テレビマーケティングがいよいよ現実に
最初に取り上げたカオスマップはまだVer.2です。米国でも始まったばかりで、これから定義がアップデートされていく分野です。まだ見ぬ日本版のカオスマップですが、あえて不完全ながらもリストアップしてみたいと思います。
もちろん放送局自身は重要なプレーヤーとして入ってくるでしょう。その一例として、日本テレビが昨年よりアドバンス・スポット・セールス(ASS)と言うサービスを開始し、テレビCMスポット枠の新しい買い方を提案しています。また、昨年末より複数の放送局で、デジタルに触発された新しいCM枠の形として、6秒枠へのチャレンジも始まっています。これは近年米国で実験を重ねてきたものを、日本でも取り入れてみようという試みです。また、OTTについても、Netflix、Huluのような海外プレーヤーに加え、日本発プレーヤーとしてAbema TVが話題です。
他業界からの参入も相次いでいます。印刷サービスを提供するラクスルが、2018年 から地方局を中心に、50万円からテレビCMを制作し、一枠からでも放映するサービスを開始しました。テレビCMを出稿したい中小企業の「出し方がよくわからない」「高そう」「面倒なのでは」といった懸念点を払拭して、シンプルなサービスを提供したことが話題となりました。最近では日本テレビのASSとも連携しサービスを提供し、サービスを拡充しています。
様々なデータをもとにし、テレビ広告の効果を検証・最大化するアトリビューション分析に関しては、電通のSTADIAや、博報堂のAtmaなどのプラットフォームが登場し、広告主の活用実例が増えつつあります。その延長線として、放送枠に対してより多くのデータと連携させることで枠の価値を再評価して取引する、アドバンスTV(Advanced TV)の概念も語られるようになりました。
※アドバンスTVは、近年急速に成長している、よりリッチなデータでの配信「data driven linear」や自動取引の「プログラマティックTV」、個別配信の「アドレッサブルTV」などを包括した言葉。
テレビデータの多様化が業界の変革を牽引する
こうした変化は、当社も一翼を担っている、テレビデータの種類・質の向上が背景にあります。むしろデータこそが、テレビにおいて現在最も盛んな動きを見せている部分かもしれません。
一つはテレビの「センサス(全数)データ」の登場があります。インターネットテレビ(インターネット結線テレビ)が増えたことでテレビメーカー自身もデータの取得・分析に積極的になっています。現在普及している数十万台のデータを取得し、センサスデータとして提供を始めたメーカーもあります。
一方で、センサスデータでは取れない個人レベルのデータや、より「深い」データを取得できる「パネルデータ」を実際のマーケティングへ活用する事例が増えています。当社が提供する「視聴質データ」に加え、パネル拡大を発表したビデオリサーチ、関東関西でパネルを所有するスイッチ・メディア・ラボ、インテージのMedia Gauge TVなどを用い、複数のデータを補完し合い、連携することで新たな分析視点を提供するサービスも出てきています。
こうして見ると、日本でもカオスマップを描けるほど、様々なテレビ周辺のソリューションが増えてきていることがわかります。さらにその背景には、マスマーケティングの一部でもなく、デジタルマーケティングと対立する概念でもなく、むしろ重なりあう概念として、「テレビマーケティング」とでも呼ぶべき視点が、これから必要となってくることでしょう。次回以降は、様々な事例を取り入れながら、テレビマーケティングとは何か、について皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
データを活用したテレビマーケティングについて、著者に相談できる!
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