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IMJが考える「ディレクター」とは何者か?IMJ大塚氏が語るその醍醐味と可能性

 年率2桁の事業売上高成長を実現し波に乗るデジタルエージェンシーのアイ・エム・ジェイがディレクターの採用活動を強化している。デジタルマーケティングの深化と拡大によって、ディレクターの職責も大きく様変わりしつつある。ビジネス環境の変化をチャンスに変えるために、ディレクターにはどのような能力とマインドセットが必要になるのか。IMJの執行役員を務める大塚健史氏に聞いた。

事業拡大に必要不可欠な「ディレクター」とは。

 ここ数年、デジタルマーケティング分野に関わる求人は常にホットな状態をキープしている。クライアントニーズが多様化・複雑化する中、Webの枠を超え、事業全体を捉えたマーケティング戦略の視点を持ち、プロジェクト全体をディレクション、デザインしていくことができるようなWebディレクターが必要になっている。

 それはもはや「Webディレクター」ではなく、「デジタルディレクター」、「マーケティングディレクター」のような言葉の方が適切なのかもしれない。

 旧来のPCに最適化されたWebサイトの構築からスマホ対応サイトに切り替える企業が増えるとともに、消費者の行動もPC・スマホを自在に渡り歩くものになり、総合的なデジタルマーケティング戦略を立案できる人材が求められているのだ。とりわけ、ディレクター職はどこの企業も不足している。

 ところが、「ディレクター」ほど、担当領域が広い職種はそうそうない。ある企業では、「制作の進行管理や品質管理全般に責任を持つ担当者」を意味するし、別の企業では「制作全般を見つつ、マーケティング施策のPDCAを回す人」を指すこともある。

 企業としてもっとも望ましいのは「マーケティング戦略策定、制作物の品質管理から実制作経験、データを軸としたPDCA運用」までできる人になるが、そんなマルチな人材を採用することは難しく、どこの企業も優秀なディレクターを確保することが最重要課題の1つとなっている。

株式会社アイ・エム・ジェイ執行役員 大塚健史氏
株式会社アイ・エム・ジェイ 執行役員 大塚健史氏

求められるのは「成果にコミットする」ディレクター

 こうした状況に直面しているのは、中小の代理店や制作会社だけではない。長年にわたってデジタルマーケティング支援を行ってきたデジタルエージェンシーのアイ・エム・ジェイ(以下、IMJ)も創業期以来の加速的な事業成長期を迎え、より複雑で大規模なクライアントからのオファーにこたえるため、ディレクターの採用を強化している。

 IMJ執行役員の大塚健史氏は、ディレクター人材のニーズが拡大している要因と、IMJが必要とするディレクター職の定義について、以下のように語る。

 「デジタルマーケティングが全盛となり、当社のようなクリエイティブに強いエージェンシーに求められるニーズが年々複雑化しています。端的にいうと、ピンポイントな制作や施策1本ではなく、その運用成果が求められるようになってきています。

 そのため、当社ではディレクターについて”クライアント企業の事業に対し、売上やブランド価値の増大といった企業価値向上を実現することに責任を持つ人”と考えています。

 企業価値向上に向け、具体的な施策を形にしていけるディレクターは本当に貴重です。今後クライアント企業からのニーズがますます複雑化していくことを考えると、そういう人材にジョインしてもらうことが重要な課題です」(大塚氏)

 長く企業活動を続ける上では、マーケティングがうまくいかない、市場プレゼンスが低下しているなど、何かしらの「不調」が生じることがある。人間が健康診断を受けて何か「不調」があれば病院で検査してもらうように、ディレクターもマーケティングという観点からクライアント企業の課題を探し出し、その改善に向けて施策を考えながら、効果検証を続けていく。IMJでは、そんな立場をディレクターと呼んでいるのだ。

