チャットを通じて商談受注率は2.5倍に、その中での苦労は?
IDOMは、チャットマーケティングを開始して2年が経過した。今ではオンライン経由の商談受注率が2.5倍にアップするという重要なチャネルの一つになっている。また生産性も1.5倍となり、店頭接客の時間も短縮された。

一方iettyでも、従来の店舗型賃貸仲介と比べ受注率が約2倍となり、チャット専門オペレーター10名で、数千人の対応ができるまでになった。
だが現在もチャットの活用はカスタマ―サポート領域にとどまっていることがほとんど。2社のような新規獲得を目的とした活用事例は少ない。両者とも「手さぐりの中でチャットマーケティングをスタートした」と当時の苦労を明かした。
「チャットマーケティングで難しかったのは、オペレーション設計とPDCAの実行です。ただ質問に回答するのではなく、顧客が契約へ進むようにシナリオを作成し、オペレーションを組む必要があります。また、Botと手動のオペレーションを融合した接客体験を作り出すため、チャットシステムの改修を何度も行いました」(内田氏)
IDOMでも、チャット導入後から8ヶ月間は費用対効果が合わなかったという。チャットの運用に店頭営業のスペシャリストのノウハウとコンタクトセンターの成功事例を反映しても、なかなか成果が出なかったそうだ。しかし中澤氏は「チャットマーケティングは難しいですが、粘り強く進めていれば確実に成果が出ます」と話す。
顧客をステージごとに反応を計測
では2社は、どのような施策を行ってきたのだろうか。まずIDOMは、チャットマーケティングにおける最終的なコンバージョンを定めた。その上で、見込み客とのエンゲージメントを定量的に測る仕組みを作ることが一番重要だとした。
同社は、そのために、0から4までの5段階に分けた「ステージ」という定義を確立。行動データとアンケート、顧客の属性情報という3つのデータをもとにスコアリングし、顧客をセグメントしている。

さらにステージ3以上からは、発話情報をテキストマイニングにかけて分析しているのが特長だ。最終的なセグメントは、顧客のステージごとに最後の反応日からの経過日数をかけ合わせている。
シナリオ設計の軸となる7つの要素と4つのポイント
続いて行ったのは、シナリオ設計。ここで中澤氏は「顧客をステージ0からステージ1へ進ませるためのシナリオ」を例に出した。

Bot・チャット担当・自動提案メールと3つのチャネルがあり、最初にBotで挨拶とサービス説明、車両評価の要求までを行い、その後とチャット担当が提案を行う。提案に対する反応がなければ、自動的にBotに対応が切り替わる。また、この間に自動で提案メールも配信が開始される。
このように、各チャネルで発生するアクションの分岐に合わせたシナリオを設計し、PDCAを回しながらKPIの達成に最適な方法を精査していく。中澤氏は、シナリオ設計のPDCAを回す上で以下のことを意識しているという。
「シナリオ設計では、『どんな状態の人に』『何をしてもらうために』『何を』『いつ』『どこで』『どのように』『どう評価』という7つの要素を重視しています」(中澤氏)

さらに中澤氏は、シナリオ設計のポイントを4つ紹介した。
1点目は、シナリオのターゲットをサービスの代表的な顧客像にすること。2点目は、顧客の行動が最も多いパターンを採用することだ。まず主軸となるシナリオを作成し、慣れてきてから枝葉となるターゲットや行動パターンを作成したほうが、PDCAは回しやすい。
3点目は、質よりも数という視点で複数のシナリオを実行し、グロースハックを優先すること。4点目は、顧客の行動を観察するということだ。「オンライン上の動きを記録するツールを使うと、顧客の心理や状況を読み取りシナリオへ反映させていくことができます」と、中澤氏はアドバイスする。