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インターナルマーケティングとこれからの企業のかたち

丸井グループ×ヤフー対談、ダイバーシティへの取り組みが企業にもたらすものとは

ダイバーシティに取り組むきっかけ

白石:中途採用と新卒採用、どちらを中心にするかで社内の雰囲気や文化もかなり変わってきそうです。ダイバーシティは「多様性」、インクルージョンは「包摂」や「包括」、「受容性」と訳されることもありますが、言葉の定義はそれぞれの企業文化などによってかなり捉え方が違いますよね。

湯川:正直、ヤフーの中でダイバーシティを十分に深めきれているかと言うと、まだまだだと思っています。言葉の意味するところが幅広く、考えれば考えるほど、どこから手を付けていいかわからなくなる。そこで、2年前に新しいオフィスに引っ越す時に、オフィス自体の中にダイバーシティ的な考え方を持ち込めないかと考えました。社外の人とのコラボレーションが生まれてくるものにしたいと、「LODGE」というオープンスペースを開設しました。このスペースはビジネスパーソンだけでなく、中学生以上であれば誰でも利用することができます。

 対社内では、「女性」「外国人」など、いくつかテーマを決めてダイバーシティの取り組みを始めています。まだ正直、インクルージョンというところには達していませんが、考え方を社内に根付かせて、しっかりとした土壌にしていきたいと考えています。

石井:ダイバーシティに取り組むきっかけは、社内的な事情がいちばん大きいかと思います。丸井グループでは働いている人の約半数が女性です。一方で、意思決定の場に女性が関われず、管理職の比率も低いという状況が続いていました。企業として生き残っていくためには、常にイノベーションを生み出さなければならない。それにもかかわらず、社内の意思決定は50歳を超えた人ばかりが会議室で行っている状態でした。そこに、違う考え方や価値観、発想を持った人が1人入ってくるだけで会議は活性化します。「多様性」を実現するスタートとして、まずは「女性」から取り組みを開始しました。

白石:マッキンゼーやボストンコンサルティンググループが実施した調査では、経営層(管理職以上)の性別や年齢、人種といったダイバーシティが明らかに業績やイノベーションに結びついているというデータがあります。そこでお聞きしたいのですが、そもそもダイバーシティ推進の目的は何でしょうか? 業績でしょうか、それともイノベーションでしょうか。

湯川:ヤフーではまだ、ダイバーシティの推進によって業績が改善したと言えるレベルにはありません。ただし今後、終身雇用という考え方がどんどん崩れていく中で、社内に人材を抱えておこうとも考えていません。10年ほど前までは、「一度会社を辞めた社員の復帰は認めない」という時代もありましたが、今はむしろ、「一度社外を経験して帰ってくればいいじゃないか」という考えが主になっています。社内だけではなく、社外も含め経験の幅を広げる。そのくらい懐の深さがないと、本当のダイバーシティは推進できないと思います。

 このように門戸を広げておく一方で、長年人事に携わる中で感じるのが、前職も含めて「育児休暇をとる人が非常に少ないこと」や「育児休暇をとったり、時短勤務をしている人が肩身を狭そうにしていること」でした。社内制度を充実させて自由度を高めてきましたが、それでも時短勤務をしている人たちは、どこか後ろめたそうにしている。そのことがずっと気がかりでした。

白石:ヤフーがコアタイム制を取り入れているのは、ワーキングマザーも含め生活の変化に対して、社員が気後れしないで働けることを前提にしているのですね。働く環境構築から社員の心理的安全性を確保する取り組みだと思います。

湯川:そういった多様な働き方、人生、ライフスタイルに対応していくというのは、企業としてこれから求められているところです。

石井:短期レベルで見た時の業績の上げ方はいろいろあると思いますが、中長期で業績や企業価値を上げていく上で必要なことがいくつかあると思います。

 これまでの丸井グループのビジネスは若い人が顧客の中心でしたが、若年層がどんどん減っていき、消費に対する価値観も変化し、将来不安を抱えながら暮らす人が多くなっていく。そういう現状を踏まえると、「女性」「若者」「LGBT」といった特定のグループへどうアプローチしていくかだけではなく、誰かをとり残してしまうことなく、とにかく「みんな」を対象にしていくことに社員の意識を向けることが必要ではないかと。それをトップ自ら浸透させていくという活動を繰り返してきました。

白石:「みんな」の幸せを考えるという姿勢は「インクルージョン」の1つのあり方とも言えます。また、明確なコンセプトを掲げ、継続的に取り組むことは社内広報的にも重要な点だと思います。

湯川:介護や育児、自分自身の体調が思わしくないなど、「変化がある」という前提で考えるほうが自然だと思います。画一的な9時から17時までみんなで働くということのほうが、当たり前ではなくなってくる。時短や育休の人たちは「枝葉」ではなく、みんな含めて1つの「幹」なんです。そう捉えれば、考え方が変わってくると思います。

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この記事の著者

白石 愛美(シライシ エミ)

コーポレートコミュニケーション コンサルタント
株式会社Amplify Asia 代表取締役
株式会社YUIDEA 社外CMO

WPPグループにて、リサーチャーとして主にマーケティングおよびPR関連プロジェクトに従事。 その後、人事コンサルティング会社、電通アイソバーの広報を経て、ダイバーシティを起点に企業のマーケティングをサポートする株式会社Amplify Asiaを立ち上げる。2024年10月より、YUIDEAの社外CM...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2018/10/16 17:00 https://markezine.jp/article/detail/29434

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