CPC、CPAが高くなる意味を上層部が理解することがカギ
では、ここまでの話を踏まえて、3つ目の広告主がアドベリを進めるステップについて考えてみます。前提として、広告の単価とKPIは切り離して考える必要があると思います。CPCやCPAはあくまで単価であって、それはKPIにせず、あくまで広告を出したことによる効果を確認できる指標をKPIにすることが最初のステップになるでしょう。
広告の効果を把握できたら、ではなぜその広告枠があるメディアやプラットフォームは効果があったのか、という視点にシフトして、メディアやネットワークの質を判断していきます。
その過程で、明らかに数値がおかしいメディアは除外し、無意味な広告出稿をカットした分をより効果の見込めるメディアや新興メディアに投じていきます。我々だけでなく、アドベリの分析は日に日に進んでおり、我々のツールであれば広告の接触回数とサイト流入やコンバージョン数の紐付けなどもできるようになっているので、単なるリスク検出ではなく広告費の最適化にも役立ちます。
このようにステップとしてはシンプルですが、実はアドベリを進める上では、多くの企業で共通して発生する課題があります。たとえば悪質なサイトやインプレッションを除くことで(不正インプレッションが減って)、CPM自体は上がってしまい、それがクライアントや上長に理解されないということもあります。トップダウンや部門全体で主導されている場合はいいのですが、そうでない際には意外と大きなハードルになってしまうのです。これは「アドベリの意義を理解する人を増やす」という我々のチャレンジでもありますが、たとえば事例を提示するなどして、理解促進に努める必要があります。上記の例だとCPMは高騰してしまったものの、結果として有効インプレッションは増えたため、問題なく継続につながりました(図表3)。
 アドベリ周りの話でよく、食べ物にたとえて「有機野菜や国産鰻は高いですよね」という話を耳にしますし、自分もそのような例えを引用することがあります。こうした食材は、高くてもおいしく、信用できるから皆さん購入するわけで、そのときのKPIは「おいしさ」や「安全性」になります。でも、単に安さだけで食材を購入すると、当然その質は前述のような食材には敵いません。食べればお腹は満たされるかもしれませんが、それは指標にすると「コスト・パー・お腹がふくれる」になる。それを追求して、果たして健康な体になれるのでしょうか?
安さ一辺倒を重視する観点は捨てて、おいしくて栄養のある食材を最適な予算配分で買いましょう、というのがアドベリの実装された世界だと考えています。
もちろん、予算や目的に応じてバランスは変わってきますが、安さだけを追求することでは、本来の目的であるビジネス上のリターンは得られないことは、ご理解いただけるかと思います。
事例が重なれば導入の加速が期待される
最後に、アドベリの今後について触れたいと思います。当社CEOが1年ほど前に「アドベリ自体はコモディティ化する」と話しましたが、アドベリが一般化すればそれ自体には価値がなくなりますし、そうなるべきだと考えています。ブランド毀損のない、また不正インプレッションではない良質な広告を買うことが当たり前の世界に早くならなければいけません。
アドベリがスタンダードになった世界では、次のステップとして、冒頭で紹介したように「アドベリを積極的に/プラス方向へ活用する」という発想で捉える広告主企業がより増えていくと思います。「なぜ広告主が費用負担するのか」という疑問も、アドベリの費用をコストとしてのみ捉えず、それによる広告費の最適化まで含めて費用対効果を考えると、見方が変わるでしょう。日本企業は前例を重視し、新しい概念の踏襲や対策の開始に慎重になりがちですが、逆に事例が相次ぐと一気に拡大する傾向もあります。そのタイミングを、来年にも迎えるだろうと見ています。
ただ、我々ベンダー側も、より多くの企業にそう考えてもらえるように、啓蒙や事例の提示などを一層積極的にしていかなければいけないと思っています。アドベリは、対策ではなくプラスに使ってもらうことが本分です。クライアントだけでなくステークホルダーとも協業しながら、少しずつ意識が変わるよう働きかけることで、市場の健全化につながることを願っています。
