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人材採用にマーケティング手法を持ち込む「採用マーケティング」とは

2019/03/25 13:15

 今、企業の採用活動にマーケティング的な考え方を取り入れる「採用マーケティング」が注目されている。採用マーケティングとは、就職希望者の視点から採用のプロセスを考え、エンゲージメント育成を図るという考え方だ。こうしたマーケティング的な発想は、いまや就職希望者はもちろん、企業を取り巻く取引先や投資家、顧客などのエコシステム全体に波及して、新たなコミュニケーションを形作ろうとしている。本記事では、この採用マーケティングが誕生した社会的な背景から、その実践と効果について解説する(取材は2019年1月に実施)。

※本記事は、2019年3月25日刊行の定期誌『MarkeZine』39号に掲載したものです。

採用活動にマーケティング的アプローチが必要な理由

 採用マーケティングとは、企業の採用プロセスをマーケティング的な視点で捉え、入社後も継続してエンゲージメントを熟成していく考え方のことです。

 これまで採用活動は、いわば「入社」を最終コンバージョンとしており、「入社した人数」が成果指標とされていました。特に新卒採用においては、こうした考えが広く蔓延していました。

 これに対し採用マーケティングは「入社」だけではなく、(1)採用したいターゲット層の「入社したい」という意識を高め、(2)就職希望者と企業のミスマッチを防ぎ、(3)入社後のパフォーマンスや貢献度を高め、企業に対するエンゲージメントを育成し続ける、ことを目指しています。

 こうした考え方が登場した背景には、採用する企業と働き手である就職希望者の接点が大きく変化したことが考えられます。その変化とは、次の3点です。

1、情報収集とコミュニケーションの変化

 たとえばかつての新卒時の就職活動では、電話帳ほどの分厚い就職情報誌を見て企業を探し、資料請求ハガキを出したり、大学の就職課を通じてOB・OG訪問をしたりして、採用プロセスに乗る必要がありました。転職活動も同様に、自分で情報を収集するには限界があり、転職エージェントを通じた活動が一般的でした。

 ところがいまや企業情報はWebサイトやSNS、メールなどを通じて自分で情報を収集し、就職活動を展開する時代となっています。

2、採用/応募期間の変化

 採用/応募期間は以前と比べ、長期化する傾向にあります。たとえば新卒時の就職活動は、以前は大学3年生の冬から4年生の夏頃までという不文律がありましたが、今後は就職協定が廃止され、情報収集手段が多様になったことも考えると、実質的に就職活動期間は大学1年生のときからスタートしていくといっても過言ではありません。

 同じことは中途採用/転職希望者にも当てはまります。かつての日本型終身雇用体制が崩れた今、じっくり情報収集を行って転職活動を展開する希望者は珍しくありません。

3、企業情報の内容の変化

 紙ベースの就職情報誌の時代とは異なり、企業の情報は様々なルートから入手できるようになりました。特にWebサイトなどでは、実際にその企業で働いている社員の口コミや企業評価などもあり、企業側がコントロールできない情報も等しく公開されています。

 こうした変化により、企業は情報の出し方や就職希望者とのコミュニケーションについて改めて考え直す必要に迫られました。一方就職希望者にとっては、企業の探し方や出会い方が変わったことで、様々な情報を踏まえて自分のキャリアを考えるようになったわけです。特に学生にとっては、将来の転職可能性や副業の可否など、考えなければならない要素が増えており、その分企業に対する評価も冷静にならざるを得ません。

 こうした就職を取り巻く環境の変化は、特に就職希望者側に大きな影響を与えました。限られたチャネルで、企業がコントロールした限られた情報を基に就職先を判断しなければならなかった状況が変わり、様々なチャネルや情報を通じて「企業を知る」というフェーズの存在が大きくなったのです。

 一方企業側の視点で考えると、これまでのやり方では本当に欲しい人材を採用しにくくなりました。これまでは知名度という“餌”をまいて就職市場に大きな“網”を張っていれば、多数の希望者が押し寄せてきましたが、そうした方法では人は集まらなくなってきたのです。

 最近の働き方改革などにより、キャリアの重ね方や就労条件も大きく変化しています。そのため就職希望者は「なぜ働くか」ということを突き詰めて考えるようになりました。企業はこうした就職希望者と長期的に向き合って、相手が必要とする情報を出し続けなくてはなりません。こうしたことから、採用活動をマーケティング的な発想で見直す動きが出てきたのです。


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