SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2025 Retail

奥谷さんと学ぶ、"勝てる"マーケティング思考

「DMは民主的なメディア」/奥谷氏が考える、デジタル時代におけるDM活用の可能性とは


柔軟な思考でメディアを役割分担

 DMに限らず、デジタル時代になったからこそ、紙メディアには新たな活用の余地が出てきました。たとえば、カタログ通販にも活用の余地はまだあります。たとえば、通販事業を行うディノス・セシールでは、ECでの検討行動から、DMを活用してCVRを向上させる試みが行われています。

 具体的には、ECの「カゴ落ち」やカート離脱者に対して、DMを最短24時間で発送することで購買喚起を行うというものです。同社のCECO(Chief e-Commerce Officer)を務める石川森生氏によれば、これによって、メルマガだけ送っている顧客と比べて購入率が2割ほど高まっているそうです。

 企業発信のコミュニケーションでは、電子メールなどの場合、削除されたり、既読スルーされたりしてしまうことが往々にしてあります。これに対してディノス・セシールでは、紙を用いることで、顧客の目に触れる機会を作り出しています。まさに、DMの保有効果を活かした好事例と言えるでしょう。

 また、最近はシニア世代も徐々にスマートフォンを使いこなすようになってきています。しかし、彼らにWeb上で複雑な操作を求めることには限界があります。そのような顧客には、カタログ通販やDM、チラシなどにQRコードを印字して、アウトバウンドコールで上手くデジタルの世界に引き込むと言った柔軟な思考と綿密な「顧客時間」、カスタマージャーニーの設計をする必要があります。

 たとえば、一つの施策における「つなぎ」の役割をデジタルにして、「刈り取り」をFAXにしてもいいわけです。カタログかネットかというように、一つのメディアで完結させようと考えるのは得策ではありません。

「古くて新しい」紙メディアの可能性

 DMは、チャネルシフトの戦い方の一つでもあります。今までは、DMを受け取ってどう行動したかを把握することは困難でしたが、デジタルでの検証手段を確保しておけば、オフラインからオンラインへの流れも把握できるようになりますよね。統合マーケティングにおける予算は、デジタルやテレビCMなどへの集中投下だけではなく、様々な顧客タッチポイントに振り分けることが重要になります。

 ですから、マーケターの皆様には「顧客時間」を意識してデジタルとアナログの統合を進めてほしいと思います。アナログの領域にばかり目を向けているマーケターはもっとデジタルを理解することをおすすめしますし、逆にデジタルばかりやっている人たちはDMのようなアナログを使うことを試してほしいと思います。

 良品計画時代、私はチラシによるコミュニケーションに対して懐疑的でした。1回あたり数千万円の予算を要するのにもかかわらず、効果が持続する期間はわずか数日間で、効果測定も難しい。「『金土日のコミュニケーション』にそんなに予算を投下して良いのか、効果測定もできないのに」と思っていたのです。

 誰に送っているかわからないチラシに対して、盲目的にお金を使うことは、今となっては片手落ちの施策と言えるでしょう。DMを送れるということは、顧客DBを持っているということ。送付後に、電話やメールをしてみることだって可能です。間を埋めるメディアとして、また、顧客の反応を確かめる施策として、DMは古くて新しい選択肢となるでしょう。

 今回は、マーケティングもブランディングもできるDMのおもしろさを紹介しました。「それは販促がやることだから」と他人事にするのではなく、ぜひこの活用の可能性に気づいてほしいと思います。消費者の心をつかみ直すきっかけになるかもしれません。紙に向き合い、文字を読むことに費やす時間の流れは緩やかなものです。時間の流れが早い現代において、記憶に残るコミュニケーションができるDMにも一度目を向けてみませんか。

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
関連リンク
奥谷さんと学ぶ、"勝てる"マーケティング思考連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

奥谷 孝司(オクタニ タカシ)

オイシックス・ラ・大地株式会社 専門役員COCO(Chief Omni-Channel Officer)
株式会社顧客時間 共同CEO 取締役
株式会社イー・ロジット 社外取締役
株式会社Engagement Commerce Lab. 代表取締役

1997年良品計画入社。3年の店舗経験の後、取引先の商社に出向しドイツ駐在。家具、雑貨関連の商品開発や貿易業務に従事。帰国後、海外のプロダクトデザイナーとのコラボレーションを手掛ける「Worl...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2019/02/27 10:33 https://markezine.jp/article/detail/30274

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング