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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Retail

マーケティングを経営ごとに 識者のInsight

コンシューマー向け事業で成長し続けるデルのマーケティング戦略

「お願い誰か助けて!」と仕事人生で初めて思った

――なるほど。確かに、コミュニティ活動は企業やブランドによっても集まる方々によっても様々ですから、手探りになりますよね。

 そうなんです。立ち上げの直前まで本当に迷いましたし、立ち上げ後の半年は「一体どうしたらいいのか」と社内外のあらゆる方に相談をしました。私たちはこれまでダイレクトビジネスとして顧客のデータには向き合ってきましたが、マーケティング部員が直接お客様と対話する機会はなかったので、正直どのようにして、アンバサダーの方々とコミュニケーションを取って良いのかわかりませんでした。

 立ち上げ後の半年は、これまでに経験したことがないほど議論を重ねましたし、自分の仕事人生でもあれほど「お願いだから誰か助けて!」と思ったことはないですね。でもそこで、本当に困って助けを求めると、人はこんなに協力してくれるんだ、と実感しました。自分が頑張るだけでは、現状の120%くらいが限度ですが、チームメンバーのそれぞれが105%発揮すれば何倍もの力になります。加えて社内の別部署、さらには外部の方々からもアイデアをもらうとこんなに大きな化学反応が起こるんだと、改めて気づかされました。この経験で自分の意識も変わったと思います。

 地道な活動ですが、アンバサダーの方々と3ヵ月ごとの座談会やオンラインでのコミュニケーションを通して次第にコミュニティの熱量が高まっていき、会員も加速度的に伸びて、現在では7,000人規模になりました。デルに対するポジティブな口コミは昨対比で2倍、ソーシャルリーチは800%になっています。もちろんそれぞれ温度差はありますが、会員数の拡大とともに口コミ数も伸びているので、まだまだ熱量の高い方を集める余地があると思っています。

3ヵ月に一度開催しているアンバサダーとの座談会。社内の各部署からの参加希望が多く、アンバサダー35人ほどに対して社員25人になることも。製品担当や営業担当が直接顧客から意見を聞くことで得るヒントや刺激も大きく、社員の満足度も高い。
3ヵ月に一度開催しているアンバサダーとの座談会。社内の各部署からの参加希望が多く、アンバサダー35人ほどに対して社員25人になることも。製品担当や営業担当が直接顧客から意見を聞くことで得るヒントや刺激も大きく、社員の満足度も高い。

革新的な技術を第三者の体験から伝える

――では、そうしたエンゲージメント強化の施策などを通して、御社が目指すブランドイメージを教えていただけますか?

 先ほどお話しした、広告投資の予算配分を全面的に見直した2014年当時のデルのイメージは、「低価格」「男性的」「法人向け」の3つにほぼ集約されていました。低価格であることを企業努力と捉えてくださっている方もいる一方で、やはりどこか叩き売りのようなイメージもあったと思います。そこで、とりわけコンシューマー向けの領域では、低価格よりもかっこいいとか革新的だというイメージを確立していく必要がありました。

 デルの製品は、たとえばノートパソコンのフレームを極限まで細くして11インチの筐体に13インチのディスプレイを搭載したり、筐体に堅牢でスタイリッシュなアルミニウムを用いたりするなど、業界的にも革新的な取り組みを行っています。ただ、どんなに良い製品でも、お客様に伝わらなければご理解いただくことはできません。そのためにも、私どもが広告を通じて自ら発信するだけにとどまることなく、アンバサダーの方々の体験や言葉を通してデルが目指す方向性や製品の良さをお伝えしていくことが、今私たちが行うべきマーケティングだと強く思っています。

――横塚さんのポジティブなエネルギーと、デルの好調な事業展開がしっかりリンクしているように感じました。最後に、2019年の展望をうかがえますか?

 ひとつは、コンシューマーでもスモールビジネスでも、エモーショナルなつながりをどう構築するかが、キーになると考えています。コンシューマーではアンバサダープログラムを規模的にも質的にもさらに追求しつつ、今年はスモールビジネスのミッドファネル層への施策にも注力していきます。

 もうひとつは、CRMのデータベースを強化し、全体のマーケティング施策と連動させていくことです。現状でもかなり力を入れていますが、今後はデータベースをさらに強化し、特にスモールビジネスでどのようなOne to Oneのコミュニケーションができるのか、探っていきます。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

安成 蓉子(編集部)(ヤスナリ ヨウコ)

MarkeZine編集部 編集長
1985年山口県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。専門商社で営業を経験し、2012年株式会社翔泳社に入社。マーケティング専門メディア『MarkeZine』の編集・企画・運営に携わる。2016年、雑誌『MarkeZine』を創刊し、サブスクリプション事業を開始。編集業務と並行して、デジタル時代に適した出版社・ウェブメディアの新ビジネスモデル構築に取り組んでいる。2019年4月、編集長就任。プライベートでは2児の母。

★編集...

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MarkeZine(マーケジン)
2019/02/25 13:00 https://markezine.jp/article/detail/30378

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