連帯感が強い“トライブ”的なコミュニティができている

有園:シェア、オープンといったキーワードに代わって、“コミュニティ”が加わった。
鈴木:そうですね。オープンでコネクテッドな状態は今後も重要ですが、その上で、Facebook上のコミュニティをより有意義なものにしたいという意図を込めています。
実際、表現の手法はテキストベースから写真、動画、その先にはARやVRとどんどんリッチになり、それにともなってより有意義なコミュニケーションを取りやすくなっていますよね。
有園:“コミュニティ”も、たとえば地域コミュニティなど、特に個々人の意志にもとづかないグループを指すこともありますが、Facebookのコミュニティには極めて意識的なつながりを感じます。たとえばディズニーのコミュニティに、その話題を投げかければパッと広まるような。
その点で、部族や仲間という意味合いの“トライブ(tribe)”という言葉が近いなと思っているんです。
共通の意識や連帯感がすごく強い。私が担当している範囲でも、カスタムオーディエンスの効果などがかなり高いんですが、95%以上の精度はその下支えにもなっているし、コミュニティという言葉を超えた、トライブ的なつながりの源泉にもなっているんだなと思っています。
鈴木:なるほど。確かに、人ベースのプラットフォームであることを資産に、充実したコミュニティ形成をサポートしたいという思いがありますね。検索連動型広告が検索キーワードを基に親和性の高い広告を出してきたように、Facebookはその人の興味関心を基に、同じことをしようとしています。
フィード体験がすばらしいものであるように

有園:そのためにも、ユーザーの情報をかなり細かい粒度で取得されているわけですね。
鈴木:そうですね。情報を緻密に集めている……というと誤解を生みそうですが、我々の考えの根本にあるのはあくまで「フィードの体験がその人にとってすばらしいものであるように」ということなので、その人にそぐわない広告が出るのは避けたい。そのために、利用者の情報を基に精度高いマッチングを目指していますし、より受け入れられる広告を優先するようなアルゴリズムにも注力しています。
有園:その点と、冒頭で話した動画のことを加味して、何か最近の事例を教えてもらえますか?
鈴木:属性を加味したマッチングというより、これはアルゴリズムの話になりますが、たとえば今年の事例だとトヨタ自動車のROOMY/TANKの広告で、テレビCMと同じ素材を使用した動画とモバイルに最適化した素材を使用した動画の2種類をFacebookに出稿しました。展開時期は2017年8月となります。モバイル用には、スマホで見ることを前提に縦横比を正方形にし、音声なしでもわかる内容の動画にするなどの工夫をしています。
すると広告認知は3.5倍、車種認知は3.7倍、再生率は2倍、後者が高いという結果が得られました。両方ほぼ同じ予算にしたものの、これだけの差がついたのは、キャンペーン期間中にアルゴリズムが「よりユーザーフレンドリーな動画を出そう」としたところ、自動的に利用者からの反応の良い動画が配信されやすくなったからです。結果的に、モバイル用に最適化した広告動画のほうが1.5倍のターゲット層リーチを達成しました。
