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デジタルとリアルの融合にどう向き合う?データ分析で疲弊するマーケターを救う「シンプルな手法」とは

バラバラのデータでは読み取れなかった、『休眠』顧客のストーリー

 平安保険では属性情報などのビッグデータ分析もかなりやっていますが、我々が参考にすべきは、一人ひとりの行動データをタイムラインで追い、顧客の状況を把握することだと考えています」

 リアルチャネルのデータ活用というと、店舗での購買データ等を用いたレコメンドや広告配信を考えがちだが、顧客の「ストーリー」(=カスタマージャーニー)を把握するために行動データを使っていることがポイントだという。

 顧客の行動データをタイムラインで見ることには、どのようなメリットがあるのだろうか。遠藤氏は、日本企業における具体的な改善事例を挙げた。

 「ある通販会社様で、ある一定期間購入がない『休眠』顧客の購入促進が課題でした。そこで休眠顧客むけにダイレクトメールを送っており、担当者の方はコピーやデザインを日々改善していました。しかし、ダイレクトメールを送ってもECサイトでの購入が少なく、なかなか大きな成果を上げられなかったそうです。

 この通販会社様では、顧客一人ひとりの購買履歴やダイレクトメールの送付履歴をタイムラインで見られるシステムを構築していました。そこで、その履歴データとウェブサイトでの行動ログをかけ合わせて、顧客の一連の行動を見てみることにしました。すると、『休眠』していたと思っていた顧客は、ダイレクトメールを送った直後にECサイトに来ていて、商品を見ていたのです。

 さらに、サイトでの行動を時系列で追っていくと、多くがログインできずにつまずいていることがわかりました。パスワードを再発行しようにもフォームの入力項目が多く、なかなか再発行ができなかったことが一番の課題でした。入力フォームの課題は以前から把握していたようですが、このような顧客の「ストーリー」がわかったことで、改善の優先度が上がりました」

 この通販会社では、

  • ダイレクトメールが、実は顧客の興味を喚起しており、本当の効果を検証できた。
  • 『休眠』顧客は、実はサイトに訪問しており、購入に至らない本当の課題を特定できた。

というメリットがあったが、これは顧客データをつなぎ合わせ、丁寧に行動を時系列で追っていったからだ。

 しかし企業によっては、デジタル・リアル別に、もしくは事業部別にデータがバラバラで管理されているケースもある。「それぞれの領域で、別々のデータで、別々のKPIで改善を行っていると、それで最適な顧客対応が取られている『はず』と思い込んでしまいます。しかし、顧客体験は最適化されておらず、そこが問題なのです」と遠藤氏は警鐘を鳴らす。

 「同じようなケースは、Webとコールセンターの関係をとってもあります。『コールセンター白書』によると、サポートやコールセンターに電話をかける前に、知りたい情報をWebで調べた人は7割に上るそうです。つまり7割もの人が、Webの情報だけでは不十分だからコールセンターに問い合わせたわけで、Webサイトの情報がしっかりしていれば、そのコールは不要だったといます。不要なコールが増えるとコールセンターのパフォーマンスも低下しますし、いいことはありません。

 ところがWebアクセス、コールセンターのログとバラバラに見ている限り、こうしたカスタマーエクスペリエンスの改善ポイントは見えてこないのです。だからこそ、顧客と企業との接触をタイムラインで見てストーリーを読み解くことが重要なのです」

 チャネルをまたいだ際の体験こそが、優れたカスタマーエクスペリエンスの阻害原因となっているのだ。

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2018/07/05 11:00 https://markezine.jp/article/detail/28609

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