金融系APIの公開で広がる新たなエコシステム
では、これらFinTechのサービスは、どのような成長を見せていくのでしょうか? そのヒントとなるのが、金融系APIです。2017年の5月に銀行法が改正され、銀行は外部のオンラインサービスに対し口座情報や取引情報を提供するAPIの公開が可能となりました。
APIには参照系と更新系の2種類があります(図表2)。
データを提供する参照系は、あまり銀行のメリットにはつながらないと私は考えています。また、口座から違う口座への振り込みなどを代行する更新系APIは、マネーフォワードのMFクラウド経費が活用し、国内初のBtoBサービスとして提供しています。更新系APIの導入は進むと考えられますが、振込手数料の関係もあり、直近3年はそれ以上の大きい動きはないというのが個人の見解です。
しかし、その恩恵を受けるベンチャーはいますし、銀行が自社のAPIを使ってQRコード決済を行うことも確実でしょう。その上で、大きなエコシステムへ成長するかを考えると、やはりデータが欠かせません。データは集めただけでは意味がなく、それを必要としている人へ提供できる形にすることが重要です。許可を得たパーソナルデータを企業へ提供する情報銀行が普及すれば可能性は広がりますが、情報登録はアプリやデバイス次第でしょう。生体系デバイスで自動的にデータが取れるレベルにまでならないと、難しいのではないかと考えています。

FinTechが紡ぐ新たな経済圏
日本経済は、消費ニーズを上げ、企業に投資をさせて雇用を増やすというサイクルに本気で取り組んでいます。すると、海外のように預金から投資へという動きが、日本にも起きてくるでしょう。また世代交代が進めば、お金の価値観も変化し、以前では考えられないような金融サービスが出てくるかもしれません。
一方で、FinTechのベンチマークであるアメリカや中国は、政府による監督が強まり、銀行が強みを増している領域もあります。日本も同様に、メガバンク主導の動きが起きるかもしれません。ベンチャーとの協業なども考えられますが、金融企業傘下の事業会社には制限があります。法律がどのように変わっていくかを追うことが、今後を予測する情報として確かです。
そして、LINE・メルカリ・楽天などのIT企業が金融業界とどのように関わっていくのか。なかでも楽天は、銀行・証券・カードと商圏を作っていますので、これに倣った自社ブランドの経済圏はいくつか生まれるでしょう。対メガバンクという構造で、大手IT企業がFinTechベンチャーを吸収し、ひとつの経済圏を作るという未来がありそうな予感がしています。
