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トリプルメディアを一歩進めた、“PESOオーダー”という新発想

トリプルメディアと呼ぶのは、日本だけ。 POEMとPESOと“PESOオーダー”。


そして、“PESOオーダー”という新提案

 さて、そのようにしてPOEMは世に広まって行くわけですが、POEM提唱のちょうど1年後、2010年5月に、PESO(ペソ)という発展形が提唱されます。当時、フライシュマン・ヒラードという世界的PRエージェンシーのリサーチャーだったドン・バーソロミューが、WebメディアのSocial Media Explorerのコラム「The Digitization of Research And Measurement In Public Relations」の中で提唱しました。

 POEMでEarnedに分類される「マスメディア露出」と「消費者による口コミ・拡散」は、2つに分けて考えるべきではないか、というのがPESOモデルの考え方です。

 筆者はあるセミナーでPESOについて知ったのですが、確かに「マスメディア露出」と「消費者による口コミ・拡散」は、その性格が異なると感じ、有効なモデルだと思いました。この二つは、そもそも担い手が異なります。前者は記者や番組制作者や編集者などのプロであり、後者は消費者・生活者です。

 PESOでは、「マスメディア露出」をEarnedとし、「消費者による口コミ・拡散」はShareされたメディアなので、Shared Mediaと呼ぶことを主張します。

 このPESOはPOEMほどには知られるようにならなかったものの、一部の有力な会社では、ワールドワイドに取り入れられるようになります。コカ・コーラ社やオムロン社です。コカ・コーラ社ではPESOをさらに独自に発展させ、「アセットの使用率はO→E→S→Pの順に高めること」という法則をもっていると言います。たとえば、Yahoo News2017年8月28日付けの記事で、渡邊和史・マーケティング本部マーケティングアセッツ部長が、OESPについて語っています(参考記事はこちら)

 このOESPに触発されて筆者が新たに着想したのが、「PESOオーダー」です。オーダー(Order)とは順番のこと。コカ・コーラ社で使われているOESPは“アセット(金・人・時間)の使用率”に関わるものですが、筆者が着想した「PESOオーダー」は、「PESOを活用する順番」が重要であり、「PESO活用の順番をプランニングする」ことを提唱するものです。

 POEMもオリジナルのPESOも、その順番については言及していません。「組み合わせが重要だ」とは言われますが、どのような順番で広告コミュニケーションを組み立てるかは重要視されていませんでした。

 しかし、実際に広告コミュニケーションをプランニングすることを考えると、PESOという分類と、その4タイプのメディアを「どの順番で」活用するのか、という思考=「PESOオーダー」は、新しい視座をもたらします

 私は大学教授/研究者であり、広告コミュニケーション・トレンドの紹介者/分析者としても活動しているわけですが、たとえば世界最高峰の国際広告祭であるカンヌライオンズの話題作をこの「PESOオーダー」で分析してみると、Ownedのコアコンテンツから始めるOSEP型や、Paidである新聞広告から始めるPEOS型など、今まで見えなかった幾つかのパターンが見えて来ます。それらの話題作をヒントにして日本で新たな広告コミュニケーションをプランニングする時も、「PESOオーダー」の型が見えていれば、ずっと効果的にプランニングできそうです。

 次回からは、近年のカンヌライオンズ受賞作や日本での話題作を題材に、「PESOオーダー」分析を試みて、“PESO活用の順番”の重要さについて、さらに深めて行きたいと思います。

(※この連載は、2017年11月19日の日本広報学会第23回研究発表全国大会で筆者が発表した内容に基づいています)

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この記事の著者

佐藤 達郎(サトウ タツロウ)

多摩美術大学教授(広告論/マーケティング論/メディア論)。2004年カンヌ国際広告祭フィルム部門日本代表審査員。浦和高校→一橋大学→ADK→(青学MBA)→博報堂DYMP→2011年4月 より現職。
受賞歴は、カンヌ国際広告祭、アドフェスト、東京インタラクティブアドアワード、ACC賞など。審査員としても、多数参加。個人事務所コミュニケーション・ラボにて、執筆・講演・研修・企画・コンサルなども。また、小田急エージェンシーの外部アドバイザー、古河電池の社外取...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2017/12/25 16:14 https://markezine.jp/article/detail/27606

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