ディレクターとプロデューサー職の違いとは

 クライアント企業の立場に立ち、その成果にコミットするという立場で考えると、ディレクターとプロデューサーは同じような役割だが、具体的にどこが違うのだろうか。 大塚氏は「成果を出す、企業価値を上げるというゴールは共通です」としながらも、ディレクターとプロデューサーの違いについて、「寄り添う先、視線を向ける先が異なる」と説明する。

 プロデューサーの立場は、クライアント企業に寄り添い、そのニーズを理解してディレクターチームと共有することだ。そのため、クライアント企業を第一とした視点をもつ必要がある。

 これに対しディレクターは、クライアント企業のニーズも深く理解しつつ、その視線の先には常に生活者を置いているという。マーケティング活動の中で企業価値やプレゼンスを高めるには「生活者がどのように反応するか」が決定的に重要になる。さらに、企業が自覚しているマーケティング課題と、生活者視点で見たときに生じるマーケティング課題とが、必ずしも一致するとは限らない。

 時に制作チームとプロデューサーが衝突するのはこのためだ。 「衝突の中からお互いに納得できるものを見出していくという高度なコミュニケーション力が求められます。1つのプロジェクトを完遂するまで絶えず議論を繰り返し、ゴールに向かっていく粘り強さも、ディレクターに必要なスキルです。最終的には、双方が協力して最適解を出していくというのが理想ですね」(大塚氏)

得意分野の異なるメンバーとチームを組ませ、スキルを拡張

 制作スキルがあり、マーケティング施策を立てられて、効果検証を重ねて成果を出していけるディレクターは、希少価値の高い人材だ。IMJでも、ディレクターの役割が多様化しクライアントからの期待も大きくなる中、事業の成長に必要不可欠な同職種に焦点をあてた採用活動を展開している。

 とはいえ、はじめから全てができる必要はないし、全ての分野で超高度なスキルを持っている必要はないと大塚氏は語る。それでは、IMJにおけるディレクター育成プログラムについてはどうなっているのだろうか。

「いろいろな経験を積んでディレクターとしての基礎スキルを底上げしつつ、自身の個性を活かしながら得意分野を伸ばしていけるような人材教育を行っています。もともと持っていた強みはさらに伸ばしてもらえますし、前職で培った特定の業界についての深い理解は大きな武器になります」(大塚氏)

 具体的には、得意分野の異なるメンバーとチームを組んで、実際のプロジェクトに臨む中でスキルを磨いていく。その過程で、相手の優れた点を吸収するとともに、自らの強みをシェアしていくことができる。マネージャーは、メンバー全員の成長のために、プロジェクトごとにチームメンバーをいかにアサインするか、工夫をこらすという。

 

 しかも、これは単なるOJTではない。IMJには、あるプロジェクトが発足すると、プロジェクトメンバーはもちろん、部門長や社内の品質保証を担当するチームなどがレビューを行い、適正な納期や作業工数見積もりになっているか、進行が順調か、といったさまざまな点についてディスカッションするプロセスがある。

 「クリエイティブの場合、まず手を動かしてモノを作ることを重視しがちですが、それだと後々に“どこまでが制作範囲で、どこからがクライアント企業の担当か”など、手戻りが発生する確率が高くなります。そこで、要件定義が終わって実制作に入る時に全体をレビューします。こうすることで、将来生じそうな課題を早めにクリアしておき、具体的な成果実現への到達スピードを早めるのです」(大塚氏)

 キャリア採用で参画したメンバーは、現場で学ぶ機会をすぐに得られ、なおかつチーム外からのフォローアップを確実に受けることができる。生きた学習による成長速度と安心感が両立したバランスの取れた仕組みだといえるのではないだろうか。

なぜIMJはキャリアアップにつながるのか

 こうしたプロジェクトの進め方を通じ、スキルを磨いたIMJのディレクターは、「言われたことをやるだけでなく、本当に成果につながる方法を親身に寄り添って考えてくれる」とクライアント企業からの評価も高い。クライアント自身もまだ気づいていない真の課題を見つけだし提案を繰り返す中で、時にはクライアントとの摩擦が生じそうになることもあるそうだ。

