リゾームとはなんなのか?
では、「リゾーム(rhizome)」とは、なんなのか? その話をしなければならない。 リゾームは、「地下茎」「根茎」と訳す。Google画像検索などで画像を見たほうが理解しやすいが、簡単にいえば、「木の根っこ」だ。

「複雑ネットワーク理論」や「マルチ・エージェント・ネットワーク」なども、「リゾーム」の概念をモデル化したものだと私は解釈している。

脳もネット接続する
これからの時代、社会がこんな感じでつながりだす。つまり、「ヒト・モノ・コト・カネ」がつながるのだ。
「ヒト」がつながるとは、スマホアプリやSNSでつながるという話ではない。「ブレイン・マシン・インターフェイス(BMI)」の技術で、脳がネットにつながる未来が迫っている。
BMIについては、『脳と機械をつないでみたら――BMIから見えてきた』(櫻井 芳雄[著] 岩波書店)などで概要がわかる。「脳とネットが接続可能に、南アの大学が新システムを開発」(Forbes JAPAN)や「脳が世界を動かす 会話や移動念じるだけで」(日本経済新聞社)などの記事を読むと、その技術の進化には目を見張る。
SF映画「マトリックス」や「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」では、脳に電極を埋め込み、人間の念だけで機械を操っていた。その世界は、夢ではなさそうだ。
「モノ・コト」もどんどんつながっていく。これは既に、かなり実現した。ここに説明は要らないと思う。スマートフォンに始まり、スマート家電、スマートテレビ、スマートウォッチ、スマートグラス、スマートトイレ、スマートカー、スマートグリッド、そして、今流行りのスマートスピーカーなど枚挙にいとまがない。
そして、「カネ」がつながる。現金を持たずにクレジットカードを使う人は多いと思うが、スマホで決済する人もかなり増えた。さらに、ブロックチェーン技術によって、ネットワークを利用したデジタル決済は今後ますます普及しそうだ。これも多くの人が同感だと思う。
「リゾーム化社会」はイノベーションを招来する
「ヒト・モノ・コト・カネ」が相互にネットワークで接続する。それは、圧倒的な力で社会を変革し始めた。
「イノベーション」を初めて定義したオーストリアの経済学者ヨーゼフ・シュムペーターは、その著書『経済発展の理論』の中で、「新結合」という概念を使った。
社会の様々なものが新たに結び付くこと、結合することで、イノベーションを招来し、経済発展を引き起こす。「ヒト・モノ・コト・カネ」がデジタルで接続、そして、新結合する世界は、どんなイノベーションを生むのか。楽しみで仕方がない。
このように「つながる(connected)」がイノベーションを起こすという話は、いまや普通になった。自動走行車を「Connected Car」と呼ぶこともあるし、日本政府も「つながる」という単語を頻繁に使うようになった。
経済産業省は「東京イニシアティブ2017」の冠として「Connected Industries」を掲げている。「Society5.0」を推進する内閣府も「IoT(Internet of Things)ですべての人とモノがつながり、様々な知識や情報が共有され、今までにない新たな価値を生み出す」としている。

さて、ここで、我々は注意しなければならない。というのは、ついつい表面的でわかりやすい「つながる」という現象にだけ、目を奪われてしまいがちだからだ。
「つながる」は確かに、重要だ。それは間違いない。が、それだけで、自律的に動く自動走行車が実現するだろうか。あるいは、たとえば、ビットコインはどうか? 日本円の決済をデジタル化してすべての取引をネットワーク化し「つながる」状態にしたとしても、そこから、ブロックチェーン(分散型台帳技術)によるビットコインなどは誕生しない。
「つながる」以外の異なる複数の力学が、そこには、働いている。