LINE上で気の利いたコミュニケーションを実現
その上で、今度はデータによるクリエイティブ最適化が進むと、アウトプットが画一化していくという課題が出てくる。そこを超えるのは、やはりクリエイターの創造性だ。「結果を広告のつくり手にフィードバックし、次の一手をつくり手が想像できるような世界を実現していきたい」と須藤氏。
Kaizen Platformでは、LINEを含めた各プラットフォームにそれぞれ適したクリエイティブを解析しており、アドバンストクリエーティブセンターと協同して各場所での動画広告のテンプレートを準備している。並河氏は、須藤氏と「LINEではどういう表現が最適か」を考える中で、「『気が利くな』と感じるようなコミュニケーションがよいのでは」と話が挙がったことを紹介する。
これに対し田端氏は「LINE上だからこそ、会話を重ねていける」と応じる。動画広告は一方的に見せる手段と思われがちだが、そこからアンケート回答を募ったり商談がはじまったりしてもいい。モニターに動画広告の感想を訊ねるくらいなら、「視聴してもらった流れでそのままチャットウインドウを開いて話しかけるほうが断然速い」と田端氏。
インタラクティブであることは、LINEのサービス群を活用する大きなメリットだ。並河氏は、「P動CA for LINE Ads Platform to LINE ビジネスコネクト、といった形で、全部つなげていければ。そのとき、『どうでしたか?』と話しかけるタイミングや問いかけ方のクリエイティブ設計が、まさに重要になると思う」と語る。
LINEに参加するクリエイターが広告制作に関わる可能性
3つ目のディスカッションは、「LINEサービスに参加しているクリエイターが広告制作に携わる可能性」について。田端氏は、「ベタだが『LINE Creators Market』の人気クリエイターの世界観にあった案件があれば、企業CMなどはすぐにでも実現できる」と力を込める。また、同マーケットの参加クリエイターがKaizen Platformの登録クリエイターになる可能性も多いにある。「実際に重なっている人もいると思う。エンタメ、化粧品などのBtoC商材、あるいはビジネス寄りなど、各クリエイターも強みとする領域が違うので、その持ち味が発揮できる場が広がれば」と須藤氏。
そのクリエイティビティーが特に生きる場として、並河氏が特に注目するのは、興味関心を高めるミドルファネルでの訴求だ。「自分ごと化してもらうことがポイントになるミドルファネルは、身近な人が“横から目線”で呼びかける表現が効くと思っている」(並河氏)。
最後に田端氏は、「LINEを“スマホの中で情報を伝える手段”と狭く捉えるのではなく、サービス間の連携とインタラクティブ性を最大限に活かして、本質的にビジネスを推進する策としてぜひ使っていただきたい。これからが、ビジネスにインパクトを与えていく本編のはじまりだと捉えている」と強調する。人が商品やサービスを認知し、次第に好きになって顧客になる、その流れは昔も今も変わらない。
「今までの考え方でプラットフォームにただ広告を流していけばいい時代ではない。愛されない広告は終わる。仕組みの問題ではなく中身の問題だ。そこに知恵を縛らなければならない。マーケターに求められるハードルが高まり、やりがいがある一方で大変な時代が来た。マーケターの思っていることを実現できる仕組みを作っていけば」と須藤氏は話す。
並河氏は、「データで最適化していくというよりも、データとテクノロジーによって、もっと気持ちに寄り添った最適化ができる時代になっていくだろう。クリエイティブで何を伝えるか。デジマが難しくもおもしろくなる」という言葉を残し、ディスカッションを締めくくった。三氏による議論は、LINEの各サービスとクリエイティブをうまく掛け合わせることで、企業と生活者との関係がより自然に縮まっていく未来がすぐに現実のものになることを感じさせた。