ユーザーの「驚き」が最高の体験価値
――御社では「少額資金ニーズ」に応えることに軸足を置きつつ、新規サービスを設計されていますが、サービス開発の根底にはどういった思いを持っていらっしゃいますか?
立川:バンクでは、「見たことのないサービスで新しい市場を作る」ことをミッションに掲げています。そのため、既存のサービスと似た価値を提供するのではなく、ユーザーに驚いてもらえるような新しい顧客体験を提供することを意識しています。
――「目の前のアイテムがお金になる」体験は新しい価値を提供する一方で、懐疑的に思われることはありませんでしたか?
立川:今までになかったサービスですので、確かに最初は「本当に大丈夫なんだろうか?」と不安に思われるユーザーもいたと思います。ただ、そういった方でも実際にサービスを使っていただくと、取引完了や入金までの簡単さ、そしてスピード感に驚かれる方がほとんどでした。
一般的な話として、お金に関する話は「汚い」「怪しい」というイメージが根強いと思います。そのため、「CASH」では「お金を瞬間的に得る体験」をポジティブに捉えてもらえるようなUI設計を心掛けています。たとえば、「CASH」のメインカラーを黄色にしているのは、黄色がお金を表す色だからというのもありますが、それ以外にも親しみやすさがあるからなんです。
また「CASH」のイメージキャラクターの「ユキチくん」がいるのですが、「ユキチくん」はサービス運営側が伝えたいことを、ユーザーに対してやわらかくフレンドリーに伝える役割を持っています。

顧客体験=良い意味で期待を「裏切ること」
――立川さんが考える「顧客体験」の定義は何でしょうか?
立川:教科書的な意味では、おそらく「商品・サービスにおけるすべてのタッチポイントでのユーザー体験が積み重なったもの」だと思いますが、私が考える「顧客体験」の定義は「ユーザーの期待を良い意味で裏切ること」ですね。冒頭にも申し上げた通り、既存のサービスでは成し得なかったことや、これまでなかった価値を創出することで新しい「顧客体験」は生まれてくるのだと思います。
――「CASH」における新たな価値はどこにあるのでしょうか?
立川:「CASH」が提供している価値はスピードだと思っています。スピードをもう少し具体的に言うと、「査定の早さ」「取引完了までの早さ」「入金までの早さ」があるのですが、その3つを既存のサービスよりも圧倒的に早くすることで、「モノを売る」という行為を極限まで簡単にしています。実際にユーザーにインタビューをしても、「あまりにも取引が簡単でびっくりした」という話を多く聞きます。
――新規サービスを定着させる上で重要なのは、どういった視点でしょうか?
立川:サービスを初めて利用していただいた時の体験価値をいかに最大化できるかだと思います。新規サービスが生まれると、イノベーターやアーリーアダプターの方々がまずは利用し始めます。そこで十分にサービスの価値が伝われば、おのずと利用者は広がっていくのではないでしょうか。
特に「CASH」においては、サービス自体がわかりやすく完結しているものですので、なるべく余計な機能などはそぎ落とし、シンプルに価値を訴求するように努めています。