電通・博報堂がリゾームマーケティング企業に変容
ところで、ここまで書いて、2005年頃に聞いた、あるネット広告代理店の人の言葉を思い出した。
「ネット専業って言われるのイヤなんですよね。電通・博報堂は、マス専業のくせに」
「ネット専業」と呼ばれることが悔しかったのだ。「マス専業」と電通・博報堂を侮蔑し、彼らのデジタル知識の欠如をバカにして、憂さを晴らすような発言だった。
当時は、確かに、電通・博報堂の人たちのデジタル知識は低かった。これに反論する人はいないだろう。ただ、この10年で様変わりした。彼らと20年近く付き合ってきたが、最近のデジタルシフトは著しい。
考えてみれば、今では、総合代理店のすべての人がデジタルの専門的な知識を要求されるようになった。テレビはTVerを始めたし、ラジオはradikoがある。新聞・雑誌も、Webサイトやアプリ、SNSアカウントをもっている。
デジタルに弱い営業はクライアントから不満を持たれるようになってきた。広告・マーケティング業界のすべての人にデジタルの知識が必要になったのだ。
先ほどの「リゾーム」の特徴からわかるが、「開放的で解放的(open/liberal)」であるからこそ、すべての人を取り込んでいくのだ。
そして、電通・博報堂のデジタルシフトを見てきた経験から、私が感じているのは、総合代理店の仕事が「リゾーム化」してきたことだ。彼らの思考方法、メディア・プランニングやクリエイティブ・プランニングなどの発想が「リゾーム化社会」に順応してきている。
つまり、電通・博報堂は、「リゾーム化社会」の中で「リゾームマーケティング」企業になってきた。
今回の連載では、電通・博報堂との業務経験で得たことをベースに、「リゾーム化社会」と「リゾームマーケティング」の戦略や戦術を論じていく。