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定期誌『MarkeZine』特集

次々と生まれるモバイルのアドフラウド 関係各社それぞれの一歩が大きな力に

アドフラウド対策における日本独自の課題

 ちなみに、不正業者ではなくユーザーが不正を引き起こす場合もあります。ゲームによくある手口で、技術的な知識のあるユーザーが、アプリ内で課金などをせずに無限に遊べるようにしてしまうことです。各ゲーム会社もこうしたユーザーの存在を問題視し、明らかに進捗がおかしいユーザーはIDを削除するなどの対策を採っています。課金の証拠として、AppleあるいはGoogleとの間でレシート情報が授受されているかを確認することでリアルタイムで検出が可能で、Adjustでは不正課金防止ソリューションも提供しています。

 以上、不正業者による4つのアドフラウドに、悪質なユーザーによる不正利用を加えた5つが、現在横行する不正のタイプです。

 グローバルの動向に比べると、残念ながら日本はアドフラウド対策において後れを取っていると言わざるを得ません。その背景にあるのは、日本ではまだ発生していないだろうという先入観と、特に日本の伝統的な商習慣であり広告領域の特殊文化である、広告代理店の存在です。

 もちろん、その課題意識も千差万別で、非常に熱心に取り組んでいる代理店もありますが、基本的にアドフラウドを検出すると広告費の代理フィーが減って売上が落ちるため、モチベーションが働かないため放置されているケースがあります。これは海外の例ですが、広告主に貢献すべく、自社が取り扱うネットワークの不正を指摘したところ、会社側に疎まれて失職してしまった……という話も聞きました。アドフラウドが検出された際に、過去に配信した広告にも指摘が及ぶことを恐れているケースは少なくないと思います。

 そうしたことが横行すると、仮に担当者が気づいていたとしてもいつまでも声を上げられず、問題が累積してから広告主に厳しく追及される事態も発生しかねません。実際、2017年にはUberが「アドフラウドの発生を知りながら看過した」として、代理店である英フェッチ・メディアへ訴訟を起こしています。社を挙げて意識を高め、担当者に責任を負わせることなく、問題が大きくなる前に広告主への透明性を問い直すことが求められると思います。

 モチベーションが働かない状況は、アドネットワーク側にも残っています。不正かどうかの議論が分かれるような取り組みを他社がしていた場合に、競争力を維持するために同様のことを考える動きもあります。我々としては冒頭で紹介したCAAFの活動のように、高い問題意識を持った彼らと協業してともに研究や対策に取り組んでいますが、一つひとつの地道な積み重ねにより現在に至ります。各ステークホルダーを巻き込んで業界の健全化に努めるには、草の根的な活動が求められると実感しています。

データへの意識を高めて異常値を関係者と確認すべき

 代理店に細かい数字のログを求め、明らかに異常な部分を深掘りすることでも不正の検出につながるので、日ごろからデータに意識的になることがアドフラウド対策の第一歩と言えます。Adjustは不正の検出(レポーティング)だけでなく、リアルタイムでその発生を除外できるので、返金の請求といった問題が発生しませんが、市場に出回る多くのアドフラウド対策ツールはレポーティングにとどまるため、判明すると代理店を通じたアドネットワークへの返金交渉という煩雑な作業が出てきます。こうした問題や、前述のように他社に後れを取って自社が標的になる事態を回避するためにも、広告主は危機感を高め、一刻も早く対策に動くことをお勧めします。

 我々としても、業界の健全化とエコシステム形成のために、自社の技術の研鑽だけでなくCAAFの活動をベースに引き続き地道な啓発や連携が必要だと感じています。私もアドネットワークや広告代理業務の経歴が長いので、アドネットワーク事業者や広告代理店にとって、広告売上の維持に構造上意識がいきがちになってしまうことはよくわかります。ただ、広告主に対する透明性や信頼の有無が将来のビジネスを左右することは、明らかです。アドフラウドをできるだけ排除し、健全な広告運営の環境を構築し、本来の意味で広告主に貢献していくことに、ともに取り組んでいければと思っています。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/02/25 13:30 https://markezine.jp/article/detail/30381

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