7割がエンジニアのテクノロジスト集団
西口:なるほど。では改めて、チームラボの仕事の仕方を知りたいのですが、まず職種の構成比はどうなっているんでしょうか?

堺:500人超のうち、7割が各種プログラマを中心とするエンジニアですね。次にWebデザイナーやグラフィックデザイナー、建築家や編集者などのクリエイターが15%弱。うちでは数学者も“作る”部分に関与するので、クリエイターですね。それからカタリストが15%弱で、管理部門は3%もないくらいです。
ちなみに、触媒という意味のカタリストは僕ら独自の呼び方で、ディレクター的な役割を担います。ただ、僕らの企画には極めて多種多様な技術を織り込んでいて、それぞれを社内の専門家が担当しているので、全部の技術を理解してディレクションするのは不可能なんですね。なので、エンジニアやクリエイターが動きやすい環境を整える人、彼らがやらないことをすべてやる人をカタリストと呼んでいます。
西口:そうすると、もうほとんどが“作る人”なんですね。自主プロジェクトのデジタルアートもクライアントワークも含めると、常時かなりの数の企画が同時進行していますよね?
堺:そうですね、今現在で相当数動いています。
個別最適に動いている プロジェクト
西口:それらのスタッフィングや収益などは、プロジェクトごとに管理しているんですか? それとも、たとえばソリューションビジネスなら堺さんが全体を管理している?
堺:プロジェクトごとですね。その上で、僕も猪子も役員ですが、実は個別プロジェクトにもかなり入っています。シンプルにいうと、個別プロジェクトで収益性が見合っていて、メンバーがそれぞれ自分の持ち場で実力を発揮していて、それプラス僕らは検索エンジンなどのライセンスビジネスもあるので、それらがうまく回っていたら成り立つのではないかな、と。
西口:それって…マネジメントが効いているような、効いていないような(笑)。
堺:ですよね(笑)。このやり方で18年目になったので、多分まだしばらくはこうなんじゃないかな。スタッフィングも、プロジェクトごとに最適なメンバーをアサインしています。
一応、常態的な組織としてはコンピュータービジョンのチーム、数学者のチーム、といったチーム分けはあって、その中で経験の長いリーダー的な人間がメンバーの専門分野を把握しているので、プロジェクトが立ち上がるときに「こういう話があるけど誰がいい?」と聞いて構成しています。
西口:なるほど。堺さんや他のラボさんの方と話していると、役職があっても、メンバーの皆さんとの関係がすごくフラットな印象があるんですよね。今うかがったような、個別最適な運営で現在のような規模の仕事をしている会社は、僕の知る限りラボさんくらいなんですが、常態組織やプロジェクトごとのヒエラルキーはないんですか?
堺:……確たるものは、ないですね。たとえば会議で滝のプロジェクションの話をしていたら、滝に最も詳しいメンバーがいちばん偉くて、僕にはほぼ発言権がないんです。