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西口一希と考えるマーケティング視点の経営

「100%顧客と向き合うのがCMOの役割」スマニュー西口✕ニトリ田岡のマーケティング視点の経営

ネット広告を来店コストで比較

西口:そうすると、媒体や形態が違っても、全部Store Visitコストで比べられるんですね。

田岡:はい、Google系媒体に関してはそうです。これにより、新規顧客獲得に強い商品、既存顧客リピート獲得に強い商品など、商品の特性とそれに適した配信方法も見えてくると考えています。

西口:Web施策、やっぱり相当緻密に展開しているんですね。サイトの改善も田岡さんの範疇ですよね?

田岡:はい、そうです。EC専用商品を商品部に作ってもらったり、商品写真充実のために物流センターにスタジオを作ったり、粛々と手を入れていっています。

西口:それも、顧客分析に基づいて?

田岡:ここは、実はユーザーとしての感覚を重用視しています(笑)。前職では化粧品通販会社JIMOSの社長を6年間務めていましたが、化粧品は自分自身がユーザーではないので、定量も定性も含めて顧客調査に相当なコストを割いていました。今は、商品が家具やホームファッションなので自身もユーザーであり、自分のユーザーとしての感覚をより重要視しています。

 前職では数字を相当見ながらやっていましたので、大きくアプローチが違う点かもしれません。もちろんこれまでのダイレクトマーケティングの経験のおかげもありますが、前述の自分自身がいちユーザーであることと、入社時に1ヵ月半店舗で働いたこと、これが大きいですね。家具の接客も短期間とはいえやりましたので、その1ヵ月半で、僕の中に「ニトリのお客様」が住み着いて、今も生き続けている感じがします。

西口:あ、その感覚はわかります。なるほどね。ちなみに、Web広告の予算はどのくらいなんですか?

田岡: 額は言えませんが(笑)、その割合は年々大きくなっています。前述した、ニトリのECと店舗の補完関係の実態を明らかにするネットリサーチ結果によってWeb広告費が増えているのですが、そのネットリサーチを設計した元となっているのが店舗勤務時の実体験とそこから出てきた仮説です。このリサーチを元にECとWeb広告の店舗への影響を経営に説明し、Web広告増となってきています。

顧客に100%向き合うのがCMOの役目

西口:ここで本題が来ましたね。今、田岡さんはそうやってトップとコミュニケーションをしてマーケティングに関する戦略立案をする立場にいらっしゃるし、過去にはCEOのご経験もある。CEOとCMOの違いを、どう考えていますか?

田岡:そうですね、私自身は現在CMOというポジションではないですが、一般的にCEOの仕事の中でCMOがやらないのは、教育と採用と全社の組織設計、資金調達、全社レベルのトラブルシューティング、それから株主対応などでしょうか。そういった仕事をせずに、自分たちの顧客に100%向き合ってビジネスを行う部分を担うのが、CMOかと思います。

 JIMOSのときはCEO兼CMOのようなものでしたが、今思えば、先ほど述べたような顧客に向き合う以外の仕事で4割くらいのリソースが割かれていました。もちろん、CMO=CEOだと意志決定が速いとかコミュニケーションルートが明確といった利点もありますが、CEOがCMOに成り切るには時間的に限界があります。

 対顧客にフォーカスした思考に没入したと思ったらそれ以外の仕事で意識を引き戻される。そのようにいったりきたりしていたのでは、完全に没入するがゆえに出てくる非連続なアイデアが生まれづらいと思います。それこそがきっとマーケティングに携わる人の本領なのに。僕自身、自分が社長業を離れて初めてそのことに気付きました。

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先頭に立つCMO、後ろから荷車を支えるCEO

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この記事の著者

西口 一希(ニシグチ カズキ)

大阪大学経済学部卒業、プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン(P&G)マーケティング本部に入社。ブランドマネージャー、マーケティングディレクターを歴任。ロート製薬 執行役員マーケティング本部長として「肌ラボ」「Obagi」「メラノCC」「デオウ」「ロート目薬」などの60以上のブランドを統括。ロクシタンジャポン代表...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2018/05/07 08:00 https://markezine.jp/article/detail/28201

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