 実際、大塚氏は、ディレクターには常々「クライアントの言っていることがすべて正しいと思うな」と発破をかけているという。なおかつ、そうした「摩擦」があったクライアントとは、お互いをよく理解することができるため、5年10年と取引が続くロイヤルクライアントとなるケースが多いそうだ。クライアントとの本気のやり取りは、ディレクターとしてのプロジェクト遂行能力を大きく伸ばすことだろう。

 IMJでのディレクター経験がキャリアアップにつながる理由はこれだけではない。それは冒頭に述べたとおり、プロジェクトの「成果」にコミットするという立場でキャリアが積めることだ。

 たとえば中小のプロダクションでも、確かに営業や進行管理も含め、いろいろな役割をディレクターに求める傾向がある。裁量が大きいことで面白さややりがいもあるが、案件を回していくことにかかりきりになり、具体的に施策の成果を上げるために効果検証を繰り返して改善していくという時間がないことも多い。

 IMJの場合、クライアントのデジタルマーケティングにおけるパートナーとして、戦略立案から実制作、その後のPDCA運用まで関わる立場にある。「改善や成果につながる知見や専門性を高められる」というフィードバックをキャリア採用のディレクターから受けていると大塚氏は語る。

アクセンチュアとのシナジーで、より戦略的な経験も

 IMJは2016年7月にアクセンチュア インタラクティブのグループに加わった。これはIMJのビジネスやプロジェクトにどのような化学反応を及ぼしつつあるのだろうか。

 大塚氏はこの問いに対し、「アクセンチュアとのチームワークによって、同社が得意とする企業戦略や組織づくりなどの知見を活用し、我々が思い描くデジタルマーケティングを実現するために、クライアントの経営層レベルに参画していただいてプロジェクトを進めることも増えてきました」と答える。

 一部には、「アクセンチュアのコンサルティングプロジェクトから、ブレイクダウンする形で、個別のデジタルマーケティング案件が発生するのではないか」という誤解があるが、そういうケースはほとんどなく、お互いの得意分野を活用して、より成果に貢献するという立場でプロジェクトを進めるそうだ。

 たとえばあるプロジェクトの場合、別の企業がWeb制作・運用を行っていたが、複数の関連部署から寄せられるさまざまな要求を順次こなすだけで、戦略的な運用ができていなかったケースがあった。

 この案件については、社内のさまざまな要求に優先順位を付けて、戦略的に進める専門組織を、クライアント企業の中に持つことが必要だとIMJのメンバーは考えていた。そこで、IMJのアイデアをもとにクライアント企業における組織作りについての提案をアクセンチュアから行うことで、新たにIMJが運用担当を担うことになったという。

 こうした例は枚挙にいとまがない。デジタルマーケティングを戦略的に回していくには、「デジタル事業部」などの一部門だけでなく、クライアント企業の営業部門や商品開発部門など、さまざまな関連部門の協力をとりつける必要がある。

 デジタルマーケティングを知り抜いたエージェンシーと企業変革に強みをもつ戦略コンサルティングファームがタッグを組むことで、一般的なデジタルエージェンシーでは対応しきれなかった、組織改変まで含めた大きなプロジェクトを動かすことができるのだ。

「デジタルマーケティング」はもはやWeb上のコンタクトポイントの最適化にとどまらず、デジタルによる顧客体験の最大化を目指すものになりつつある。デジタルエージェンシーにも今後はより事業戦略や組織戦略など企業の経営課題にまで食い込んだ提案能力が求められるようになるだろう。つまり「Webディレクター」から“Web”を取った別の呼び方の職種へと進化していくだろう。

 事業会社は、「エージェンシー」「制作会社」「戦略コンサルティング」が渾然一体となった新しいソリューションを待望している。IMJはアクセンチュアと組むことで、その新たな市場を開拓しつつある。そこには、既存の枠には収まらない、野心を秘めたディレクターにとって格好の挑戦の場が用意されていることだろう。

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2018/02/27 10:00 https://markezine.jp/article/detail/27817