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異なる文化を持つ企業は協業できるのか?アクセンチュア インタラクティブとIMJ、融合までの道のり

 デジタルマーケティング業界の再編が急速に進んでいる。大きな動きとしては、昨年9月にAdobeがMarketoを買収し、10月には電通とセプテーニが資本業務提携を発表したことが記憶に新しい。いずれも強みの異なる企業を統合することで、より幅広い範囲でソリューションを提供するのが狙いだ。今後も統合の流れは加速していくと思われるが、実際まったく異なる文化を持つ企業同士がうまく融合することはできるのか? 2016年にIMJをM&Aし、2017年に完全子会社化したアクセンチュアは、独自の施策で両社の融合を進め、想定以上の成果を収めている。アクセンチュア インタラクティブグループ日本統括とアイ・エム・ジェイ 取締役社長 兼 CEOを務める黒川順一郎氏に、企業を融合させる際のポイントを聞いた。

なぜ今、デジタルマーケティング業界の再編が進んでいるのか?

――そもそも、なぜ今、業界再編が加速しているのでしょうか。

アクセンチュア インタラクティブグループ日本統括
アイ・エム・ジェイ 取締役社長 兼 CEO 黒川 順一郎氏
取材はアクセンチュア インタラクティブおよびアイ・エム・ジェイが協働する
「アクセンチュア インタラクティブ スタジオ東京」で行った

黒川:根本にあるのは世の中の変化です。世の中の変化というのは、消費者の行動の変化から始まります。今は単にモノを作っただけでは売れません。一貫した顧客体験を設計する必要があります。

 たとえば旅行の体験を考えてみましょう。空港までバスで行って、空港でチェックインしてラウンジを利用して飛行機に乗ってその後タクシーに乗ってホテルに到着して……と、ここまでで既に様々なプレーヤーが関わっています。

 もし飛行機で見ていた映画が途中までしか見られなかった場合、ホテルで続きを見られると、顧客は喜びますよね。この仕組みは企業間で手を組んで行わなければ実現できません。顧客に本質的な価値を提供するため、企業の枠組みを超えてエコシステムを形成し、面でサービスを提供する時代になってきたということです。

 このようにビジネスが変わると、当然その事業会社を支援する側も変わる必要があります。広告代理店は、メディアバイイングだけでなくコンサルティングのアプローチも使って広告主に貢献しようという思考になります。また、コンサルティング会社は、クリエイティブやマーケティングの能力をさらに強化して、顧客企業に貢献しようと考えます。いずれの場合も、これまで提供してきたサービスを、M&Aや協業によって強化・拡大しようとする動きは自然な流れと言えます。

 また、テクノロジーが「収束」のフェーズに来ているとも言えるでしょう。今のマーケティングテクノロジーの世界は、無数のサービスが混在している状態ですが、これが収束していく流れがあります。かつて、会計システムも、部分的な機能を提供するサービスが多かった中で、それらを統合して総合ERPパッケージにしていったのがSAPやオラクルなどでした。マーケティングテクノロジーにおいても、これと同じような動きがあると考えています。

 テクノロジーの世界では、どの分野でも一気にサービスが増加し、収束していく流れがあります。部分最適化したサービスによる点のサポートではなく、面で企業を支えようという動きが広がっているということですね。アクセンチュアも、元々面は広いのですが、アイ・エム・ジェイ(以下、IMJ)を傘下に入れてサービスを強化することで、より優れた顧客体験を提供できるよう、企業を面で支援したいという狙いがありました。

「顧客体験」という観点で全社をつなぐのがマーケターの役割

――多くの企業は、シームレスな顧客体験の提供が必須だと気づいてはいるものの、実行できていないように思います。

黒川:そうなんです。各方面の経営陣と話していても、顧客体験の重要性は理解されていて、アイデアも持っている。でも、実行できないという課題があります。実行できない大きな要因は2つで、企業の仕組みが追いついていないことと、人材不足です。

 仕組みについては、たとえば失敗を許さない文化が根付いて、誰もチャレンジしようと思えない状態になっているケースがあります。また、イノベーション事業部が立ち上がっても、「毎月5つのイノベーションを生み出せ」とKPIを設定されてしまっていることもあります。イノベーションはそんな押し付けで計画的に生まれるものではないですし、これでは本末転倒ですね。

 人材不足も深刻です。顧客体験は、顧客に最も寄り添っているマーケターが設計するべきですが、チャネルが複雑になっていること、伝統的に商品・サービスありきでプロモーション的なマーケティングを行っていたこと、などから、なかなか対応できる人材がいないのが実情です。

――先日、MarkeZineがマーケター向けに実施したアンケートでも、マーケティングの業務が拡大していると感じているという回答は8割に上りましたが、CMOが在籍している会社は3割程度でした。

黒川:現状に追いついていないということですよね。一方、昨年11月にグローバルでアクセンチュア インタラクティブが実施した調査で、企業の9割が、CMOには部門間をつなぐ役割があると認識していることがわかってきました。

 たとえば、新しい顧客体験を考え続けるには、新しいタイプの人が必要です。新しいタイプの人を取り込み、社内文化も変えていくとなると、社外パートナーと内部チームをまとめて協力させる必要がありますし、人事ともより一層連携する必要がありますよね。

 このように、各セクションやパートナーが顧客接点を起点に連携していく動きが広がっています。一部の部署で機能していた状態から、全社で機能するようになる流れは、数十年前のITの進化によく似ています。情報という観点で全社をつなぐのはIT部門、人という観点で全社をつなぐのは人事部門だとすると、顧客体験という観点で全社をつなぐのが今のマーケターの役割です。

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この記事の著者

水落 絵理香(ミズオチ エリカ)

フリーライター。CMSの新規営業、マーケティング系メディアのライター・編集を経て独立。関心領域はWebマーケティング、サイバーセキュリティ、AI・VR・ARなどの最新テクノロジー。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

安成 蓉子(編集部)(ヤスナリ ヨウコ)

MarkeZine編集部 編集長
1985年山口県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。専門商社で営業を経験し、2012年株式会社翔泳社に入社。マーケティング専門メディア『MarkeZine』の編集・企画・運営に携わる。2016年、雑誌『MarkeZine』を創刊し、サブスクリプション事業を開始。編集業務と並行して、デジタル時代に適した出版社・ウェブメディアの新ビジネスモデル構築に取り組んでいる。2019年4月、編集長就任。プライベートでは2児の母。

★編集...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/01/18 08:00 https://markezine.jp/article/detail/30034

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