コンテンツの価値をビジネスにするには?
続く第二部では、ゲストフェローの藤村厚夫氏が、メディアの未来について発表した。スマホ時代のニュースアプリである「SmartNews」は、数多くのメディア企業と提携して、コンテンツをユーザーに届けている。すでになんらかのパートナー関係を築いているメディアは3,000にのぼるという。
新興メディアの創刊ラッシュであり、メディアの黄金期ともいえる近年。無数のクリエイターが、無数のデバイスを通じて、無数のメディアを運用する時代が到来している。しかしそれは、手放しに喜ばしいことばかりではないのかもしれない。

「コンテンツを表現する形式がメディアだと、自分は理解している」と語る
ここで藤村氏は、「コンテンツ」と「コンテキスト」について解説した。「Contents is King」はよく聞くフレーズで、多くの人にとっても理解しやすく、予定調和しやすい議論だ。しかし最近は、「コンテンツ」を取り囲んでいる「コンテキスト」のほうが重要かもしれないと考えるようになってきたという。
たとえば、朝出かける時に、「今日は雨なので傘をもっていったほうがいい」「冷えるので上着をもう一枚きたほうがいい」といったことがスマホのプッシュ通知で知らされたとしよう。そのコンテンツ自体には深い価値があるわけではないが、今まさに家をでるタイミングで、一人ひとりのコンテキスト(文脈)に寄り添うカタチで情報が伝わることで、価値が生まれる。
「スマホの売上は2020年にはすでに低迷する時代に突入しているでしょう。そこでコンテンツへの接触を誰がリードするのかというと、たぶんそれは偏在的だと思います。様々なデバイスで、様々なフォーマットで、様々な情報を、最も消費者が求めているカタチで受け取れるようなコンテキストを再構築しないといけません」(藤村氏)
一方、コンテンツの価値をビジネスにしていくには、コンテキストを意識しながら、コンテンツの重要性を高めていく継続的なアプローチが必要で、そのためにはコンテンツに色んな形で働いてもらうべきだという。
「イメージとしては、消費者との接点を広げてコンテンツに触れる人を継続的に増やしていくと同時に、消費者とのエンゲージメントを深めて購読などのマネタイズを進めていく。この2つのベクトルで取り組んでいく必要があります」(藤村氏)
文脈に依存した揮発的な情報の価値が高まる一方で、ドストエフスキーのように100年以上経っても色あせないコンテンツの価値もある。「この2つの価値をどうやって、きちんと次の世代に引き継いでいくか。この命題は消えない」と藤村氏は議論を投げかけた。