する記事をどう選んだか、ですが、すべてに目を通してから質の高い記事を厳選しています。自動的に排除される規約違反の記事を除き、通常のスポンサードのお題キャンペーンも基本的にすべて編集と営業で読んでいますね。
この仕組みは、クライアントが望む通りの記事が掲載されるとは限りません。『火花』では、少し人と違う視点や企業側で気づいていなかった視点での感想、夢と挫折のテーマなら作品とのマッチングや、共感できる体験談など印象的な投稿を選びました。
目的はNetflixのファンを広げるため
――Netflixとしては、今回どういった目的で出稿したのでしょうか。
一番は、同サービスの作品を自発的に支援してくれるファンを作ることでした。我々は、はてなブックマークの仕組みによるコミュニティ形成には元々強みがあります。ある人の関心がブックマークという形で可視化され、それに共感して人が集まってきたりするので、緩やかなコミュニティが各所で成り立っているような状況があります。
『火花』の施策は、作品単体のプロモーションの意図に加えて、質の高い投稿記事がネイティブ広告枠を経由してどう拡散されていくかを検証するためにも実施しました。
結果、熱量をもって書かれた「ドラマ火花の感想」など、質の高い投稿記事がしっかりと拡散されたので、現在はNetflixの他の作品でも同様の施策を実施しています。質の高い感想記事の書き手を支援し、他の人が心からお薦めする作品の感想があふれる仕組みを作ることで、徐々にNetflixへの親近感を醸成している状況です。
――新規ファンが増えたかどうかは、どういったKPIで測っているのですか?
定量化しづらいところですが、はてなでのNetflixの企画の施策で見ているのは、キャンペーンで書かれた記事数と、それら記事の総PVです。書かれた感想記事は中長期読まれており、施策を繰り返して累計を徐々に増やすことがファンの増加につながっていると捉えています。今後はこれをもっと強い結びつきでコミュニティ化していくため、たとえばリアルイベントなどを検討しています。

他のコンテンツマーケティング支援施策でのKPIは、クライアントによって様々ですね。ブランドリフト調査などの必要性も感じているので、検討中です。
ユーザー自体を資産にマーケティングを支援
――UGCを利用する際、外せないのはステマの問題だと思います。スポンサード企画に乗った記事だと判別できるようにすべきだ、という意見も根強いですが、そのあたりはどうお考えですか?
ネイティブ広告の定義の中で、「枠」の問題と「コンテンツ」の問題、2つが混在して語られているからややこしくなっていると思います。我々で言うと、まず枠としてのネイティブ広告には、広告枠だとわかるように表記をつけています。またユーザーが投稿したコンテンツ自体にも、スポンサード企画であることがわかるようにしています。特にユーザーコンテンツ活用型ネイティブ広告は、ピックアップしたものをそのまま企業の広告として使うため、それがイヤだという人にはあらかじめ避けてもらうよう、広告として掲載する可能性があると明記しています。
――ユーザーコンテンツ活用型ネイティブ広告の展望などをお聞かせください。
今、Netflixの他の作品でも話が進んでおり、近いうちに公開予定です。この広告も前述のスポンサードのお題キャンペーンも、良くも悪くも企業のコントロールは効きません。意図しない内容の記事が投稿されることもあります。逆に言うと、書かれると困る事柄があるとか、ネガティブな記事は出て欲しくないというクライアントには向かないので、その点は事前に営業がよくすり合わせるようにしています。
ただ、その点で合意があれば、企業の直接的・一方的な発信に説得力を感じない人が増えているとも言われますが、第三者として一般ユーザーの声を活用するのは、とても有益だと思っています。特にニッチな商材や、企業が発信するだけでは伝わりづらい内容の場合、ユーザー視点が効果的に働くのではないでしょうか。質の高い記事を書けるはてなユーザーあってこそですが、当社としてはそれこそが当社の強みだと思っているので、ユーザーの力を借りながら企業のコンテンツマーケティング支援を推進する広告商品として今後さらに注力していきます。