必要なのは、従来とは異なるアプローチ
栄養調整食品の中でも高い人気を誇る1本満足バーは、これまでシリアルとタルトの2タイプで展開。デザートやおやつ感覚で食物繊維やビタミンを補給できる。そして2018年10月、新たに「1本満足バー プロテインチョコ」「1本満足バー プロテインヨーグルト」の2商品が発売された。両商品は近年のスポーツやフィットネスに対する関心の高さに応えるため発売に至ったという。
「栄養調整食品」として幅広いターゲット層にアプローチしていた既存商品に比べ、プロテインシリーズは訴求ポイントが明確であり、ターゲットも絞られる。
アサヒグループ食品 食品事業本部 食品マーケティング部で副課長を務め、1本満足バーのメディアプロモーション全般を手がける小林芽生子氏は、プロテインシリーズを訴求する上で疑問を抱えていたという。
「これまで新商品を発売する際は、テレビCMなどのマスコミュニケーションをメインに進めていました。ただ、プロテインシリーズに関するコミュニケーションで感じていたのは、従来どおりでいいのかという疑問です。プロテインシリーズは既存製品に比べ訴求ポイントがはっきりしているので、いかに"たんぱく質を取りたい"というユーザーにリーチできるのかがカギです。マスで展開しつつ、よりユーザーに寄り添った施策も必要だと考えていました」
詳細なターゲティングで質の高いリーチを獲得
これまでマスコミュニケーションにおいては、「タレントパワーを活かしてイメージを醸成するクリエイティブ」を展開してきたアサヒグループ食品。タレントのキャラクターを活かしたテレビCMのクリエイティブを作り、それを商品発売のタイミングで一定のGRPで投下。デジタルの動画広告にも取り組んできたが、あくまで補助的な存在だった。
しかし、先述の小林氏のコメントにもあるように、これまで同様のコミュニケーションでは、生活者の声を拾いきれず、ニーズに応えたコミュニケーションができないのではないかと危惧していたのだ。そこで同社は、ユーザーとのインタラクティブなコミュニケーションを起点にブランド認知を広げていきたいと考えた。その結果、最適だと判断したプラットフォームがTwitterだったという。
以前より、1本満足バーをTwitter上で様々なコミュニケーションで展開しており、都度Twitter広告にも挑戦してきた。その際は、Twitterの中でも広くリーチできる広告商品を活用することが多かったという。
しかし今回は、プロテインのニーズを拾いながら、「トレーニング」や運動関連のキーワードなどで細かくターゲティングしていくことを考えた。Twitterのキーワードターゲティングやハンドルターゲティングを活用することで、"たんぱく質を取りたい"と考えている層をターゲットしてリーチすることに成功した。またこれだけではなく、Twitter Japanからの提案により「ローンチパッケージ」という新しい広告パッケージを日本で初めて実施した。
日本初Twitterの「ローンチパッケージ」とは
「ローンチパッケージ」は、その名の通り新商品発売時の広告効果を最大化させることを目的としている。
具体的には、商品・サービスのローンチ時に「ファーストビューオンリー」と呼ばれる、圧倒的リーチを誇る広告商品で最大限露出量を増やして認知を拡大。その後はプレミアムパブリッシャーの持つコンテンツにプレロールで動画広告を配信する「インストリーム動画広告」でターゲットを絞り、より深いコンテンツを発信。そして、一定の商品認知が得られた段階で、顕在層向けに動画をタップすると再生したままサイトに遷移できる「ビデオウェブサイトカード」を配信していく。
これにより、マス広告に匹敵する認知獲得から、ターゲット層の理解促進までを一気通貫で行うことを可能にした。さらに、同パッケージでの訴求に加え、小林氏は「ファーストビューオンリー」を使用する前に一つ施策を追加した。
「まず、これまで起用してきたタレントを使わず、商品特長にフォーカスしたティザー動画を制作しました。これにより、この動画を発売前にTwitter上で配信して『プロテイン関連の新商品が発売されるらしい』という空気感を形成することにしました。そうすることで、ファーストビューオンリーの効果がさらに高まると考えたのです」
商品理解までの流れがスムーズに
まず、ファーストビューオンリーでは発売直後で大きなインパクトを残す必要があったので、マス広告と同じクリエイティブを展開し、これまでのタレントを起用した強いメッセージングを行った。
その後、インストリーム動画広告とビデオウェブサイトカード広告を配信。
「インストリーム動画広告では、購入意欲が高まりそうなターゲットに向けて配信をしました。インストリーム動画広告は、Twitter利用者が興味のあるコンテンツの前に配信できるので、しっかりと見ていただけるような設計が重要です。ビデオウェブサイトカードでは運動やフィットネス関連に関心の高い利用者に、より深く商品について理解できるLPへの誘導を図りました」
最終的な着地点は商品理解。そのゴールを前提に設計されたプランのため、「一連の流れを非常にスムーズに設計できた」と小林氏は語る。
予想超える売上に寄与する結果に
今回の施策の結果、目標を上回る数値が出ただけでなく、想定外の効果も得られた。たとえば、Twitter上の会話量を同カテゴリーの商品で調べたところ、他を圧倒的に突き放す会話量が発生。また、小林氏によると、その会話の質も良かったという。
「今回のキャンペーンで、明確なターゲットにメッセージを届けることを意識した結果、実際に購入した方や、商品を深く理解していただいた方からのツイートが多数見受けられました。また、2018年は1本満足バーブランド全体で目標だった前年比105%を大きく上回る113%の売上を達成しました」
商品に関してどのようなイメージを持っているのかを利用者の会話という定性的な情報から検証できるのはTwitterの強みの一つ。小林氏も、今回のキャンペーンを通じて得られた反響は丁寧にウォッチしていきたいという。
「商品について発信してくれるお客様には強い想いがあります。こちらからのメッセージを伝えるだけでなく、利用者の目線に立ち、どのような文脈でツイートされていたのかを紐解いて、インプレッションやツイート数だけでは測れない部分もしっかり把握していきたいですね」
Twitterに期待するのは「マス広告の補完」と「インタラクティブ性」
最後、小林氏に今後Twitterに何を期待し、どう活用していきたいかを聞いた。これに対し同氏は「テレビCMの補完的な役割を期待しつつ、Twitterならではのインタラクティブ性を活かした取り組みにチャレンジしたい」と語った。
「テレビCMのインパクトはいまだ強く、今後も活用していきます。ただ、年代によって接触するチャネルが大きく変化してきている今は、常に新たな手段を模索していかなければなりません。その中でも特にTwitterへの期待は大きいです。利用者数が多いのでかなりのリーチを取れますし、細かな検索ニーズにも応えられる。広告と利用者によるコンテンツが自然に共存できるのも魅力的です。様々な可能性を秘めているプラットフォームなので、今後も新たな取り組みにどんどんチャレンジしていこうと思います」