トップファネルのクリエーティブはブランド寄りへシフトする
フルファネルクリエーティブの考え方は、もちろん動画広告だけに留まらない。その事例として紹介されたのは、カネボウ化粧品のエビータ。
「50歳からのエイジングケア」のイメージからボタニバイタルというコンセプトへ一新。ターゲットを30代からに広げるという大幅なモデルチェンジを行った。
ACRCでは、3S型メソッドをもとにSHOWとなるテレビCMや動画広告、SALE要素のブランドサイト制作からECサイトでの購入、店舗での購入まで含めたコミュニケーションを設計。
STORY要素では、コスメサイトでのタイアップやインフルエンサーによる口コミ施策でターゲットに対して興味・理解を促進している。
トップファネルのクリエーティブについて、繰り返し「ブランド寄りへシフトしていく」と語る小林氏。エビータのテレビCMも、ブランドメッセージである植物の生命力を感じさせるクリエーティブとなっている。
動画広告プラットフォームUNRULYの調査によると、動画は再生回数よりもシェア率が重要となり、そのトリガーとなるのは感情訴求型のクリエーティブだ。
GoogleとMondelez社の共同調査では、「シェアを促す中長尺の動画が人の心を動かす」という結果が出ており、動画広告にも質の高さが求められてくる。
人の感情を動かす、ブランドの世界観が映し出された中長尺の動画が主軸となると、PMP(Private Market Place)での配信に需要が高まり、テレビCMと同様のブランディング施策が動画広告でも可能になるだろうと小林氏は予測している。
クリエーティブ人材は変化を恐れず、変化を起こす側に立つべき
以上を踏まえ、今の時代に必要とされるクリエーティブ人材は、もはやハイブリッド型では間に合わない。
コミュニケーションデザイン、クリエーティブディレクション、プラットフォーマーへの理解、アドテクノロジーの活用……と、3つ以上のスキルが求められてくる。
さらに各種ポイントカードによる店頭購入コンバージョンやGPSなどを使った「ストアビジットコンバージョン」「ロケーションターゲティング」などが、2・3年のうちに当たり前になると見られている。「すべての商品・サービスがデジタルマーケティングの対象となり、オンオフが統合されていく」と小林氏。
AGFA(Apple、Google、Facebook、Amazon)などのデジタル企業が他の領域へ進出していることや、大手デジタルエージェンシーがコンサルティング会社に買収されていることにも触れ、さらなる激変に向けて次のように提言しセッションを締めくくった。
「AIがスマホのように当たり前になる世界は2025年と予想されています。そのような時代に、広告、そして広告クリエーティブはどうなっているのでしょう? 変化は激しく、速い。もはや変化を恐れないでは足りず、変化を作る側にならなければいけません」(小林氏)