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第106号(2024年10月号)
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統括編集長インタビュー

「できるまで諦めない。武器は根拠のない自信」縦横無尽にアジアを駆ける、バックパッカー社長の勝算

 アジアを西へ東へ──。広告、インフルエンサーマーケティング、人材の領域でAIを活用したSaaSソリューションを提供するAnyMind Group(エニーマインドグループ)が急成長を遂げている。設立から2年半で3つの事業を11ヵ国へ展開し、社員数は300名を超える。先陣を切って牽引するのはCEOの十河(そごう)宏輔氏。アジアを中心に1ヵ月で7ヵ国訪問するという同氏の信念は「自ら動き、自分の目で見て決める。だから言い訳しない」。カンボジアから東京へ、とんぼ返りで帰国したタイミングで同氏へのインタビューが実現。アジア制覇に挑むAnyMind Groupの展望を聞いた。

経営者のDNA「最初から海外で勝負がしたい」

―― 29歳だった2016年4月にシンガポールで創業。当時マイクロアドの取締役としても活躍されていた中でなぜ起業を選択したのですか。

AnyMind Group共同創業者兼CEO 十河(そごう)宏輔氏
AnyMind Group 共同創業者兼CEO 十河(そごう)宏輔氏

 両家系とも経営者が多く、小さい頃から「いつか起業したい」という思いがありました。高校1年生の時にネット第一世代である孫さん、三木谷さん、藤田さん、堀江さんなどをテレビで見て憧れネットに興味をもちまして。それがきっかけで、大学卒業後はネット企業のマイクロアドへ新卒入社。2年目の終わり頃に海外事業に関わる機会をいただき、単身でベトナムに渡り現地法人を立ち上げて社長を務めました。

 社長をやってみて「おもしろい!」と思いました。それこそオフィスを構える場所を考えることから始まり、売上をどう立てるのか、どういう人を採用するのかなどをすべて自分で考えたのですが、やりがいや喜びを感じました。

 その後もシンガポール、フィリピン、タイ、インドネシア、マレーシア法人の立ち上げに参画し、本社の取締役も務めました。ふと気づくと当時29歳。30歳になる前に起業したいと考えていたので、2016年4月にAnyMind Groupの前身となるAdAsia Holdingsを設立し今にいたります。

―― 新卒入社して間もなく、海外で単身での法人立ち上げ。なかなかハードな経験だと思いますが、ご自身の中で不安や抵抗はなかったのでしょうか。

 まったくありませんでした。学生時代にバックパックで海外旅行によく行っていたので、単身で行動するのにも慣れてましたし。ちなみに起業家にバックパッカーは多くて、知り合いにも結構いますね。皆さん自分の知らない世界を知ることが好きだから、バックパッカーなんだと思います。

―― 日本ではなくシンガポールで起業を選んだ理由はなぜでしょうか。

 社会人になってからほぼ海外での仕事だったので、初めからグローバルの市場で勝負したいと思っていました。アジア市場の熱の高まりは肌でビンビン感じていたので「チャンスがある」と。もちろん日本での展開も考えていて、日本を含めたグローバルで勝負できる会社を作りたかったのです。考えた末スタートアップに対して優遇制度があり、地理的にもアジア圏で動きやすいシンガポールを選びました。

日本とは“逆の流れ”で発展するアジア市場

―― 設立から2年半で11のアジア市場13拠点での展開、従業員数は300名を超える規模となり急成長を見せています。広告事業、インフルエンサーマーケティング事業、人材事業の3軸で展開されていますが足元の事業の状況と自社の強みについて教えてください。

 グループ全体の売上高は、1期目(2016年4月~12月)が約14億円、2期目(2017年1月~12月)が約28億円で好調に推移しております。3期目となる今期は、2倍以上の成長を目指しています。私たちの強みを端的に表現するなら「アジア」「データ」「AI」という3つのキーワードが挙げられます。

 広告事業では、広告主や広告代理店が効率的にマーケティングを展開するためのトレーディングデスクと、メディアが広告収益を最大化できるという機能を併せもつプラットフォーム「AdAsia Digital Platform(アドアジアデジタルプラットフォーム)」を提供しています。

 広告主側の視点でいうと、Google、Facebook、Instagram、Twitterなど広告配信先はいろいろとあり管理の手間が増える中、当社のプラットフォームを利用いただくことでそれらを一括で管理できます。さらに配信結果データをAIが学習することで、自動で広告配信を最適化します。

 たとえば、どこのメディアに予算を投下するのが最も効果的かが自動で判別されるなど、マーケティングROIの最大化を支援します。メディア側の視点で言えば、私のたちのプラットフォームに加入することで、広告を出稿したい企業とのマッチングが行われるので収益の機会が増します。

 インフルエンサーマーケティング事業も「CastingAsia(キャスティングアジア)」というプラットフォームを、各国で展開しています。特にアジアでは、インフルエンサーマーケティングへのニーズが非常に高い。

 各国のインフルエンサーに登録していただいているのですが、フォロワー数はもちろん、投稿の種類などをプラットフォームで見える化しています。広告主がキャンペーンの内容をプラットフォームへ入力すると、それに適したインフルエンサーをレコメンドする仕組みになっていて、合致すればそこで仕事が成立するというモデルです。

 そもそも市場が急拡大しているというベースはありますが、どちらの事業もニーズが顕著です。アジアと一口にいっても当然国ごとに状況は違いますが、概ね広告主側の予算がデジタルへシフトするスピードが日本と比べても早いと感じています。

 欧米や日本では、検索連動型広告が市場を牽引していった印象ですが、こちらは圧倒的にソーシャルと動画が牽引役となっています。また、パフォーマンス目的の広告主よりも、ブランディング目的の広告主が多いのも日本との違いでしょうか。

―― 日本の場合はパフォーマンス目的からブランディング目的へという市場の動きでしたが、逆なのはおもしろいですね。

 CPAに対して問われる機会が少ないです。ブランディングが先行している理由は、各市場におけるネットの普及率が伸長する中、特にモバイル経由が高く使用時間が長いため、ブランド認知を拡大するための有効なツールだと考えられていることが大きいです。ただ、今後パフォーマンス目的へのニーズが高まってくるのは、間違いないと思います。

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この記事の著者

押久保 剛(編集部)(オシクボ タケシ)

メディア編集部門 執行役員 / 統括編集長

立教大学社会学部社会学科を卒業後、2002年に翔泳社へ入社。広告営業、書籍編集・制作を経て、2006年スタートの『MarkeZine(マーケジン)』立ち上げに参画。2011年4月にMarkeZineの3代目編集長、2019年4月よりメディア部門 メディア編集部...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2018/10/17 09:00 https://markezine.jp/article/detail/29344

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