※本記事は、2019年2月25日刊行の定期誌『MarkeZine』38号に掲載したものです。
ありもしないクリックやCVをあったように見せる不正業者
2017年の年頭に、米P&Gのマーケティング責任者がIAB(Interactive Advertising Bureau)による講演で、アドフラウドについて強く警鐘を鳴らしたのは皆さんもご存知の通りかと思います。モバイルでも、不正業者やその手法が広がってしまっているのは同様です。
ドイツに本社を置く当社Adjustは2012年に創業し、モバイルアプリ計測プラットフォーム「Adjust」を提供しています。SDKを用いて、ユーザーがアプリをインストールする流入経路やアプリ内行動データを可視化するもので、効果検証と同時に不正防止機能を搭載して、アドフラウド防止に役立てていただいています。日本では2014年に、オフィスを立ち上げてから、年々問い合わせが増えている状況です。
計測SDKを提供する事業者の立場から、モバイル業界でのアドフラウド防止に関する啓発活動や調査研究、またアドネットワーク事業者などとの協業なども進めてきました。直近では2017年9月、複数のパートナー企業とともにグローバルで「アドフラウド防止連合(Coalition Against AdFraud/CAAF)」を立ち上げ、関係者間で一丸となってこの問題に取り組んでいます。日本では、i-mobile、nend、Dynalyst、ZucksなどのアドネットワークがCAAFに参画しています(図表1)。
本稿ではモバイル広告におけるアドフラウドの現状と課題について解説しますが、Web広告をターゲットにしたアドフラウドに関しても、同様の傾向が見られます。我々はアプリのインストールに寄与したモバイルWeb広告や、モバイルWebキャンペーンの広告効果なども計測していますが、不正に関してはWebもアプリも大きな違いはありません。「ありもしないインストールやクリックやコンバージョンを、あたかもあったように見せかけて不正メディアやアドネットワークに帰結させて広告費を奪う」という不正業者の発想は、Web広告でもアプリ内広告でも同じです。