CMOはマーケットを見る、CDOは顧客を見る
西口:年内最後の回になります。今回は、日本初のCDOという役職を日本ロレアルで務め、8月にLDH JAPANに移籍された長瀬さんに登場いただきました。10月に行われたアドテック東京で、2年連続で人気スピーカー1位を獲得されたことも話題になりましたね。キャリアの変遷も多彩なので、キャリア形成のお話もぜひうかがいたいと思います。ロレアルには何年くらい携わっていたんですか?
長瀬:2年9ヵ月ですね。2020年を目指して完全デジタルシフトを目指していたのですが、僕がやるべき「土台作り」は大体終わったと考えたのと、次の場所とのご縁があって移りました。
西口::ロレアルではどのような仕事を担当されていたんですか?
長瀬:デジタルに関する社員教育、キャリア開発、EC売上向上、Webの改善、新しいCRMシステム導入、メディア戦略やソーシャル戦略、アマゾンや楽天などパートナーシップの推進、それからロジスティックの見直し、AI導入を含めた工場のオペレーションの改善など……。かなりありましたね。中でも、教育はいちばん力を入れていました。
西口::相当幅広いですね! CDO自体がまだ少ないだけに、CMOとの違いも会社によって考えが違うかと思いますが、どのような切り分けをしていたんですか?
長瀬:僕の思うCDOの役割は、「顧客」を見ることです。だから、僕がロレアルにCDOとして入るなら、顧客接点に関する部分はすべて僕と直接関われるような組織の構造にしてほしいと経営陣と話をしました。
先ほど挙げた仕事も、いろいろあるように聞こえますが、いずれも顧客に直接関係する部分です。一方でCMOの役割は、マーケットを見ることです。トレンドや競合の動きを押さえ、それを踏まえて会社の進む方向を見極めて戦略を立てる、いわゆるマーケティングですね。
顧客を理解し、顧客接点のすべてを扱う
西口::デジタル領域というより、顧客接点に関係する部分のすべてを扱っていたわけですね。見方を変えると、現代において顧客との関係構築にデジタルが欠かせないから、デジタルを使って顧客を理解し、顧客接点を把握して改善していくことの責任者がCDOになった、ということ?
長瀬:そうともいえますね、僕の役割は“デジタル領域を扱う”のではなく、“顧客接点を扱う”ことでした。なので、トラディショナルメディアもカスタマーセンターも僕やチームと直接関われるようにしてもらい、店頭スタッフや卸のパートナーさんに対してもデジタルの意義やデジタルを使った顧客理解などの教育もしていたわけです。
西口::顧客データに関しては?
長瀬:デモグラフィック情報やブランドターゲットの情報などをマクロ的に把握する調査部は、CMOの配下にありました。僕は、その先にいる個人の購買情報いわゆるCRMを中心として見るという分担で、必要に応じて調査部からデータを取得していました。
西口::デジタルツールの選択などは、CIOが管理する場合もありますよね。CIOとの違いは?
長瀬:ロレアルではCIOはいませんでしたが、システム系の部門とも密接にタッグを組んですすめていました。。たとえばソーシャル戦略で分析ツールを導入するとか、オンラインとオフラインのデータをまとめて整理するとかも、僕からシステム部門もしくはそこに大きく関わる事業部にグローバルとの連携でディレクションするので、僕が顧客接点を中心にビジネスを設計する上ではそこの関係がスムーズでないといけない。なので、そういう体制にしてもらったんです。