データによるインサイトの把握とマネジメント進化および本質
顧客視点のマーケティングの実践においては、近年の情報環境の変化、具体的にはスマートフォンの普及、そして様々なマーケティングテクノロジーの進歩によって可視化の度合いが進み、格段に消費者動向の把握が進んでいるのも事実だ。とはいえ、ビジネスやマーケティングのKPIとなる数字のトラッキングでは、単純に認知と購買の関係だけで要点を捉え、その購買に至る消費者のパーセプションの変化をかえりみないことも多い。特に売上(購買)が順調であったときほど、なぜ買ったのか、というポイントを解明する意識が薄く、結果、売れなかったときの消費者の認識と行動における要因分解ができなくなってしまう。本来は売上(購買)の良し悪しにかかわらず、その詳細分析をしておく必要がある。消費者の生活欲求となる課題認識のポイントから、購買欲求が醸成された結果としての商品選定、トライアルを経て、継続購入となる一連の認識変化を、どのようにパーセプションが形成されて行動に至ったのかという心理的度合いを把握しておくことが重要となる。
そのような課題意識から、今回、戦略構築やパーセプションチェンジ・プランニングを得意とするインテグレートと革新的な調査会社であるカンター・ジャパンの両社が手を組んで、ブランド・パーセプション・マネジメント(BPM)というソリューションを提供することとなった(図表1)。
BPMでは、生活者の現在のパーセプションの把握⇒理想のパーセプションチェンジストーリーづくり⇒IMC(統合型マーケティング)の実行⇒パーセプション変化のトラッキングという、顧客視点のマーケティングにおいて必要と考える一連の流れを、アセスメント・実行・モニタリングの3つのフェーズに区切って考えている。
アセスメントフェーズ
アセスメントフェーズでは、ブランドや商品が属するカテゴリー全体においての位置づけを確認して現状を把握、そしてコミュニケーション戦略構築まで進める。ここで導き出された生活欲求によっては、カテゴリーそのものや競合の設定から再定義することもある。いずれの場合も、多くの人が購買に至るパーセプション変化のパターンである「黄金文脈」を見出し、コミュニケーションにおいて飛躍的に購買につながる「レバレッジポイント」や購買行動の妨げとなる「ボトルネック」がどこに存在するのかを探求することが不可欠だ。そのために、様々なデータ分析、定性・定量の調査などを通し、現状の購買者・非購買者、それぞれのパーセプション変化における決定的な違いを見出していく。これが理想のパーセプションチェンジストーリーを見出すきっかけとなり、その実現のためのコミュニケーション戦略構築の糸口となる(図表2)。
さらに、顧客以外にもインサイトを捉えるべきステークホルダーがいる。それが、メディア、流通、有識者である。ストーリーに報道価値があるのか、売り場での提案性はあるのか、有識者から見て妥当性はあるのか、仮説検証を加えていく。そして生活欲求と購買欲求の組み合わせの中で、欲求を喚起させる情報環境の側面とブランドもしくは商品そのものが持つUSP(ユニークセリングポイント)がつながるストーリーに落とし込み、その流れをターゲットとなる消費者とのコミュニケーション接点で展開していくことが鍵となる。同時に、そのストーリーにおけるパーセプション変化がブランドや商品選択にどのように寄与しているか、それがどのようにリアルに展開されているかをトラッキングできるようにするための検証ポイントの設計も施す。
