一体型、分離型それぞれのメリット・デメリット
ゲストプロフィール
田岡敬氏:1968年生まれ。東京大学を卒業後、リクルート、ポケモン、マッキンゼー・アンド・カンパニー、ナチュラルローソン、IMJ、JIMOSを経て2016年4月からニトリホールディングス執行役員に就任。EC、Web広告、公式SNS、スマホアプリ、顧客・購買分析、O2Oプロジェクトを担当している。
西口:前編では、ニトリのWeb施策にはじまり、CMOとCEOの違いについても詳しくお考えをうかがいました。CMOが荷車の先頭、CEOは荷車を後ろから押す存在というのは、わかりやすい話でしたね。
田岡:CEOとCMOが一体型か分離型なのかは、それぞれメリットとデメリットがあると思います。一体型だと意志決定が早く、方向転換の際にもハレーションが起きにくいと自分の経験からも思いますが、どうしてもマーケティング以外の部分にリソースが多く取られますので、自分の時間100%で顧客に向き合うことは難しい。分離型だと、そのままメリット、デメリットが逆になりますね。
「データ→仮説」ではなく「仮説→データ」
西口:分離型の場合、CMOがCEOを説得するとき、どこまでファクトが効いて、どこからファクト以外で揺り動かさないといけないか、という点もハードルになりそうです。先ほど、CMOの「北じゃない、南だ!」という提言を聞き入れてもらうには、最終的にはデータだけでは足りないというお話がありました。
田岡:そうですね。今は様々なファクトがデータで取れていますし、ネット調査も簡単にできますが、未来のことは、データだけではわかりません。データが重要なのは言うまでもないんですが、データ分析でわかるのは主に過去のことですね。未来について提案するには、やっぱり最初に仮説がなければ、と思いますね。「データ→仮説」ではなく、「仮説→データ」という順番です。どの立場の方でも組織にいれば上司を説得する必要が求められるシーンがあり、同様だと思います。
西口:同感ですね。企業の方向性をひっくり返すほどの提案はいちばん大きなものとして、商品企画でもプロモーション施策でも、未来のことはまず仮説を立てて、それからデータで検証しながら補強していく。
田岡:そうですね。デジタル出身の人は、最初にデータに向き合って答えを見出そうとする傾向が強いですが、順番が逆なんだと思います。そして、自分の責任で提案してリスクを取って上司を説得し切って、いわばがっぷり四つで寄り切って、意志決定に導く。西口さんも、そういう感覚ありますよね?
西口:そうですね。リスクを取って、それで手痛い失敗をしたこともありますし。
田岡:してるんですね。
西口:してますよ……。全部成功していたら、すごい。でも、それこそデータを積み上げただけの地続きの発想では越えられない局面があるし、当たったら大きいから、田岡さんの言葉を借りれば、寄り切る力強さと粘り腰で提案することは必要だと思いますね。