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定期誌『MarkeZine』特集

人材採用にマーケティング手法を持ち込む「採用マーケティング」とは

採用マーケティングの進め方

 採用マーケティングの実践にあたり、当社はまず現場のマネージャーや採用担当責任者を集め、「採用活動はどうあるべきか」という議論から始めました。そもそも当社はMAツールベンダーなので、マーケティングの専門家が集まっており、採用マーケティングについて議論ができる土壌があったことが大きいと思います。また、トップが人材採用を重視しており、新しいやり方を推奨していたことも後押しとなりました。

 この会議では、主に3点が話し合われました。第一に、どういう人材を必要とし、そのためにどのようなメッセージングができるかという点です。第二に、具体的な施策はどうあるべきかという議論です。そして第三に、実際にMAツールを活用している社内のマーケターを招き、MAツールで何ができるかを明らかにしました。

 ちなみに「欲しい人材像」については、スキル条件を細かく設定することはせず、社内の各職種に「現場担当者」「マネージャー層」をかけ合わせた像をプロファイルとして設定しました。たとえば「インサイドセールス」という職種であれば、「実際にインサイドセールス業務を担当する人」と、「インサイドセールス部門のマネージャー」という2つのマトリクスを設定し、それぞれに合う候補者、興味を持つ候補者にメッセージを出します。細かく条件を設定しても、それに合うコンテンツを社内で用意できなければ意味がありません。マーケティングと同じで、ターゲット層を細かくするとパイが小さくなるのでボリュームが出ず、採用までたどり着く人がゼロという可能性もあります。今、採用マーケティングに取り組んでいる企業は少しずつ増えていますが、細かすぎるターゲット層を設定しているケースはほとんどありません。たとえば、当社では「日系企業出身」といった粒度のカテゴリーを設定し、そのようなターゲットの方たちに向けたコンテンツを用意しています。

 労力がかかるのは、コンテンツの制作です。当社はPR Tableの協力の下、月2本ほど社員インタビューなどを公開しましたが、やはり工数はかかります。これをすべて人事部で対応すると負荷が大きくなるはずです。人事部はむしろ、施策全体の方向性を決めるプロジェクトリーダーとなり、手を動かす部分は外部や社内の協力者に委託したほうがスムーズに進められるでしょう。

まずは入社した人へのヒアリングから始めてみよう

 採用マーケティングというと、そもそもマーケティングについて明るくない人事の方にとっては、何だか難しくてよくわからないイメージがあると思います。「マーケティングの専業ベンダーや大手企業でないとできないよ」という意見もあるでしょう。

 採用マーケティングは決して難しいものではありません。マーケティングの一歩は、顧客の声を聞くことから始まりますが、採用マーケティングもそれと同じで、入社した人へのヒアリングから始めればいいのです。「どうやって自社のことを知ったのか」「なぜ応募しようと思ったのか」「どの会社と比較検討したのか」「入社した決め手は何か」「就職活動中、どういう情報やコミュニケーションが必要だったか」など、順を追ってヒアリングしていけば、それはAIDMA(Attention注意/Interest興味関心/Desire欲求/Memory記憶/Action行動)というマーケティングプロセスになるはずです。そのヒアリング結果を基に、足りない部分を補い、施策を当てはめていくことが、採用マーケティングの一歩につながります。

 採用マーケティングは、大企業だけのものではありません。むしろ、自社の良さや特徴を多くの人に知ってもらうチャンスになるため、「知名度がそれほどない、小さいけれどいい商材を持つ会社」にこそ向いています。いろいろな人にじっくり時間をかけて自社の良さを理解してもらうことで、たとえ採用には直結しなくても、将来の顧客になったり、投資家になったり、取引先になってともに成長していく可能性もあります。だからこそ、候補者に対して真摯に向き合う採用マーケティングは有用なのです。

 会社を成長させるエンジンは、何といっても人材です。そうした意味で、人事部は会社の成長を担う中心部とも言えます。最近のスタートアップや海外企業を見ると、「人事部」ではなく、People&Customer Experience(アドビシステムズ)や、People&Culture(メルカリ)など、「体験」を軸に従業員エンゲージメントを高めていくという名称が増えています。こうした先進企業は、それこそ従業員のエンゲージメントまで含めてマーケティング的なアプローチで採用活動を展開しており、人材の勤怠や貢献度まで含めた大きな「HR分野のDMP」といった基盤に着目しています。こうした統合的なHR Techが確立する日は、案外近いかもしれません。採用マーケティングが、HR分野の大きなパラダイムシフトになる日はもうすぐです。

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/03/25 13:15 https://markezine.jp/article/detail/30619

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