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インターネット広告の歴史と未来

DSP・SSP・DMPの誕生 リーマンショックを契機に人とお金が揃い、動的に広告枠を押さえる世界に


予約型の「バナー広告」をオークション化したい

鹿毛:それまでの予約型ディスプレイ広告「バナー広告」の世界では、実際に広告が掲載される5営業日前には入稿しなくてはいけないという世界だったのですが、DSP・SSP・DMPの登場によって、検索連動型広告と同様にオークション形式で広告の買い付けを行う「Real Time Bidding(以下、RTB)」形式に移行していきました。誕生した時からRTB形式だった「Google Display Network(以下、GDN)」もDoubleClickの買収を契機に第三者配信を受け付け、DSPに広告枠の一部を開放します。「Yahoo!ディスプレイアドネットワーク(以下、YDN)」も同様に広告枠の一部をDSPに開放します。

鹿毛:欲しい人にだけ必要な広告を配信する、という検索連動型広告と同じ仕組みが「バナー広告」にも及んだわけです。この流れ一つとっても、検索連動型広告が「バナー広告」に多大な影響を及ぼしたということが伺えます。検索連動型広告は生まれながらにしてRTBに近いところもあり、すべてを先取りしていた概念だったわけです。

  インターネットバブルが弾ける2001年より前の話だと、たとえば今日の13時から出稿を受け付けますといった場合、12時59分くらいに電話のダイヤルにもう指がかかっていて、13時ぴったりに電話して「〇〇広告代理店の〇〇です。この枠を押さえます」という世界があったと聞いています。

 ある意味、バナー広告の世界というのは昔ながらの広告業界の慣習を引っ張った世界だったわけですね。不動産の仲介のように「この枠押さえました」という静的な世界から、金融業界の株の取り引きのように動的に広告枠を押さえるというやり方に変わっていきました。

「パブリックDMP」と「プライベートDMP」

鹿毛:DSPとSSPをつなぐ存在としてDMPが登場しました。DMPもすぐに「パブリックDMP」と「プライベートDMP」に分かれていきました。

鹿毛:「パブリックDMP」が主に扱うのは、パブリッシャー側のウェブサイトの行動履歴から、ユーザーの興味・関心を判別してCookieに保存したデータです。たとえば、ある広告主の商品を買う人たちは野球好きが多いということがわかっていたとします。広告主はディスプレイ広告を配信するときにパブリックDMPから野球好きのユーザーを選び、広告を配信することで通常のディスプレイ広告よりも高いコンバージョン率を期待できます。

 一方で、「プライベートDMP」が扱うのは、企業が持つありとあらゆるデータをCookieに紐づけて保存したデータです。既存顧客データを中心に会員情報や、マス広告やメールマーケティングなどの配信データ、場合によっては店舗の売上データなども含まれます。たとえば、商品を既に購入した人に対してメッセージを出す必要がないかというとそういわけでもないですよね。車で言えば何年かしたら買い換えますし、家を買った人はリフォームや家具の購入などが必要になります。買った人に対して引き続きアプローチして自社の違う商品を追加で買っていただく。そのブランドを選択して良かったのだという確信を持っていただき、良い評判の醸成に役立てる。そのための広告のニーズがあります。

 自社ウェブサイトへの訪問状況や、店舗への来訪の頻度などに応じて最適な広告を出し分けるという、ある意味でこれまでのCRMマーケティングの延長線上で広告を配信するためのツールが「プライベートDMP」ということになります。

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コンバージョンを追求した結果リターゲティングに収束した

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この記事の著者

杓谷 匠(シャクヤ タクミ)

Jellyfish Japan株式会社 Data Strategy Director
2008年に新卒一期生としてグーグル株式会社に入社。2010年にスタートアップの立ち上げに参画したのち、しばらく川原でひざを抱える日々を経験。2013年からトリップアドバイザー株式会社にてSEMアナリスト、BIアナリストを経験したのち、20...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/01/29 10:04 https://markezine.jp/article/detail/29214

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