コミュニティの質をどのように担保したのか
実際、今回の施策とは別に、ハッシュタグをきっかけにママリを知ったという人も多い。大湯氏はこの流れについて、「自分の子どもの可愛さを知ってほしいという承認欲求と、そこから発展して、同じママ同士でつながりたい、相談したい、教えたいというつながり欲求があります。この2つを実現するのがママリの魅力だと思います」と評している。そしてママリの運営サイドとしては、「ユーザーが増えても、コミュニティの質を落とさないように注意しています」(大湯氏)と、Q&Aの回答率など様々な点でサービスの維持・向上に勤めている。
「コミュニティが活発に活動していないと、アプリ体験を阻害することになってしまいます。そのため今回の施策でも、ユーザーの体験や気持ちを考えて設計し、既存のユーザーと新規ユーザーの温度感を統一するように気を配りました」(大湯氏)
とはいっても、自発的なコミュニティ活動が大切なので、運営が介入することはしない。増田氏は「既存ユーザーにはテレビCM放映をいち早くお知らせし、日ごろの感謝の気持ちと合わせて『ママリ初心者のユーザーさんにも、あたたかく接してください』と伝えるにとどめました」と説明する。実際、テレビCM放映以後は、新規ユーザーの方が『テレビCMをきっかけに始めました』と挨拶をすると、既存ユーザーが「ママリはすごくいい場所だから、よろしくね」と挨拶を返し、スムーズなコミュニケーションが生まれたという。こうした反応も、「ママリらしさ」だという。また、キャンペーンでママリの中で得ることができる体験「ママリ体験」を打ち出したおかげで、新規ユーザーも、ママリのカルチャーやコミュニティを理解して入ったことも功を奏したそうだ。

子育てに優しい社会のインフラを目指す
今後、ママリというアプリとブランドはどこに向かうのか。大湯氏は、「2つの方向があります」と説明する。
1つは、妊娠中から出産、子育てに至るまで、子どもを持つ母親すべてが使ってくれる圧倒的なアプリになること。もう1つは、子育てを含め、広く家庭の悩みや課題に向き合い、「家庭」を切り口にしたサービスブランドとして事業を拡大・変化していくことだ。
いまのユーザー層の大部分は子育てがメインかもしれないが、子どもが育つうちに、悩みが教育やお金に移っていく可能性がある。そうした変化に応じて、ママリブランドとして新たなサービスを立ち上げるかもしれないし、新たなブランドで関連事業を展開することを考えているという。「いわば、社会インフラとして拡大していくということです」と大湯氏は述べる。その具体策として、今後は自治体や行政とつながり、子育てや家庭問題に取り組んでいくことも視野に入れているそうだ。
「社のミッションは、『人の生活になくてはならないものを作る』です。子育てや家族の課題は、決してネットだけで解決できるものではありません。ママリというアプリの中で、課題を解決すると共に、ママリを通じて社会を変えていく、将来的にはそういうサイクルを作りたいと考えています。そしてそれは、子育てや家庭のあり方を良い方向に変える社会作りにつながっていく。そのため、難しいとは思いますが、デジタルの世界だけに閉じることなく、行政や自治体と関わり、インフラ化することを目指します」と大湯氏は語った。